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魔法少女mirai✡7 【⚠修正前】  作者: 千歳もも
✡第3幕 _黄色と橙色の光
27/39

*episode.24 闇の魔法陣

 



「……おい」

目の前に広がる光景が現実に起こっているものだなんて、思えるわけがない。

じゃあこれは何だ?

地面に倒れていた桜澤がいきなり起き上がって、擦り傷だらけの赤羽にヘンなピンクのものをかけて、傷がなくなった赤羽と一緒に悪そうな奴と戦っていた。

桜澤と赤羽と戦っていた2人組の女は、地面に伏せたまま起き上がらない。蜜柑は私の服の裾を握り締めてガタガタと震えている。

夢じゃないよな、これ。


夢じゃないなら、何なんだ、あの2人組は。

「おい、アイツらまさか__」

小学5、6年生の時、蜜柑を苦しめていたクラスメイトが、目の前に居た。




*…*…*…*…*



「桃音、もうすぐ黄色と橙色の妖精の成長が終わるぞ!

何があったのか知らんが、いきなり成長が早まったらしいんだよ!」

家に帰るなり、上機嫌の妖精さんが飛び掛ってきた。

「そっか、良かったね。」

「おいおい、何元気ない声出してんだよ。喜べよな、仲間がまた増えるんだぞ」

そんなこと言われたって、私は檸檬ちゃんと蜜柑ちゃんの昔話を聞いて疲れてるんだよ。2人の過去は聞いてるだけでもこんなに疲れるのに、実際にあんな目に遭ったらどれだけ辛いんだろう。きっと言葉なんかじゃ言い表せないくらいだよね。

「……それにさぁ、仲間が増えるって言ったって、実際はほとんど戦ってないじゃん。いつも闇は自分から姿を消しちゃうし、そもそもそんなに襲ってこないじゃん。

なぁんか本当は戦いたくないんじゃないかなーって思うんだけど。」

だってほら、私に正体を知られたくないみたいだしさ。よく分からないよ、闇の考えることなんて。

「そうだけど、だからって放置してたら必ず殺されるだろ。こうして油断させたところを襲ってくるかもしれないし。それにこれから覚醒する光は何も知らないんだから、お前がちゃんとサポートしないといけない」

「そう言うけどさ、光にはパートナーの妖精さんが居るんでしょ。だったら私が面倒見ることなくない?

私だって誰にも支えてもらえなかったしさぁ。」

「それは仕方なかっただろ!アイツなんて仲間すら__やっぱり妖精と光とじゃ違うんだよ……。お前だって初めて仲間が出来た時、心強いって思っただろ。」

妖精さんは表情を曇らせながらそう言った。

それに今、「アイツ」って言ってた。それって多分、1番最初に目覚めた光の戦士のことなんじゃないかな。

どうしてその人のこと、まだ教えてくれないの、妖精さん。


「その人は一体誰なの?どうしてその人は私より先に目覚めたのに私のことを助けてくれなかったの?どうして妖精さんはその人の話になるとそんなに悲しそうな顔になるの?」

「ハァッ!?何で今そこに突っ込んでくるんだよ!?今は黄色と橙色の光の話をしてただろッ!?」

「それじゃ何でその人のことが出てきたの!?教えてよ、その人は今どうしてるの?」

苦虫を噛み潰したような顔で、妖精さんは俯いてしまう。

「……お前、それを聞いてどうするつもりなんだよ。もしワタシがアイツのことを話したら、お前はアイツのことを連れ戻せるのかよ!!」

「そんなこと言われても聞かないと分からないよ!」

「そんくらいの程度の覚悟で話せるかよ、仲間が増えたからって調子乗ってんじゃねぇ__」

妖精さんが私に掴み掛ってきたその時だった。


ブワッと世界から色が消えた。

「なッ!?」

妖精さんがすぐさま反応する。

「ンだよ、もう気付きやがったのかアイツら……!

桃音、今は言い争いしてる場合じゃねぇのは分かってるよな。紅達も結界に気付いてるはずだから、変身して戦うぞ」

「うん、分かった。」

私はスカートのポケットからミラクルキーを取り出して、両手で握る。

「トランスフォーム・フューチャー!!」



「妖精さん、行くよ__あっ!?」

変身して家から飛び出すと同時に、白黒だった世界が淡い紫色に染まり出した。水をたっぷり含ませた筆で紙をなぞって、その上からラベンダー色の絵の具を垂らしたみたいに、ゆっくりとじんわりと、滲むように。

どういうこと、何で闇が張った結界に色が付いてるの!?

「ね、ねぇ、妖精さん」

妖精さんなら何か知ってると思って振り返ってみると、妖精さんは真っ青な顔でがたがたと震えていた。

「くッそ、この色はッ……」

妖精さんは顔を歪ませる。

「えっ、ちょ、ちょっと妖精さ……」

「桃音、今結界を張った奴はただの闇じゃない。アイツは、アイツは__」

妖精さんは脂汗を流しながら言葉を噛み締めるように絞り出した。異常なまでの緊張感に、私の額にも嫌な汗が伝い落ちる。


「アイツは、元々__ッ!?」

妖精さんが言い掛けたその時、横なぶりの風が私の脇腹を直撃した。鈍い痛みが走って、私はどうっとコンクリートな地面に叩きつけられる。

息が出来ない、痛い!

