39日目 私のクラスの愉快な仲間達
2月8日、水曜日!時刻は0時半くらい!
私達は群馬の山奥に居ました!!
「びえぇぇぇんっ!!」
今泣いてらっしゃるのが芸能人の路端カンパルノさん。誘拐されてました。
「お姉ちぁぁぁぁんっ!!びぇぇぇぇぇぇぇぇぇんっ!!」
一緒にって泣いてるのがカンパルノ妹。見た目はただのイケメンです。
「違うって!!」「なにかの誤解だっ!証拠はあるのか!?」
警察に連れてかれてるこの2人が誘拐犯です。
「いやぁ…たまげたなぁ…」
たまげてらっしゃるのが犯人達が監禁場所として利用してた小屋の持ち主の方。ブルドーザーでぶっ壊された小屋を見てたまげてます。
「私達は正義を成したんです」
「このブルドーザーは借り物だ。私達は何も知らない」
そして小屋をぶっ壊して警察に詰められてるのが浅野探偵の2人です。運転してたのは双子の妹の方です。
「…君、名前は?」
「……桐屋蘭子です」
そしてパトカーの中でお巡りさんに密着されて身の危険を感じてるのが私、桐屋蘭子ちゃん。今回のMVPです。
てか、ずっとMVPです。
地球が巨大隕石により滅びるまであと62日…公立入試まであと数日…そんな今日、私は何をしてるんだろうか……
「何があったのか正直に話しなさい」
「いや…私……何がなんだが…気づいたらブルドーザーに乗せられて連れてこられてて…」
「誰に連れてこられたの?」
「…………あの、手錠かけた双子」
流れるような裏切りにより危機からエスケープ。「怖かっただろう」と頭を撫でてくるあんたの方が怖い。
浅野探偵はパトカーに押し込まれて連行された。手錠はもうしてるから要らないんだって。
んで、私とカンパルノ姉妹も丁重にパトカーに詰め込まれて警察署へ……
時刻が早朝5時を回った頃、警察署にお母さんが迎えに来た。あとこーちゃん。おんぶされて寝てる。
私もスヤァ…キメてます。
「くかーーっごかーーっ」
「起きなさい」
べしっ!!
「んにゃ…むにゃ……徹夜だったんだからもうちょっと寝かせて…」
「永遠の眠りにつかせるわよ?」
婦警さんの太ももがあまりにも気持ちよくて爆眠くんキメてたのに母からの殺害予告を受けて目を覚まさざるを得ない状況。
流れ出たヨダレを婦警さんのストッキングで拭きながら立ち上がる。
「話はゆっくり聞かせてもらうわ」
「お母さんに話すことなんてないもんね、べーっ」
「いい度胸してるじゃない…」
「とりあえず帰って寝よう…あとシャワーも……」
「何言ってんの帰って着替えて学校よ。今日平日なんだから」
「え?ひどい…私寝てないんだよ?」
「2日も休んで何言ってんの。言っとくけどお母さん怒ってるんだからね?」
そういうお母さんの顔は婦警さんが思わず「ひっ!?」て悲鳴をあげる程度には怒っていた。
これ以上逆らうと命は無いと直感した蘭子はそのまま引きづられて強制帰宅……
「桐屋さんっ!!」
そんな私を引き止める声がした。
振り返ったらその先にはカンパルノ妹が立っていた。左脚に重心を偏らせた立ち方が若干鼻につく。
「桐屋さん…君のおかげでお姉ちゃんは無事だった…本当にありがとう」
「…生牡蠣と300万円ね?」
「もちろんだよ…それで……」
何をモジモジしてるんだ?登校が確定したこの蘭子、一刻も早く帰宅して1秒でも多くの睡眠時間を確保する事が急務。お前に構ってる暇はない。
「あの……」
「なに?用があるなら早く言ってくれる?」
「もし桐屋さんさえよければ…僕と友達になってくれないかな…?」
「断る」
「ナニッ!?」
私「友達になってくれないかな?」というフレーズから始まる友情は信じないんだ。私が信じる友情って、そう…荒野で2人、敵同士としての出会いから始まるようなやつなんで。はい。
「そ、そんな……(悲)」
なんて寂しそうな顔をするんだ…
もしかしてこの人友達居ないのか?
