ー 女神、降臨 ー
「お久しぶりね、マコ」
「ど、どちら様ですか…?」
突然ナイフを突きつけられても平然とした態度を変えず、解放されて何事もなかったように初対面の私の名前を呼びかけてきた少女。
犯人の頭に偶然植木鉢なんて、普通に考えて有り得ない話だ。
得体の知れない圧を感じ、反射的にM4を構えようとしたのを必死で堪えたのは多分、正解だろう。
この子、ヤバい。
「何よ久しぶりに会ったのにビビっちゃって。お姉さんショックだわ〜。…あぁ、地球人はマナの色が見えないんだっけ、面倒ね」
何か異世界転生モノにありがちな台詞を喋っている。しかもこっちのことを知っている感じだ。ということは…
「ちょっと、そろそろ気付いてよ!誰のおかげで三途の川を渡らずに済んだのか忘れた?」
「…もしかして女神…?」
「もしかしなくても!アタシ以外の何に見えるってのよ…あ、見た目変えてるからわからないよねゴメンゴメン」
ああ、銃口を向けなくてよかった。
「突然どうしたんですか?」
「いや〜、あなた達の活躍を眺めて楽しませてもらおうと思ってたんだけど、最近パッとしないじゃん?だったら自分で直接見にいったほうが面白いかなーと思って、来ちゃった⭐︎」
私の活躍が微妙だから退屈していた、ということか…不味いなこれは。
「すみません、上手く行ってなくて」
「いいよいいよ、気にしないで!千代ちゃん達の時が面白過ぎたってのもあるから。それに本当の狙いはこいつ。ちょっとアタシも失敗しちゃってさ」
「どういうことですか?」
「こいつね、あなたと同じようにこっちの世界に送り込んだんだけど居場所を作ってやってなくてさ、身元不明の怪しい人になっちゃってたんだよね」
…まじか。
「で、転生前は『俺の製薬技術で世界を変えてみせます!』なんて言ってたのに、当然元いた会社で受け入れてもらえないし戸籍ないもんだから会社どころか社会のどこにも居場所がなくなってさ。結局最後には悪い奴等とつるんで変な薬作ってダメ人間製造機になってたってワケよ」
「それは、救えない話ですね…」
「そうなのよ!だから直接アタシが始末…ケジメつけたほうがいいかなってさ。ま、こいつの失敗があったからマコはちゃんと戸籍もあるし、仕事もあるでしょ?」
「は、はぁ。…そいつ、どうなるんですか?」
「まだ考え中だけど、あなたの職場で飼ってもらえるように手配はしてあるわよ。その為にも細工は流々、ってね。
一度歪んだ世界って戻すのが難しくてさ。ダメなら、こいつ自体消すしかないかな〜なんて…」
「保護の方向でお願いします!」
女神、怖い。
「怖がらなくていいわよ!今のアタシはフランス国家警察所属、ICPO出向中のしがない警察官だから⭐︎」
語尾に星が舞った。ますますよくわからないが、どうやら警察官に化て降臨したってことなのか?!
「降臨!カッコいいね!そうそう、降臨したの。明日からYPDでしばらく厄介になるからよろしくね、加藤捜査官!」
「はい?!」
ラノベ知識を総動員したいけど、アドレナリンの回った頭ではなかなかスイッチが切り替わらない。
つまり、明日から私は女神に見張られながら仕事するってことなのかな?!




