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32日目 復活の蘭子、魂の慟哭

 2月1日水曜日ぃっ!!この日を待ち焦がれたぜっ!!

 2月に入り地球滅亡まであと69日!人生ラストの100日間をこんな雑な感じで消費した桐屋蘭子、病室に唾を吐きながら退室!!


「長かった……」

「本当に長かった…ううっ」


 担当看護師黛が涙を流してる。私は荷物を纏めて黛と一緒に下に待つ母の元に…

 ……が、その前に。


「黛、君に話がある」

「今日まで甲斐甲斐しく世話をしてあげた私に対してのお礼ですか……桐屋さん、あなたにも人の心があったんですね……」

「昨日私の事簀巻きにしてくれたの忘れてないからね」


 ボカッ!!べシッ!!べシッ!!


「むぐーーっ!!むぐむぐっ!!」


 黛を簀巻きにしてから階段を転がし、1つ目のミッションを終えた私は母の元へ向かう前に行く場所がある。

 向かおう。

 立つ鳥跡を濁さずと言うではないか。


 やって来たのは出来れば近寄りたくないと評判のこの病室だ。

 なんか爆発があったらしくて若干焦げてるけど……

 この部屋の主の名は白浜玲美。邪神ナイアルなんとかさんから混沌の力を授かった、存在するだけで全てを混沌に巻き込む生きる災害。


「白浜ー、生きてるぅー?」


 入院着を脱ぎ捨て、スパイシーピンキー(蘭子愛用のドクロ柄Tシャツである。今はプレミア価格で50,000円くらいします)に身を包み退院マウントを取っていく。


「あーーーーっ!!」


 メラメラメラ


 …しかし白浜は漆黒の炎を全身から噴き出させベッドで叫んでた。スパイシーピンキーどころではない。向こうは燃え盛る入院着。


「なんてインパクト…負けた……っ」

「あーーーっ!!」

「白浜、それ混沌の力のエネルギー?私も偶に出るよそれ。私のは青色の炎だけど」

「あ、桐屋さん。どうしたんですか?」

「退院するからさ、わちし」


 燃え上がりながら立ち上がった白浜は報告する私に対して少ししゅんとなりながら「そうですか…」と一言。


「退院しても私達の友情、忘れないでくださいね?」

「そんなものは存在しない」

「そんな…」

「でも連絡はする。約束したからね。易者のババアに会わせてあげるよ」

「桐屋さん…」


 この混沌の力で易者のババアを始末する。

 蘭子はここに来て究極とも呼べる武力を手に入れたのかもしれない。笑いが止まらなかった。


「ふふふ…はははははっ……はぁーっはっはっはっはっはっ!!」

「何がおかしいんですか?」

「そんな事よりさ、白浜。ちょっと私に付き合ってくれない?紹介したい人が居るんだ」

「えっ…///お付き合いと同時にご両親への挨拶……っ///」

「違う」



 燃え盛る白浜を連れて小児病棟へ。当然、周りは大パニック。


「きゃーーっ!!」「かっ…火事だぁぁっ!!」「助けてぇっ!!」


「……ねぇ、そのエネルギーなんとかならないの?」

「昨日はなんの混沌も起こせなかったので少し…エネルギーが溜まっているようでして……はい」

「はいじゃねぇよ」


 つまり一日一回人に迷惑かけないと生きていけない女だと…

 火災報知器鳴らないかハラハラしながら私は目的の人物の病室の戸を叩く。


 扉が開かれた先--


 そこでは母親に寄り添われ、ベッドの上で体を起こした少女がこっち見てた。


「あ、お姉ちゃん……えっ!?」

「あら、桐屋さん……あの…隣の方、火事ですよ?」




 --アキホちゃんの手術は無事に成功したらしいと、さっき転がした黛から聞いてた。


 見たところ術後の経過も良さそう。私はHカップ(自称)をホッと撫で下ろす事が出来た。手術からずっと胸が重たかったのは乳腺の肥大化とは無関係なのである。


「アキホちゃん、無事に手術終わってよかったよ。約束通り頬っぺ、ハムハムさせてもらうよ?」

「ツッコミどころがおおすぎる…あっ!燃えてる人!キャロベティをころそうとしてた人だ!!」


 混沌の母白浜とベイビーちゃん、因縁の邂逅だ。


「あの…なんで燃えてるんですか?その人…」

「お母さん、アキホちゃん、この人は白浜玲美。私の子分です」

「子分?秘密結社『混沌の夜明け』の社長は私ですよ?」

「この人が燃えてる理由は、彼女は熱い女だからです」


 今日はアキホちゃんに新しい友達を紹介しに来たの。


 ケンタロウ君からの手紙を大事そうに抱きしめるアキホちゃんの前に座る。私の身なりを見るアキホちゃんは首を傾げながら「退院するの?」と尋ねた。

 心做しか少し寂しそうだ…


