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横田広域警察24時  作者: 魚河岸ボブ
第1章 転生したらバイオレンスな法強制執行者になりました
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- 知らない記憶、知らない爪痕 -

 今日は朝から横田基地で射撃訓練です。現地集合なので朝食は久しぶりに基地内で食べようと考えました。古巣のセキュリティ・フォースのみんなに挨拶を済ませ、向かった先は知る人ぞ知るパン屋カフェ「HINODEベーカリー」です。


 ここのミニクロワッサンは絶品で、これ以上美味いクロワッサンはないだろうって位ツボを的確についてきます。ホットサンドみたいな食べ心地のクロワッサンサンドも最高なんです。これぞアメリカン!

 この世界(現世)でもHINODEベーカリーが健在か心配でしたが、その辺は抜かりなくチェック済み。数年前にあったテロ攻撃で基地内のあちこちがダメージを受けたものの、ベーカリーは無事だったみたいです。


「おはようございまーす」

 元の世界(前世)でやっていたのと同じように、挨拶しながらドアを開ける。この時間帯はヨーコさんという日本人従業員のオバちゃんがいる筈だ。

「あ、おはよう!久しぶりだね」

 むむ、この反応は…!どうやら加藤眞(現世の私)もHINODEベーカリーの常連だったようです。


 いつものようにミニクロワッサンとクロワッサンサンドを選び、会計を済ます。すると、ヨーコさんがクッキーを差し出して話しかけてきた。

「加藤君、悪いんだけどこれ、お願いしていいかな?」

「お願い、と言いますと…?」

 はて、身に覚えがない話だ。説明求む!


「ほら、司令部のところの慰霊碑に、マリーのお供えに…私達じゃ入れないからさ」

「…マリー?」

「そう、マリー・マッコール。今日はあの子の誕生日でしょ」

 ヨーコさんが悲しそうな顔をしている。

「もう4年になるのかな…。英雄になるよりも、生きてるほうがいいと思うんだけどね」


 マリーは私の数少ない友人の1人で、私が横田で働き始めた頃にHINODEベーカリーで知り合った。

 横田の施設部隊に赴任してきたばかりで、初の海外勤務でテンパっていたところ私と出会って意気投合し、「誰だって初めては上手くいかないんだ」と安心したらしい。たまたまカバンに付けていたアニメキャラのチャームに気が付き、同じ趣味の同志がいたのだと嬉しくなって声を掛けてきたそうだ。アニメは国境を超える!

 マリーは小柄なのにグレーダーの運転が得意で、そのギャップがまた可愛かった。酔っ払うと「マコが男だったら絶対惚れてたのに」と騒ぎ出すので、「私に百合の趣味はないよ」と切り返すのがお約束だった。そういう薄い本は持ってたけどね…。


 店内の壁に新聞の切り抜きが貼られていた。マリーは4年前に発生したテロ事件の現場に居合わせ、半壊した空自の司令部庁舎へ救助のため駆け付けたところを2次攻撃に遭って殉職したらしい。司令部前の通りは「マリー・マッコール アベニュー」と名前が変わっている。気付かなかった。

「あの子、庁舎が壊れるのを見て『マコのトモダチを助けなきゃ』って制止を振り解いて駆け付けたんだってよ。愛されてたんだね、加藤君も」


 私の知っているマリーは、任期を無事に終えて本国に帰っていった。帰国まで元気一杯だったし、帰国後もたまにeメールでやり取りしていた。


 でも、マリーらしい話だな、と思ってしまった。

 今の世界(こっち)のマリーはもういないのか…。

「ヨーコさん、ちゃんとお供えしてきますね」

 私は複雑な気分でクッキーを受け取った。


 慰霊碑にクッキーをお供えした後、周囲をよく見たら事件から4年も経つのに司令部庁舎は未だ工事中だった。


 いつまでも落ち込んでいたら射撃訓練でヘマをやらかしかねない。気分を切り替えていこう。

 私はマリーの笑顔を思い出しながら、深呼吸を一回。酸素が肺を満たしたのを確認した後、顔を上げ、前を向いて歩き始めた。

YPDの原案者から「これ、アクションじゃなくない?」との意見があったため、ジャンルをアクションからヒューマンドラマに変えましたm(_ _)m アクション成分が出てきたら元に戻そうと思います。

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