騙してきた女は多そうだけど…
ボッチなのかもと想像した途端、重なる私の過去。名前で揶揄われて孤独だった小学生時代。
そんな自分と重なる彼女を見て……
「もしかして友達居ないのかな〜?ぷーっくすくすっうぷぷっ」
私は腹の底からうぷぷって笑いが込み上げてきたのだった。
「いい気になってるやつがボッチだった時、腹の底からうぷぷってな笑いが込み上げてくるぜーッ!」
「ドラァッ!!」
お母さんに殴られた。
「はっ…はぐわっ!?」
「酷いこと言ってんじゃないわよ。見なさい、あの今にも泣きそうな顔を…」
「……:(´◦ω◦`):プルプル」
「あの情けない顔を見てあなた、何も思わないの?」
「お言葉ですが母上、私は請われて結ぶ友情なんて信じない」
「偉そうな事言ってんじゃないわよ、本来ならあんたと友達になるなんてお金貰っても断られるんだからね?」
母親の言葉とは思えない……
「:(´◦ω◦`):プルプル…」
「分かった分かったよ。今日から君は友達だ、カンパルノ妹」
鼻血垂らしながらそう言ってやると…
「ふふっ…しょうがないな…鼻血まで垂らして。拭いてあげるよ、僕のプリンセス」
「こいつやっぱり超ムカつくんだけど!!」
*******************
眠い。極限の眠気……それが与えるものはこの世の全てを憎むほどの…憎悪である。
「みんなー!今日は合唱の練習するから残れる人は残ってくださいね!!」
授業という名の試練を乗り越えて幾星霜…人生で1番長かった1日が終わる。桐屋蘭子、帰宅の準備だ。
「…蘭子」
「ZZZ……」
「放課後合唱の練習だって…」
「ZZZ……」
「……私、委員長に残れって言われちゃった…蘭子も残るよね?」
「ZZZ……」
陽菜…夢の中にまで出てくるなんて…(殺)
「……蘭子」
「ちょっと桐屋さん!!」
世界最高効率のスヤァ…をキメながら鞄を手に持った時、何者かが私の行く手を阻む。
目の前に現れたのは丸メガネにお下げ頭の学級委員長みたいな顔の女…
名前は確か……
「……ZZZ」
「逃がさないわよ!予餞会の合唱練習よ!今日こそ参加してもらうわ!!」
「去ね…貴様の名前などどうでもいい…ZZZ」
「そんな酷いこと言わないで……桐屋さん、今まで一度も参加してくれなかったじゃない!阿部波さんも何か言ってよ!」
「……危険よ委員長。今日の蘭子はかなりクレイジーな空気感を漂わせてる」
「……別にこの子いつもクレイジーじゃない」
「ZZZ……委員長ってその髪型と顔じゃないといけないルールがあるのか?」
「何言ってるの……?」
「芋臭いぞ……ZZZ」
「……ひどいっ」
早く帰ってベッドに転がらなければ……私の筋繊維が自動稼働するのはあと2時間が限界なんだ。
「ぐすっ……」
「ZZZ……そこを退け……ってあれ?」
泣いてる?
「桐屋が委員長泣かしたぞ!」「やっぱりこの女…クレイジーだっ!!」「なんでやつ…」「いーけんのべーいーけんのべ!!せーんせいに言ってやろ!!」
「ぐすっ……私は……みんなで練習したいから桐屋さんにお願いしただけなのに…(涙)」
……(汗)
現場は混沌として参りました。クラスメイトを泣かせた下手人としてヘイトの視線が私に集まる。
何たる悪夢……
「桐屋さんさぁ、たまには練習付き合ってくれてもいいじゃん!そんなに忙しいわけ!?」「そんなんだからあんた、みんなから避けられるんだよ!」「前から思ってたけどあんた、おかしいよ!今日も一日中目を瞑ったままだったし…!」「謝れよッッ!!委員長に謝れッッ!!!!」
ざわざわ……
「ZZZ……」
「…………蘭子(汗)」
「……ZZZ」
