共通2-B 踊らない
――私は誰とも踊る気分ではない。
第一ここは敵地で、そんなことをしている暇はないのだ。
私は手持ちぶさたになったので、ラクティスの友人であるグセメドの部屋の掃除へ向かった。
「あの新入り、ラクティス様にベタベタしすぎじゃないかしら」
「ちょっと顔がいいからっていい気になってるみたいね」
リアルメイド達が私の陰口を言っているが所詮は敵国者のざれ言だ。
「ええと……グセメド=ジレーム局長、アルラです。お掃除に参りました」
留守かと思いきや、床に倒れていた。
「しっかり!」
「腹へった」
取り合えず彼の上体を起こしてみる。
錬金術が出来ない代わりに筋トレしておいてよかった。
首にはロケットがかかっている。恋人の写真でも入っているのかしら。
彼が寝てる間に食事でも作ろう。
誰もいないのを確認し、頭に料理を思い浮かべて手を皿にかざす。そうして食材は勝手に料理となる。
「め、飯か?」
「グセメド局長、どうぞ」
「ああ」
彼は待ちに待ったと言わんばかりに高速で食事をした。
「あー生き返ったぜ。てかなんでラクティスのメイドがここに?」
「宰相閣下はパーティーの視察だとかで」
――なんて適当にごまかしたが、宰相は政治において大臣を取りまとめる役目を持つが、実際の現場など見たことがないのでわからない。
「パーティーなあ……なんか祝い事でもあったのか?」
「隣国アンヴァートから皇子がいらしたそうです」
というか実際に本人と会った。
「また戦が始まるのか……」
――そういえばこの男はラボの局長。前回の戦に用いられた兵器もこの男が造ったものだ。
敵に施しをしてやるなんて、馬鹿なことをしたものだわ。
「失礼します」
「もういくのか?」
「はいお仕事がありますから」
「ありがとな、助かったせ」
「いいえ」
●
「おや、機嫌が悪いですね」
「なんでもないわ」
ラクティスのことだから私がどこにいたか言わなくてもわかっていそう。
「あ、そうそう。王からの命令で、貴女もパーティーに参加することになりました」
「ええ!?」
――なんでそんなことになってるのよ!?
「声が大きいです。グセメドも強制参加なので行きますよアルラさん」
「……これが蜻蛉ってやつね」
●
「おや珍しい。いつもなら生き倒れている頃だというのに」
「ああ、さっき……」
「きゃあああ!!」
――私は壁に体当たりして、ごまかした。
「大丈夫かよ」
「すみませんお気遣いなく」
「おやおや」
努力むなしくバレてしまった。
「グセメド、パーティーです。着替えて参加しなさい」
「なんでだよ?」
「今回のパーティーは隣国アンヴァートからの参加もあります。貴方の後妻を探すチャンスですよ」
グセメドには妻がいたのかと意外に思った。
「いやいや、独身貴族のお前が嫁さんを作るのが先だろ」
「私はまだ若いので、それに貴方は世話をしてくれる方がいないと食事をとらないじゃないですか」
二人は言い争いになってしまった。
●
ラクティスに仮面を渡された。
「どうして仮面をするの?」
「今日は無礼講らしいですから」
私は声をかけられたら困るので会場の外へ出た。
「え!?」
ここにいるはずのないサイケデリクらしき男を見かけた。
「おーい。お前あいつのメイドだよな?」
この声はたぶんグセメドだ。
◆どうしよう。
【グセメドに答える】
【サイケデリクを探す】