番外編 千代の初恋
千代視点から、途中で拓磨視点に変わります。
よく私は、許嫁などの話を聞かれる。ですが、あいにくと私は、そんな人はいない。義両親が私を大切にしてくれてますから、結婚相手は自分で決めて良いと言ってくれる。普通の令嬢さんなら、いるよね。ですが、私はいないので自由!っとは言えない。わたしには、初恋が中学1年生にもなってない。もともと、そんな余裕なかったから。これは、都子と私と拓磨が中学1年生のお話。
それは、ある朝のことでだった。私はいつも通り、都子と一緒に登校していた。
「ねぇ、ねぇ、千代! あれって、」
うん?
私は、都子が指差した方を見た。
「ああ、あれは政志先輩だね。ほら、バスケ部の、拓磨の先輩。」
「へぇー。あの人何気に人気ぽいよね。」
「そうなんだ。」
政志先輩、お名前と顔は知っていた。だって、拓磨が自慢してくるから。
あっ、そういえば、クラスメイトから言われたことがあったな。
「ねぇ、千代ちゃん。千代ちゃんって、拓磨くんと付き合ってたりしないのー?」
「うんうん、全然だよ。だって、私初恋もしたことないもん。」
「えー、以外!千代ちゃん、そんなに可愛いのに〜!」
「そんなことないよ、ありがとう。」
っというか、拓磨は恋愛対象にはなったことがなかったしなー。だって、都子の方が大事だったから。それに、側にいててわかる。拓磨がどれだけ、都子のことが好きなのかって。
「‥よ!‥んよ!千代!」
はっ!っと我にかえった。
「大丈夫⁇」
「うん、大丈夫だよ。ちょっと、ボーっとしてただけ。」
「そう、なーんだ。てっきり、政志先輩に見惚れていたのかと思ったよ。」
ええっ⁈そんなふうに見えてたの?恥ずかしい‥。
「違うよ?ちょっと、ね。」
「ふーん。」
「ねっ?もう行こう、遅刻しちゃうよ。」
「それもそうだね、行こう!」
立ち去ろうとしたその時、ガンっと音がした。政志先輩がゴールを決めていた。
わぁー!かっこいい‥。
「ふふっ。」
都子が私を見て笑った。
「おやおや、今千代の恋のゴールが決まった音がしたよ⁇どうなのかなぁ?千代くん?」
ボッっと、自分でも顔が熱くなったのが分かった。これが、恋ってものなの?
「都子、恋に落ちちゃったかも。」
「ふふっ、千代。落ちちゃったかも、じゃなくて、落ちたんだよ。」
うぅ〜。私は初恋を経験した。
そして、私はたまたま拓磨からの頼みで男子バスケ部のマネージャーをすることになった。都子とともに。都子は、
「やったね!これで、政志先輩に近づけるよ!」と言っていた。うーん。私はそんなつもりではいったわけではないのだけど‥。でも、同時に期待はしていた。
「先輩方、お疲れ様です!こちら、タオルです。」
私がバスケ部のマネージャーになってはや3ヶ月がたった。
「おおっ、サンキュー!千代ちゃん。」
「いいえ、」
私は、また別の先輩のところへ行ってタオルを渡しに行った。
「千代ちゃん、優しいよなぁ。」
「そうだな、可愛いし。」
「都子ちゃんもいいけど、あれだもんなぁ。」
「あぁ、あれだもんな。」
先輩方は、何故か俺を指差す。
「拓磨〜!羨ましいぞ〜。あんな可愛い2人と幼なじみなんて。」
俺の先輩達は、俺に肩を組んだ。
「ちょっ、先輩。あんまり、変な目であの2人を見ないでくださいね。」
「なんだ〜。ヤキモチかー?まぁ、お前のお目当ては、都子ちゃんだもんなぁ。」
ボッと自分でも分かるくらい顔が赤くなった。そして、先輩達はニヤニヤし始める。
「ちょっと、何言ってんですか⁈」
「なんだ〜。顔が赤いぞ、た、く、ま、くん!」
こうゆうときは、奥の手を使うしか‥。
「政志先輩、助けてください!」
「なんだ、拓磨?」
バスケットボールを片付けていた政志先輩は、俺のところに来てくれた。
「ちょっ、政志に言うのは反則だぞ、拓磨。」
「先輩方がからかってくるからですよー。あぁ、政志先輩、あの2人のマネージャーのことを話してたんですけど、先輩達がはなしてくれなくて、」
「そうか、お前らもほどほどにな?」
「そうゆう、政志こそどうなんだ?お前は、どっちが好みなんだ?」
先輩達は、今度は政志をターゲットに攻める。
「そうゆう話に疎いのは知ってるだろ。からかうなよー。」
「ちぇっ、だから政志はつまんないんだよな。」
「ははっ」
そう、政志先輩は笑った。でも、俺はそうとは思わなかった。だって、政志先輩の視線はいつも千代に釘付けだったから。
政志先輩以外の先輩達がいなくなったのを見計らって俺は言った。
「政志先輩、千代のこと好きですよね?」
「んっ?なんだっ⁈」
やはり、と思った。だって、政志先輩は嘘をつくとすぐ目をそらす。(これは先輩情報)
「先輩、嘘はダメですよ。」
「やっぱり拓磨は騙せねーな。そうだよ。ってても、もうフラれてるんだぞ。掘り返すなよ。」
はっ?
