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ブランコ

 夏の夜、ブランコに乗った。

 自宅アパートから徒歩二分ほどの小さな公園。ブランコは二脚ある。

 ブランコに座ると星が見える。

 ブランコをこぐと星が良く見える。

 星に混じって空を飛ぶ飛行機の点滅が赤く遠くに瞬いている。


 僕の左のブランコには誰もいない。

 この公園には僕しかいない。

 住宅街にあるブランコを僕は自分のペースでゆったりとこぐ。


 大人の僕の身体をブランコは余裕を持って受け止めるが、僕の手には子供の頃よりはるかに大きな体重がかかっている。

 一生懸命こぐことは出来ない。明日も仕事がある。怪我をしたら大変だ。


「ちょっとブランコをこいでくる。サキもくるか?」


 夕飯を食べたあと妻に言った。怪訝な顔をして「なんで?」と言った妻はついてこなかった。


 ブランコをこぐと夜空に星と僕の足が映る。

 小説家先生なら、空に落ちていく――とか書くのかな? いやそれじゃ駄文だろう。

 せめて――夜空に落ちる。いやこれでも一緒か。


 僕はブランコを降りて、家に帰る。

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