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34日目 ……ウス

 2月3日、金曜日。私は病院に居た。

 時は昨日まで遡る…私は激辛ラーメンチャレンジなる拷問を受け、空きっ腹に12.5キロもの唐辛子を食らい、撃沈。

 病院に搬送されて入院が確定。


「はぅぅぅううううっ!!」


 ブリブリブリッビチッ!


 …今に至る。


「はぁっ…はぁっ!この桐屋蘭子…産まれてこのかた一度だって絶食したことなんてないっていうのに…っ!こんなっ!こんな仕打ちが……っ!!」


 私の胃腸は深刻なダメージを受け、今日もまだブリブリいってます。肛門がすり切れてます。


 地球滅亡まで時間が無いってのにせっかく退院した病院にとんぼ返りからの絶食。

 私は自分の垂れ流したクソの香りを貸し切り状態のトイレの中で感じながら考えてた…


 このままでいいのかって。


「…地球滅亡を予知してからの私の人生、今のところ半分近くが入院生活…内容の薄い日々を淡々と消費してるけど…気づけば滅亡まであと67日…このままでいいの?私の人生という物語を飾るラストがこんなので…」


 否…断じて否!


「蘭子もっと輝かしい人生を送りたいっ!!」

「よくぞ言いました」

「うぎゃっ!?」


 こっ…この声は!?

 密室の個室内で隣から響く戦慄の旋律に蘭子戦慄。この声は聞き間違いようがない。


「しっ…白浜ァ!!」

「どうしたんですか?桐屋さん。またこの病院で会うなんて」


 白浜玲美だぁっ!!悪魔崇拝者の、生きる災害とトイレでエンカウントしちゃった!!

 しかしなぜこのトイレに!?


 その瞬間の私の動きは早かった。

 とりあえず紙の残量を確認した。問題ない。恐らく取り替えられたばかりのトイレットペーパーは肉厚なロールで私に安心感を与えてくれる…

 美しい…まだ誰も手をつけてないトイレットペーパー…


「残念だったね白浜、今回ばかりは混沌は起こせないっ!」

「いいえ桐屋さん。私は常に混沌と共に…」


 ぐるるるるっ!ぐぎゅるっ!!


「ふぐっ…!」

「ところで桐屋さん、先程人生の在り方について憂いていましたが……」

「白浜よ。あなたは人生最後の100日間、どうやって過ごしたい?」

「私ですか?核ミサイル基地を乗っ取って無軌道にミサイルを乱射したいです」


 クレイジーだ。こいつ、精神病棟に閉じ込めなきゃいけない奴じゃん。


 ぶちちちちっ!!ぶっ!!


「ぐふっ…お腹が……痛い…トイレから出られないよぉ(´;ω;`)」

「今回はどうしたんですか?しかも、こんな場所で…」

「トイレでケツ肉鳴らしてる理由なんてみんなひとつでしょ?…私は人の気配を感じたらウ〇コできない人だから、わざわざこのトイレにやって来たんだよ。前の入院中に発見したんだ。この穴場トイレ」

「確かにここは人が来ませんね」

「そういう白浜は何してんの?」

「私は生贄を捌いてます。病室だと看護師がうるさくて……」


 え?私の隣で?


「やだやめて。道理で臭いと思った」

「臭いのはあなたです」



 ズゥゥゥウン……ッ


 なんだ?この地鳴りは……?


「今の地震?」

「地面の揺れに関しては強風や建物の揺れ、さらには体調も考えられますので一概には言えませんね」

「そんな固い返答求めてないんだけど?地震?って訊かれたら揺れましたねくらいでいいんだよ」

「……そんな内容のない会話は無意味です」


 確かに…


 ズゥゥゥン……ッ


「また揺れた!!腹に響くっ!!痛いっ!!」

「……桐屋さん、天井を見てください」


 白浜に言われて上を向くと天井からパラパラと埃なのか砂なのかよく分からんんものが落ちてきてる。髪の毛に降りかかるからやめてほしい。

 しかし嫌な予感がするなぁ……


「白浜、お前の仕業か?」

「はっ!まさか混沌!?」

「ふざけんな死ね」


 この状況、今すぐにトイレから脱出するのが吉だろう…しかし私には問題があった。


 ブブブブブッ!!ブチッ!!


