覚醒
お久しぶりでございます
「な、なぁ。本当にやんのか?」
「当たり前でしょ?第一、あんたが言い出したんじゃない。」
俺と影坂は、今50メートルはあろうかという崖の上にいた。
「いや、だってこれ落ちたら死ぬぜ?」
「なに言ってんの?もともとそういう話だったでしょ?いいから...」
影坂は俺の背後に立ち、
「行ってこーい!」
俺を蹴り上げた。
崖の方へと
「うわぁぁぁぁぁ!!」
すぐに始まる自由落下。
まず間違いなく俺は死ぬ。
こういう時走馬灯が見えるはずなのだが、全くそんなものは見えない。
記憶喪失だからなのだろうか。
こんなことをゆっくり考えられる刹那の時間はあるのかーと呑気に考えていると、それが間違いであると気づく。
俺の体は、地面ギリギリで止まっていた。
「どーおー?発現したー?」
上から影坂の声が聞こえてきた。
「いや、無理だった!」
俺も影坂に叫びかえす。
もともと、これは俺のチェインを発現させるための修行だ。
この前影坂がゴロツキをぶっ飛ばしたあの力、チェイン。
その力を俺も手に入れようと思い、影坂に協力を頼んだのだ。
チェインの発現条件は強い感情。
恐怖や激情、欲望などで正気のタカがはずれるほどの感情が出たとき、同時に発現するようだ。
だからこうして一番簡単な方法、死にかけ続けることで死への恐怖を引き出す。
だが、発現する気配は全く無い。
「うーん、何でなんだろうなぁ?」
「やっぱストッパーがあるからでしょ?」
そう、ストッパー、つまり影坂だ。
ついさっきのギリギリ空中で止まっていたのも影坂の能力に起因する。
闇の力便利だ。
「まぁストッパー無くしたらどっちにせよあんたなんか死んでしまうし、他の方法探すしかないわね」
「それもそうだなぁ」
「ま、とりあえず今日は帰りましょう?」
「わかった」
他にやれる方法はすぐに思い付かないので大人しく家に帰ることにする。しかし、
閃光。
一瞬目の前がとてつもない光によって見えなくなる。その刹那
「ッ!」
ガキンッ
後ろからなにかがぶつかり合う音が聞こえる。
あわてて振り替えると、そこには盾を闇から出した影坂と、剣を繰り出す男がいた。
「へぇ、今のを受け止めるかよ。目は潰したと思ったんだがなぁ」
「それくらいでやられると思ったら大間違いよ?」
「へっ、いってくれるぜ。」
突然始まった戦闘についていけない俺。
よくみると襲ってきた男はついこの間も襲ってきたあのゴロツキだった。
「お前ー生きてたのか!?」
「たりめーよ!そのおかげでこの力に目覚めたんだからよぉ‼」
男は片手を前につき出したかと思うとその手からさっきと同じ閃光が輝いた。
「うおおっ!?」
「その嬢ちゃんにぶっ飛ばされたことによって手に入れたこの光のチェイン!!最初は目潰しにしか使えねぇショボい能力だと思ったが、やっぱ思ったんだわ」
男は全てを悟ったような雰囲気をもつ。
「な、何を?」
ごくり、と、喉をならして問う。
「やっぱ目潰し強い」
それと同時にまた輝く。
鬱陶しいが本当に強い。
もともと素早かったのか奴は俺達の目の前から消え去り、死角からの攻撃を繰り出してくる。
「くそっ!」
そんなことを繰り返され続け、俺達はぼろぼろになる。
「な?やっぱ強いだろ?」
男はニヤニヤしながら聞いてくる。
「くそ、めんどくさい、わね」
「だろう?じゃ、これで終わりだなぁ」
また男は輝き、目潰しをする。そして、
「死ね」
俺の目の前に、いた。
繰り出される剣。
避けきれない。どう考えても当たってしまう直撃コース。
そして俺は
「危ないっ」
突き飛ばされた
「な...」
すぶり
本来俺に当たるはずの刃は、影坂に突き刺さった。
「影坂、おい、影坂!」
影坂の意識はない。刺された痛みで気絶してしまったようだ。
「へ、嬢ちゃんはもう死んじまうなぁ。ま、すぐにお前もあとを追うさ。一発で逝かしてやるよ。」
男は剣を俺に振り下ろす。
やけにゆっくりに見える剣。ここ数日でなんとなく死にかけている時に起こる刹那だと感じる。
そんなゆっくりとしたどこかふわふわとした思考のなかで考える
ーー死ぬ?
ーーこんなところで?
ーーなにもできずに?
ーー影坂も助けられずに?
ーー嫌だ
ーー嫌だ
ーーそれは絶対に
ーー絶対に嫌だッ!
突然焔が迸る。
「なぁッ!?」
爆炎。
炎は迸る。俺から
「ふざけんな。」
「なにぃ?」
「てめぇの好きに、させるかよぉぉぉぉ!!」
炎は形を成し、男に向かう。
「うおわっ!?」
あわてて飛び退く男。しかし容赦はしない
「燃えろ」
突然男の周囲に炎弾が現れる
「炎弾」
全て炎弾が男に飛ぶ。
「ぐわぁぁぁぁ!」
爆発。そして男はぶっ飛ばされ森のどこかへととんで行った
「はぁ、はぁ、やっと、使えた。」
ついに俺にチェインが発現した。
炎のチェイン。
それが俺の力だった。
うわ目潰しつおい