「えっ?どうゆうことですか?」
「だから、掘り返すなって。‥千代がバスケ部のマネージャーをやって2週間たったとき、思いきって告白したんだよ。そしたら、「ごめんなさい、私、私には幸せになる資格なんてないんです。」だってよ。」
どうゆう、ことだ?だって、千代は政志先輩のことが好きって都子から聞いてるのに‥。
「まぁ、そうゆうことだよ。じゃあ、練習戻るぞ。」
「‥分かりました。」
俺は、このことを都子に話してしまった。もしかしたら、このことも都子を苦しめる原因だったのかもしれない‥。
「千代、どうしちゃったの?」
帰り道、都子にそう聞かれた。
「うん?何が。」
「聞いたよ。千代、政志先輩のこと、フったんだね。」
つっ!どうしてそれを都子が。
「うん、ちょっと違うかなって思ちゃって。それに、先輩にはもっとバスケに専念してほしいしね。私は、重荷になりなくないから。」
心が痛い。都子に嘘、ついちゃった。本当は、先輩のことは好き。だけど、私は5年の命。幸せになってはいけない。
「そっか‥。」
それから、私と都子は何も話さず帰った。それから、この話題には都子も触れないようになっていた。
もう、この時には都子の決意は決まっていたのかもしれない。
都子と私の誕生日の前日に都子は姿を消して、私たちに感謝を伝え、2度と帰らぬ人となった‥。
でも、その後家に帰ったら、ある手紙が私の部屋の机に置いてあった。
私は、その手紙を開けて読んだ。
「〝千代へ。突然で、びっくりしてるよね。〟」
そりゃあ、びっくりするよ、都子。
「〝多分、この手紙を読んでいるってことは、私はここにはいないかなぁ。私は千代に二つ伝えたいことがあってこの手紙を書きました。〟」
伝えたいこと?
「〝まず、一つ目!それは、契約の解放です。千代達が私のためにしてくれたあの本との契約。あれは、私が消えることでなくなります。あれは、禁忌の呪文だそうです。でも、大丈夫!神様に頼んで、あの本を燃やしてもらうから。それにね、今日を選んだのには理由があるの。だって、私たち明日で13歳になってしまうでしょ?歳をとってしまったら、後戻りはできないから。だから、安心して。〟」
都子がどうしてあの本のことを知っているの?それに、神様って、規模が大きすぎるよ。
「〝では、二つ目!それは、千代の、千代自身に関すること。千代は私のために、自分の恋を我慢したよね?本当は、先輩のこと好きなくせに‥。〟」
都子⁈それは、
「〝我慢しなくていいんだよ?もう、契約はないんだし、5年以内に亡くなってしまうこともないんだよ?だから、自由に恋愛して!いつも、政志先輩のこと目で追ってたからわかるんだよ?双子なんだし。だから、自分の気持ちに素直になって、私のぶんまでせーいっぱい生きて!後、もう一つお願いがあります。それは、10年後私が転生した女の子が千代達に会いに行くと思うよ。その時は、笑顔で迎えてあげてね!私からの、最後のお願い!いっぱい、いっぱい幸せになってね!大好きだよ‼︎あなたの姉より。〟」
都子‥‼︎どうして、どうしていつもそんなに優しいの?都子、また、泣かせないでよ。わかったよ、10年後待ってる。あなたと再び会えるのを待ってる。私も、大好き。ちょっと、送り返せないのが寂しいなぁ。
「政志先輩!ちょっと、いいですか?」
「ううん?なんだ、部活のことか?」
「いいえ、伝えたいことがあって。」
今日は私と都子の誕生日。私は、部活終わりの政志先輩のところに行った。
「千代‥。なんだ、遅いな。」
えっ⁈
「ずっと、見てきたんだ。お前が誰が好きなのかぐらい知ってる。」
それって、ずっと私が先輩に恋してたこと、知ってたの?
「お前、拓磨が好きなんだろ?」
「そんなわけなかった。」
ものすごく、早口で言ったような気がする。
「先輩、鈍いです。私の好きな人、拓磨じゃないです。」
「んっ?」
あ、先輩、キョトンってしてる。
「何が、「私のこと見てました。」ですか⁈私が好きなのは、先輩です!」
「へっ⁈」
一瞬で、先輩の顔が赤くなった。
「へっ⁈じゃないです!もう、2度はないですから。」
「いや、なんか。好きな子に好きって言われると、なんだ、すっごくいいな。」
「ふふっ、私も同じ気持ちです。」
本当は、内心怖かった。今度は、私が振られるんじゃないかって。でも、
「ありがとうございます、先輩。私のこと、好きになってくださって。とても、嬉しいです。」
「ううっ、なぁ、千代。だっ、抱きしめてもいいか?」
「えっ⁈えっーと、いい、ですよ。」
私は、先輩にぎゅーと抱きしめられた。
「なぁ、聞いてもいいか?お前の、双子の姉さんのこと。もっと、お前のことが知りたいから。」
「‥いいですよ。また、今度にでもお話しします。」
まだ、私の中では都子のことふっきれてはいないと思う。でも、都子が繋いでくれたこの気持ちを無駄にはしないから。
だから、そのことも踏まえて、先輩には聞いてほしい。
これから続く長い長い、物語を。