「うっ…うーぼくんの勢いが止まらないっ!!」

「大変ですね」


 そうこう言ってる間にもメキメキと音を立てて建物が揺れだす。天井に亀裂が走りいよいよシャレにならん事態に…


「今回の混沌に関して私からの所感を述べさせていただきます」

「なに?死ぬの?死んで詫びる?」

「今回の混沌は非常に雑かつ捻りもなく尚且つ身から出た錆であるということです」

「日本語でよろしく」

「桐屋さん……どうやらこの病棟は取り壊されようとしている…私はそう推理しました!」



 蘭子おすすめトイレスポットであるこの旧入院棟は、病院本館から離れた敷地内にぽつんと立ってる。

 若干傾いてるけど……


 旧入院棟は鎖で入口が施錠……いや封印されていて侵入は安易ではない。

 でも私は暇を持て余した入院生活の中でそんな旧入院棟に入り込める隙間がある事に気づいた。

 それは一階の割れた窓だ。

 放置された旧病棟の探検楽しかったです。


 そしてなんと!この旧入院棟まだ水道が生きてる!


 私専用のトイレ病棟となったのだった……




 ……それがここです。


 メキメキメキッ!!パラパラッ!!


「そんなバナナ!?取り壊す前に便器とか回収しないわけ!?まだ使えるのに!?」

「面倒だったんでしょう」

「水道使えるのに!?」

「面倒だったんでしょう」

「取り壊しの話なんて、何も聞いてないのに!?」

「面倒だったんでしょう」


 バカな……っ!!


「全部お前のせいだっ!!お前が居るからこんな目に……っ!!」

「ありがとうございます。あなたの神もお喜びです」

「ふざけんな死ね!!」

「このままでは二人とも死んでしまうでしょうね……」


 隣で個室の開く音がした。


「おいまさか白浜ぁ!?ひとりで逃げようって魂胆じゃないよな!?」

「私には混沌を振りまく使命が……」

「いやいやいや、死ぬならお前だ!お前が死んだ方が世界の為!」


 なんなら隕石降ってくるのお前のせいまであるからな!?


「そんな事言ってないで桐屋さんも出たらどうでしょう?ああ、すごいことになってますよ?これ、建物が縦に押しつぶされてるんですかね……窓枠とか、ひしゃげてます」

「出れるなら……っ!!」


 ブリブリブリッ!!


「出てるっつーの!!」

「……あなたにその意思がないのならそれもまた思し召し……神に捧げられてください。ナイアル様バンザイ!!」

「てめぇ!!」

「ふたぐんっ!!」


 きゃぴきゃぴ叫びながら白浜の足音が轟音に紛れて消えていく……

 え?まじで?初めての友達とかほざいてたくせに?

 てかこれ、まじで?


 メキメキメキッ!!ドゴゴッ!!

 ブリブリブリッ!!ビチチッ!!


「はわわやばいやばいやばいっ」


 4月10日に地球滅亡を予知した私はどこかで油断していたのかもしれない…私の未来予知は私の視点で見せられた。

 私は4月10日に隕石衝突の瞬間を見る……つまりその日までは生きると……


 バナナ事故で一回死亡。

 混沌のミサイルも死んでたかもしれない。


 混沌の力には予知を改変するほどの強制力が…っ!!


「こっ……殺されるっ!!このままじゃ…っ!あのイカれ女に殺されるっ!!」


 もうなりふり構ってる場合じゃねー。

 私はパンツもケツのクリーニングも忘れて扉を開……


 ズゴゴゴっ!!ドゴォォッ!!!!


