二十三
眩しい日差しが降り注ぎ、限りなく澄みわたる青空とは裏腹に竹田の疲れはピークに達していた。タバコは痛む頭をさらに鈍くさせ、コーヒーは空腹感を紛らわすかわりに胃の痛みをもたらす。気を抜けば立ったままでも眠ってしまいそうだ。しかし先ほど佳奈を待つと言ってしまった以上疲れに身を任せることはできない、少なくとも夜までは眠れないだろう。フワフワとした感覚の中で竹田はタバコを吸い続けた。そろそろ佳奈が来るころであろう。校舎の方を眺めると佳奈の姿が見えた。竹田はそんな佳奈を視界に入れながらも気付かないふりをし、タバコを吸い続けた。
「コー君!お待たせ。」
顔を上げると少し頬を紅潮させた佳奈の姿があった。
「ああ、相変わらず元気そうだな。」
竹田は自分の今の体調とはあまりにかけ離れた佳奈の様子を見て素直な言葉を口に出した。
「何それ、ちょっとおっさん臭いよ。」
「そう言うなって、ホントに死にかけなんだからさ。」
「ふーん。」
明らかに青白い竹田の表情を見て、佳奈も少しだけ心配そうな顔をしている。もともとスポーツやアウトドアとは無縁の生活を送っている竹田の肌は白い、しかし今日は更に不健康な様子が見てわかるほどに顔色が示している。
「で、どうするんだ。どっか行くのか?あんまり行けそうにないけど。」
「うーん、別にどこか行きたい訳じゃないけど、せっかくだからしばらく一緒に居たいな。」
どこかに行きたい訳じゃないなら帰らせてくれよ、そんな思いを強く感じたがさすがにそんなことを口走るわけにもいかず、竹田もどうしようかを考えた。
「そうだな、さすがにこれ以上疲れるようなことはしたくないからな・・・。」
普通ならこんなセリフは彼女に対して言うことではないだろう、だがこんなさりげない正直さも竹田という人間のいいところである。佳奈も当初はこんな無神経な物言いに腹を立てたりもしたが、本心を隠して偽りの言葉を並べる着飾った男よりよっぽどわかりやすくて人間味があると、だんだん思えるようになってきた。
「じゃあ・・・今からコー君の家に行っていい?家でのんびりしようよ。」
「俺の家?それはありがたいけど、何にもやることないぞ。へたしたら帰った瞬間に寝ちゃうぞ。」
「うん、別にいいよ。」
「そうか、じゃあさっそく行こうぜ。早くしんと車の運転も危険だからな。」
そう言うと竹田は足早に車の方に歩き出した。佳奈もそれに続く。竹田には佳奈の気持ちがよく解らなかったが家に帰れるという安心感から、足取りも少し軽くなった。二人は車に乗ると学校を出て、いつもより安全な運転で竹田の家に向かった。佳奈は車の中でも竹田の横顔を眺めながら色々な話を上機嫌で話していた。しかし竹田にはそんな佳奈の気持ちが全く解らなかった。