「そうなの」

「そっか…よかったね」

「アキホちゃんも早く元気になるんだよ?」

「大丈夫…手術上手くいったもんね!」


 アキホママが笑う娘の頭を優しく撫でている。美しい…私の理想とする世界が今目の前にある。


「頬っぺハムハムの件なんだけどさ…」

「なに?頬っぺハムハムって?それよりキャロベティ知らない?手術の後からいないの」

「キャスパリーグな?」

「キャロベティよ」

「アキホちゃんに伝えないといけないことがある」


 不遜で友達思いな1匹の野良を思い出しながら私は真実を告げる覚悟を整えた。

 白浜もアキホママもそんな私達をじっと見守ってる…


 ……よし、言わなければ……アキホちゃんは友達だから……


「……なぁに?」

「キャスパリーグなんだけど……」

「キャロベティだよ」

「……(ごくり)」

「……?」

「…………あいつ……雄なんだ」


 アキホちゃんフリーズ。私は下唇をぐっと噛み締めて固めた覚悟のまま、アキホちゃんに指摘する。


「…………雄にキャロベティはちょっとどうかと……お姉さん思うんだ」

「知ってるけど」

「えっ!?…ネーミングセンスおかしくない!?」

「おかしくない!キャロベティはキャロベティだもん!」

「いやいや!デブリザード・エストロゲインの方が良くない!?てか、普通そうなるよね!?」

「…………デブ…リー……?」

「どう思う?2人とも」

「……桐屋さん、独特なセンスなのね」

「なんですか?その混沌のセンスを感じない名前は……」


 こいつら何も分かってない。


 …… デブリザード・エストロゲインが一人の最期を選んだ事は彼の名誉の為に黙っておこう。

 元々野良猫…ふらりと気まぐれに居なくなる事もある。アキホちゃんがどこかで元気でやってると信じてくれればその方がいいだろう。


 その代わりと言ってはなんですが……


「で、まぁデブリザード・エストロゲインはちょっと散歩にでも出かけたんだと思うんだけど…」

「キャロベティだってば」

「私も退院しちゃうしそうなるとぼっちなアキホちゃんこれから退屈になっちゃうでしょ?」

「娘の事ぼっちとか言わないでください」

「てなわけで、手頃な暇つぶし相手として今日は私の子分を紹介しに来たんだ」


 ニッコニコで自信を持っておすすめする私に対して、燃え上がる白浜をじっと見つめるアキホちゃんが引きつった表情を浮かべてる。


「……この人?」

「白浜玲美です」


 まぁ…この桐屋蘭子と隣で比べたらそれも無理もない話か…私の魅力がありすぎるせいだなぁ…

 でも我慢して欲しい。


「白浜、命令します。お友達になりなさい」

「お姉ちゃん、私に拒否権ありますか?」

「桐屋さん、彼女はサバトの生贄ですか?」


 この白浜という女、思考回路が危険すぎるんだけど…


「もしくは秘密結社『混沌の夜明け』の入会希望者…?」

「なんでもいいけどそう」

「なに?こんとんのよあけって……」

「アキホちゃん、このお姉ちゃんの事気に入った?」

「ぜんぜん」


 弱ったな……


「桐屋さん、お言葉ですが…彼女から混沌を感じません……我々の同胞となるには資質が足りてないのでは……」

「桐屋さん?この方はさっきからなにを仰ってるの?」

「大丈夫ですよお母さん。つまり娘さんのこの先の人生は平穏そのものという事です」


 アキホちゃんはお気に召さないみたいだけど、こんなのでも話し相手がいた方がいいだろうから…私がお見舞いに来るまでの間の繋ぎって事で…


「アキホちゃんお願い、この人友達いないんだよ」

「かわいそう……」

「失礼な、私には桐屋さんという友達がいます」

「おいっ!!口を慎めよ!!名誉毀損だぞそれは!?」

「……えっ……あの……そこまで言われたら流石の私も……傷付く……( ´•̥̥̥ω•̥̥̥`)」


 ゴウゴウ燃えながらポロポロ泣く忙しい女を見つめていたアキホちゃん、どうやら何か感じるものがあったみたいで「かわいそう…」と呟いてから、とんでもない決心を固めるようによしっ!と力強く頷いた。


「わかった!私がお友達になってあげる!だからお姉ちゃん、安心して退院してね!」

「……アキホちゃん…」

「あらあらこの子ったら…うふふ」

「白浜のお姉ちゃん!私が今日から遊んであるげるからね!」

「…………え……っと……なんか…私…バカにされてません?」


 仲間になりたそうな目でこちらを見ていた白浜はアキホの仲間になった!


 地球が吹き飛ぶまであと68日…

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