 扉に手をかけた瞬間、真上に天井の瓦礫が落ちてきた!個室の壁に乗っかる事で瓦礫の直撃は回避されたけど、本来空いている個室の上が瓦礫で蓋された!

 そして今の衝撃で個室そのものがひしゃげた!


「ドアが……っ!開かないっ!?」


 ブリブリブリッ!!


 脱出の手段を奪われた蘭子、緊張により胃腸が活性化。

 扉も歪んで開かず、上も塞がれ……


 これ、万事休すじゃね?


「うっ……うわぁーーっ!!こんな最期嫌だ!!廃屋のトイレで圧死なんて…っ!こーちゃぁぁんっ!!」


 泣き叫ぶ私の声も崩壊の音にかき消されていく……多分今、私が居るのも知らないショベルカーだかエヴ〇ンゲリオンだかがこの建物を上から切り崩しているんだ!


 このままじゃ死ぬ!!





 --死に瀕した際、人はリミッターを外して普段以上のパフォーマンスを発揮する。俗に言う樺地かばじの馬鹿力である。その気になれば手塚ゾーンもコピーすることが可能。ウス。


 その常人ならざるパフォーマンスは身体能力のみならず、頭脳にも発揮される。

 IQ3600にも及ぶこの桐屋蘭子の至高の頭脳が樺地化したならば……その能力値はまさに樺地。

 私の脳は死に瀕して高速回転してた。


「きゅーーーーんっ」


 ベキベキベキッ!!ボゴォォッ!!ズズズズッ!!


 ブリブリブリッ!ビチッ!!


 前も上も塞がれた……クソは止まらず、個室は徐々に圧し潰されていき、床はひび割れ、瓦解寸前……

 回転した私の脳が弾き出した唯一の生存手段。雲間に差したただ一つの光明……


 一縷の望みをかけて私はその可能性に飛び込んだ!


 *******************


「えぇ!?白浜さん今なんて!?旧入院棟に人が居た!?」

「はい、トイレしてました……」

「なんでそんな所で!?」

「人の気配のある所では……出ないそうです」

「それで……誰が……っ!まさかっ!?」

「はい黛さん。桐屋さんです」

「あぁなーんだ」

「ひどい……見てください。見るも無惨なあの倒壊した旧入院棟を…可哀想に……桐屋さん、ぺちゃんこですね」

「事故ね。仕方がないわ」

「……黛さん」

「そんな事より白浜さん。あなたの隣の病室の患者さんから夜中にあなたがうるさいってクレーム来たから、桐屋さんの病室に移りなさい?」

「私達は彼女の悲しみを抱えて生きていくんですね……」

「今日は赤飯よ」

「素晴らしいです……」


 勝手なことばっかり言ってんなよ(怒)


 その時アスファルトを砕き割って敷地内の地面からさながら水面高く飛び上がるイルカのように飛び出し、ついでに黛にエルボーを食らわせたのは誰なのか……


「ぐはっ!?」

「きっ……!なっ!!なにぃ!?桐屋さん!?」


 アイアイアイヤ〜♪


「バッ……バカな……っ!これほどの混沌を前に……どうやって!?」

「ぐふっ……どうして……私を殴ったのよ……」

「「てか……」」


 ふふふ……よかろう。教えてやろう。私がいかにしてあの窮地を脱したのか!


 桐屋蘭子の作戦!それは床を掘って逃げることだったのだ!

 建物は上から順に破壊されていっていたのはトイレの崩壊具合と天井から崩れる状況から推察できた!

 故に!蘭子は建物が歪んだ際にひび割れた床から下へ!トイレから地面へ逃げたのだ!!そして下水管を伝って、ここまで来た!!


「取り壊される建物に閉じ込められても倒せない!私は「神」になった!あなた達は「神」にだけは勝てない!服従しかないんだ!」

「「臭いっ!!」」


 世界中のトイレが吹っ飛ぶまであと66日…

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