「ダメだ…寝てる……一体どうしちゃったの」
歩き出す私を止めるのはクラスの中心人物、名前は…………
……ZZZ
忘れた。便宜上クイーン・ビーと呼ぼう。
「待ちなさいよあんた!」
「邪魔をするな……ZZZ」
「……は?」
教室内が険悪な雰囲気に包まれていく……なんという悪夢だ。
「……まぁまぁ、ほら蘭子。あんたも謝りなさいよ」
おかんまでこんな事言ってる。
「……ZZZ」
「何無視してんのよ」
「こいつ、チョーシ乗ってるわ」「私前からコイツのこと嫌いだったんだよね」「あんたのせいで空気感悪くなってるの、わかる?」
クイーン・ビーの取り巻きまで調子に乗り始めた。
こいつらは分かってない。私がどれ程の激戦を乗り越えて今ここに立ってるのか。というか、立ってるのが奇跡であることを…
そしてこのどさくさに紛れ陽菜は帰宅したらしい。気配が消えた。なんでやつ……ZZZ
「こいつ、いっぺんシメた方がいいよ」「覚悟しなっ!!」
取り巻きの暴走が始まる。嗚呼……きっとセイレム魔女裁判もこんな感じで始まったに違いない。
「お前達やっておしまい!!」
「ふぉぉーーっ……ふぉあちょっ!!」
クイーン・ビーの声に応じて取り巻きその一、中国拳法のマキが前に出た。
騒然となるクラス。
無理もない。中国拳法のマキはクイーン・ビーの取り巻きの中でも屈指の武闘派。その苛烈な性格と戦闘力はクイーン・ビーのクラス内での序列を動かぬものにするのに一役買ってる。
「やべぇ……マキが出たぞっ!」「桐屋死んだわ」「中国拳法のマキ…中2の春…うちのクラスの細山田が先輩15人からリンチにあってる時たった一人で先輩達をぶちのめし細山田を救ったっていう……っ」
なんだ良い奴じゃないか……ZZZ
「マキさん……(震)」
今震えてるのが細山田である。去年のコミケで個人として最高額になる36,985,667円を使った伝説のオタク……
マキさんとは中2の夏頃から付き合ってる。クラスの一軍女子とオタクの恋…文化祭の時文芸部が2人の恋をラノベ化してたっけ……ZZZ
商業化もしたらしい。私も買った。
泣いた。
「覚悟しなっ!桐屋蘭子!!」
「……やめておけ。お前程度の雑魚では私に触れられただけで命を失うぞ…ZZZ」
「……言ってくれんじゃんっ!!」
「ちょっとやめなよ!!」とおかん。
「やめてよぉ……」と委員長。
しかしそんな声では誰も止まってくれなくて……
「やめろよっ!!」
クラス内に響いたその一際大きな声。
全員の視線がそちらに向いた。でも私は寝てるから向かない。ZZZ
この声は……
「蓮司、どうした!?」
「お前ら恥ずかしくねぇのかよ!!」
……蓮司。
まさか蓮司。クラス中を敵に回してまで私を助けてくれるの?だからってお前のした事忘れないからな?
「蘭子がおかしいのはみんな知ってんだろ!?」
「……だから何よ?」
まさかの蓮司、クイーン・ビー相手に果敢にも挑む。それにしても私の脚も寝たまま立ってるのはそろそろ限界……ZZZ
「大体委員長泣かせた桐屋が悪いんじゃないの?」
「……それは…」
「なに?小林あんた…元カノだから庇うの?」
「いやそういう訳じゃ……」
「未練タラタラじゃん」
「だからそんなんじゃねーって!!」
「……恥ずかしい奴だ蓮司ZZZ」
「今お前の為に頑張ってんだけど!?」
「あんた桐屋の事「頭おかしいしおっぱい小さいしまじないわ」って言ってたくせに」
「そうなのか?蓮司ZZZ」
「違っ……」
……くわっ!!
「おい、桐屋が目を開けたぞ!」「一日中閉じてたのに……っ!」「なんか…やばいんじゃない?」
私にスリスリ寄ってきておきながら影で私のHカップ(自称)の悪口だと?
