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石の正体

 ジェルとムックスは、湖の底にあった石の隙間が入り口になっている水路を通り抜けた。

「ぶはっ。」

「ふう…。」

 近くに積んであったたいまつに火を点けて、周りを照らす。

「あいつらはいないな…。」

 ジェルは舌打ちした。

「大丈夫だ…。この先にはまたデカイ魔物がいる…2人では行けないはずだ。…3人でも無理だったからな。」

「…その先に行ったことは?」

「ない…。」

 地面は大小さまざまな石で埋め尽くされていて進みにくかったが、天井が高く傾斜がないぶん今までよりはましになった。

「待て…。」

 角を曲がる前に、ムックスがジェルの前に手を出した。

「この先にいる…。巨大なやつで腕が4本、どっかり座ってて…やつの後ろには巨大なやつが通れるくらいのでかい穴があるんだ…。」

オオオオオオオ…

 低いうなり声が響いてきた。2人は恐る恐る角から顔を出した。

(でけえ…。)

 体格の良いムックスの4倍ほどの高さの体からムックスの身長と太さがある腕が4本出ていて、顔には左右それぞれ光る目が3つずつ、巨大な鼻の下には湖の魔物に付いていたような牙がびっしりと生えていた。

「行くなよ…こっちも2人じゃどうにもならない。機会を待つんだ…やつだっていずれ眠ったり飯を食いに行ったりする…。」

 ムックスは小声で話した。そして、笑みを浮かべた。

「飯を食いに行ったりな…。」

(?) 

がつっ

 ジェルの頭に衝撃が走る。歯を食いしばって意識を保とうとするが、視界がぼやけ、音が消えていく。

(くそ…気を失ってたまるか…石を…手に…入れて…。)

ザンッ

 剣で斬りつけられ、ジェルは倒れた。


 巨大な魔物はいなくなり、先に進む道が開いた。

「行こう…。」

 ムックスが青白い男と緑髪に言い、2人は頷いた。緑髪は歩きながら、ジェルに使った剣を魂の抜けたような顔で見つめる。

「…大丈夫か?」

 青白い男が覗き込む。緑髪の目はふらりとその顔を見た。

「……ああ…。」

「うわ!」

 ムックスが叫ぶ。前を見た2人も体が固まった。

グルルルルルル…

 いつも、働きながらおびえ続けていた声。それが聞こえる。進んだ先には大小無数の宝石の甲羅を持った魔物がいた。

グル?

 1匹がこちらを向く。

グルル…ズン…ズンズンズン!!

 こちらに向かってくる。3人はようやく動き出した。

「うっわあああああ!!」

 3人は走って元来た道を戻る。

「ひいえああああああああああ!」

 青白い男が大声を出し、3人は愕然とした。前には、さっきの巨大な魔物がいた。

「も、もっもお、戻ってきやがったあ!!」

 ほぼ3人同時に同じことを叫んだ。

「ど、どど、どうする?」

 ムックスが2人を見た。

「えさをやるに決まってるだろう…!!」

 緑髪が睨んで声を絞り出した。

「おい!やめろ!」

 青白い男が緑髪を止めようとした。

「俺に、俺に…お前らは何をやらせた!」


「は、はは…。」

 なぜそれが起こったのか、緑髪は覚えていない。気がつくと、ムックスと青白い男が倒れていた。とっさに緑髪は反転して、宝石の甲羅の魔物の方に向かっていった。なぜそうしたのか自分でも分からない。冷静に考えれば、ここは逃げ帰るべきだったろう。

ズンズンズン!!!

「石だ…石が全てを変えてくれる…。」

 緑髪は宝石の魔物の群れに向かって、笑みを浮かべてふらふらと歩いていった。


 きれいなシャンデリアの下、豪華な料理があり、やや派手な服を着た若い者がいて、年齢にふさわしく落ち着いた服装の者がいる。持っている絵や骨董品の話を自慢し合う紳士がいる。ここは貴族達の集まる場所だ。年配の婦人が金縁のメガネをかけた中年の男に話しかける。

「あなたは、宝石鉱山を運営してらっしゃるとか…。」

「ええ…そのとおりです。」

「あなたの鉱山で奇跡の石というものがあると聞きましたの。私に売ってくださらないかしら…。」

「ああ…あれは私が労働者達に流した噂でして…本当は無いのです。」

「まあ…どうしてそのような噂を?」

「何分、鉱山は危険な所ですからね…。彼らに希望を与えているのですよ…。」

「…石を取るために、多くの人が亡くなっていると聞きましたが…新しく集める手間がかかるのでは?」

「いえいえ…一致団結して私の方に向かってくる方が厄介なのでして…。それを考えれば軽い手間ですよ。」

「ホホホホホ…労働者の方々、大変ですわねえ…。」

「はははは…。」

 戻ってきた婦人に対して、別の婦人が話しかける。

「石は買えましたの?」

「無いんですって…。ギルワットが流した噂だそうで…。それにしても…彼は…汗の臭いが抜けておりませんねえ…。」

「ホホホホホ…所詮はただの成り上がり…。」

「ホホホホホ…。」

前に書いた「長いエピローグ」は大きな塊として、1話と2、3、4話と5話の3つに別れていて、2、3、4話は順番を入れ換えたり、1話削除しても話は通じるように構成していました。話の構成もいろいろ試している段階で、今回は一本道の話として書いてみました。構成はこっちの方が気に入ってます。

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