低次の輪
手作りのものが、目に見えて長持ちする、ということはサユリにもわかる。
というか、大量生産された安物など、こちらとしても古くなったら使い捨てるもの、としてしか見ない。
でも、高いものはそれだけ大事にするから長持ちするのだろう、とおもっていた。
大事にさせているのは、払った金額だとばかり、サユリはおもっていたが。
無意識に、その品が持つ波動にふさわしい扱いをさせられていた、ということだろうか。
気づいてないだけで、波動というものを、サユリ自身も感じとっていたというのか?
「わかっている人間は、高くてもいいものを、ちゃんと選ぶ。選ぶためには、豊かであることが必要で、そういうものを愛用することでさらに高次になるっていうな。豊かさの中で循環してるんだが、どこかで無理をしてでもその流れに入らないことには、延々と低次の次元に囚われたままになってしまう。例え安物だろうと大事に、喜ばしく使っていればな、実はその物も自分も波動が上がって、そうすると金はなくても、人から贈られたり、安くいいものが舞い込んだりはしてくる。そういう道もあるけど、どちらが速いかといえば、最初に金を出してしまう方なんだ」
本当に、耳が痛い。
安物だから、大事に使わず、粗雑に扱い、ダメになったら使い捨てる──
低次とやらの輪をぐるぐるとまわりつづけている自分が、目に見えるようだった。
もう、真偽がどうとかいう問題ではない。
意識を変える必要がある、と強くおもう。
サユリには、高価な仏壇をぽんと買うような金も、勇気も、まったくない。
けれど、今持っているものを大事に使うくらいのことはできるはずだ。
「職人の中でも、仏壇を作ってる職人のルーツは、宮大工だっていうから。言ってみれば、神社仏閣を家の中にぽんと置いたようなもんじゃないか。仏壇を買うのに、必要だから、邪魔だけど、仕方なく……なんておもってるのは、本当にもったいない。必要だ、とおもってた人間までは、ちゃんとその有り難みをわかってたんだろうにな。でも、どうして必要なのか、を伝え損ねたんだ」
「あー……」
たしかに、母にはてんで伝わっていない。
祖父には伝わっているのだろうか。
わかっているのなら、どうして母におしえなかったのだろう。