「……蘭子」
「黙れおかん。お前の始末は最後だ」
「私なんかした?(汗)」
「おい蓮司」
「(ビクッ)」
「……私の父はお母さんより乳がデカい女に浮気して家を出た」
「……(汗)」「……(汗)」「……(汗)」
「“ちち”だけに」
「……ぷっ」
今吹き出したのは麻生君。もう1人の学級委員長である。しかしその存在感は霞の如し。類まれなる隠形により1年時の球技大会でクラスを優勝に導いた、侮れない男……
「……桐屋さん…そうだったの…(泣)」
委員長が同情の涙を流してくれた。なんだか…良い奴じゃないか。いつもこれを言うとみんな笑うのに。「“ちち”ってw」って。
「しかも弟が産まれた直後に、だ……」
「……それは知ってるけど…」
「ヤバ、桐屋の親父サイテーじゃん」「でも妊娠中って浮気しやすいって言うわよね」「桐屋さんの弟さんって確か……」「総合格闘技統一王者って噂の?」
誰?その噂流したの。
「何が言いたいのよ」
「それはつまりだ、クイーン・ビー」
「私、姫野だけど……」
「私は巨乳好きと浮気は許せないって事だ…おい蓮司。お前は私の地雷をふたつも踏み抜いたぞ」
「……え?なに?小林あんた…浮気したの?もしかしてそれで別れた?」
察しのいいクイーン・ビーの発言で蓮司のクラス内での立場が…変わる。私に一極集中してたヘイトも……
「え?そうなん?」「俺、桐屋から別れようって言われたって蓮司から聞いたけど?」「小林君……」「サイテーですね…」
ざわざわ……
「違っ……おい待て。おかしいだろ」
「小林君(泣)」
「委員長待て。話がズレてる。元に戻そうぜ!」
「どうしてそんな酷いことしたんですか?じゃあ今付き合ってる1組の大園さんとは浮気から始まった関係なんですか?」
「違うぞ!大園とはもう別れた!!」
「…え?そうなんですか?」
「……まさかあんた、それも浮気……」
ドン引きするクイーン・ビー。教室がざわつき始める。気づけば魔女裁判から蓮司裁判へ……思春期特有の危険な空気が教室に充満し始めていた。
蓮司は半泣きだった。
「そっ……それは違うっ!浮気したのあいつだからっ!!確かに俺は浮気したけど…っ!俺も裏切られて気づいたんだよ!!俺はサイテーさっ!!でも今は……っ!!」
「今は何?」
「……蘭子」
「私の目を見て言ってみろ」
ざわざわ……
「……蘭子俺は……」
「……いやいや。待って?自分も浮気されたから被害者ですって…一番の被害者桐屋でしょ?」
何かを決意した蓮司の勇気をクイーン・ビーが容赦なくへし折っていく。そして中国拳法のマイは手持ち無沙汰すぎて漫画読み始めてるし。
「……待ってください」
「え?委員長……?」
「桐屋さんに謝ってください」
まさかの蓮司、悪者に。この蓮司から学べる事、それは無闇にトラブルに首を突っ込むべきでは無いってことだ。
「謝れよ」「謝りなさいよ」「謝れよ蓮司!」「ふざけんなよ蓮司…俺はお前と桐屋が付き合った時、心から祝福したんだぞ!」「俺達にも嘘ついてたんだな」「嘘つき小林」「僕の桐屋さんをよくも傷つけたなっ!!」「謝れよ、桐屋と委員長に」「委員長なんで泣いてんだっけ?」
「……う…………あっ……あっ」
「あーやーまーれ」「あーやーまーれ」「あーやーまーれ」「あーやーまーれ」「あーやーまーれ」「あーやーまーれ」「あーやーまーれ」「あーやーまーれ」
「……やめてくれ…俺は……うぅっ……」
「……蓮司」
「ら、蘭子……俺は…………」
「心から申し訳ないと思ってるなら…今ここで切腹しろぉっ!!」
「できねぇよぉぉっ!!」
「ならば死ねッ!!マイっ!!」
「やっと出番かっ!!ふぉぉあちょぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!」
「…………あのさ」
地獄のような空気を変えたのは、氷のようにクールなその一言だった。
無視することを許さない静かな圧を秘めたその一言は狂気に呑まれた空間を一気に冷やす。マイの回し蹴りが鼻先に迫っていた蓮司、辛うじて命拾い。
声の主は……?
「……あのさ、合唱練習するっていうから残ってるんだけどさ…」
「……あ、風花さん」
淡い金髪のショートカットにカミソリのような眼差しが印象的なこちらの美少女。近寄り難いクールな立ち姿の彼女の名前は風花さん。
この桐屋蘭子をして呼び捨てにし辛い雰囲気を持ってる。
謎の多い女だが……クラス内では一目置かれる存在なのである。
いかなる派閥にも属さないスクールカースト序列外。例えるならモンハンの食物連鎖カテゴリーには「イビルジョーは除く」と書かれるらしいがそのイビルジョーです。
対抗できるのはラージャンこと4組の御船さんくらいと噂される彼女が口を開いたら清聴しなければならない。これは不文律。この蘭子ですらそれは無視できないのである。
「練習しないなら帰っていい?」
「……ごめん」「みんなー、始めるよ!」「机どかしてー」「早く、急いで」
その一言にみんな、そそくさと練習の準備を始める。
そしてこの空気感は私が帰る機すら完全に逸脱させてしまった……
だって風花さんが言うんだもん……(汗)
地球とスクールカーストが崩壊するまであと61日…