「もも……うわぁああああああ__……」

ごうごうと響く突風の音の中に、妖精さんの叫び声も聞こえる。それも消え入るように聞こえなくなると、風は止んだ。

「よ、妖精さん……!?」

妖精さんが風に吹き飛ばされてしまったと分かった瞬間、全身ががたがたと震え出す。

私、まだ1人で闇と遭遇したことないから__

「何弱気になってるの。しっかりしなさい、桃音!」

私は2回自分の頬を張った。しっかりしなくちゃ、ここで怖気付いてなんかいられないよ。

「さあ出てきなさい、私が相手よっ!」

怯えを少しでも紛らわせるために、私はカッコつけて叫んだ。


『消えてなくなる運命……世界も、地球も、宇宙ごと。全部、いずれ無に帰す。

そしてその時は、もうすぐやってくる』


その声は、私の頭上で確かに聞こえた。



まるで誰かが囁いているような声のはずが、耳に余韻が残るほど大きく力強く聞こえる。私の腕にはプツプツと鳥肌が立っていた。

声だけでも、この人が強いってことは分かった。妖精さんが何を伝えようとしてたのかがすぐに分かった。この人は、1番最初に覚醒した光だ。ミラクルキーが闇に染まったら、光だって闇になってしまうと妖精さんは言っていた。

夢に出てきて私に助けを求めていた女の子の声とよく似ている。絶対に間違いない。

直感的にそう感じた私の頭は、もう何も考えようとはしなかった。


「し、シャイニング・ケェン!!」

ミラクルキーの石の中のハートが飛び出し、ステッキ状に変化する。震える手で、しっかりとシャイニングケーンを握り締める。強ばった体を解すために、3回ほど地を蹴って、目映いほどに煌めくワンピースを翻して、そっと着地する。

「隠れてないで姿を現しなよ!あなたが元光の戦士で、闇に染まったってことは分かってるんだから!」

私は首を直角にして空に向かって言い放った。

『…………』

まるで返答するかのように、ひゅうっと風が吹き抜ける音がした。何か挑発してるみたいだ。


「あんまりなめないでよ、これでも私だって光の戦士なんだよ!」

私は躊躇わずに続けた。一向にまともな返事は来ないけれど、ここで気を抜けば……隙を突いて襲ってくるかもしれない。気を抜くな、気を抜くな、私。

『……ふふっ』

「なっ……」

確かにその声は笑った。笑い声を上げそうになるのを堪えたような、押し殺された声だった。

「な、何で笑うの!?」

今完全に私が言ったことに対して笑ったよね?


『あなたが2番目の光ね。会いたかったわ、なんてったって__』

高茶色の髪の束が視界で揺れる。

いつ現れたのかは分からないけど、いつの間にか目の前に女の子が立っていた。

背は私より頭1つ半分くらい大きくて、私より長い紫色の髪を1つに結んでいる。

瞳は淡く銀色に発光している。

「あの子のパートナーなんですもの。」

女の子はそう言いながら、シャイニングケーンそっくりのステッキを出現させた。ステッキがしゅるしゅると何回か回ってから、女の子は柄を掴んだ。ハートの部分が逆さまになっていて、ハートの石が真っ黒だった。

「だから、今からあなたを試してあげる。

光の戦士だか何だか知らないけど、私の魔法にどこまで耐えられるか……」

女の子はくっくっくと笑いながら、シャイニングケーンの先端を私に向けてきた。

「……何をぼーっと突っ立ってるの?あなたも早くシャイニングケーンを私に向けなさい」

「へ?」

「あなたの魔法と私の魔法をぶつけ合うの。もし私の魔法に耐えられるなら、あなたの魔法は大したものよ。

さあ早く、魔法陣を描く準備をしなさい」

冷たい金属の王冠が私を睨み付けている。

「……分かった」

女の子の余裕っぷりを見ると、かなり魔法を使い慣れてるみたいだ。まだ1回しか使ったことない私とは大違いだよね。きっと何回も何回も使ってきたんだ。

だからって逃げるわけにはいかない。今こうしてる間にも、どこかでくーちゃんが戦ってるかもしれない。

「いくよ!」


私はシャイニングケーンをしっかりと両手で持ち、力強く大きな円を描いた。

その中に、六芒星。その真ん中に、ハートと十字架。

完成した魔法陣は、私の目の前で桃色に発光しながら浮かんでいる。その先には、紫色に輝く同じ柄の魔法陣。

「はっ!!」

私はシャイニングケーンで、魔法陣を思いっ切り突き飛ばした。ぐいっと引っ張られるように体が反り返る。

私の描いた魔法陣は、発光しながら女の子の魔法陣に突き進んでいく。そして、紫色の魔法陣にぶつかった__

その時。

紫色に輝いてた魔法陣が、いきなり真っ黒に変わってしまったんだ。

「え!?」

魔法陣はただの黒い円になった。

「……ふふっ」

女の子がにやりと笑ったと思ったら、目の前が真っ暗になっていた。

 

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