なんてこったい
今俺はSクラスの教室の前に来ている。
なぜZクラスなのにSクラスの教室かというとZクラスは俺だけでクラスが成り立たないからSクラスで一緒に、だそうだ。
ドアを開きSクラスの男子達と教室に入った。
俺の見たことのない生徒がちらほらといる程度でまだほとんど来てないらしい。
教室は意外と普通の大きさだ。だが節々に高級感が溢れている。
黒板を縁取った木なんてそれだけで芸術品として出せるほど精巧に掘られているし、机は落書きするのが恐れ多いくらいだ。
俺は自分の名前が書かれた札が置いてある席に座る。
ここが俺の席か、一番前じゃないか。
居眠り出来ないぞ。
席に座った俺は既に教室にるクラスメイト達に目線を巡らせる。
どうやらまだ、クロエは来ていないようだ。
あいつ俺と同じくらいに食堂出たはずだ。何やっているのだろうか?
隣のクロエ・アークライトと書かれた札が置いてある机を頬杖をつきながら見て1人ゴチっていると背中をチョンチョンと突かれる。
なんだ? 後に誰かいた記憶はないんだけど‥‥。
そう思って振り向くと、髪が黄色い男の子がいた。
こいつ見たことないな。 枕投げ大会にいなかった男子生徒か?
まあ、ジルコも参加してなかったし何か用事か、面倒くさかったのだろう。
俺が考え込んでいると髪が黄色い男の子が口を開いた。
「おはよう! 俺はチェスター・モーウェン。 よろしくな! 」
「おはよう、チェスター。知ってると思うけど僕の名前はルディア・ゾディック。よろしく。」
「なあなあ、ルディアに聞きたいんだけさ。 生徒会に入るって本当か? あいつらが言ってたんだけど。」
あいつらで俺と一緒に入ってきた男子達を指差す。
食堂でのことか。
「うん、そうだよ。 なんでも入試主席は生徒会に入るんだって。 クロエから聞いただけだけど。」
「成る程、ふむふむ。 では本題、ルディアは剣聖と仲がいいみたいだけど、どんな関係なんですか!? 」
どうやら生徒会のことはついでだったらしい。
目をキラキラと光らせグイグイと聞いてくる。
「クロエとは親しい仲かな? 」
俺は無難に流すことを選択する。
だがそれでは納得できないようで‥‥。
「え〜え〜 つ〜ま〜ん〜な〜い〜 グヘ!? 」
体を左右によじり駄々を込め始めたところで何者かに頭を叩かれた。
クロエだ。
教室のドアが乱雑に開けられているところを見るに慌ててきたのだろう。
「あ、あんた何、変なこと聞いてるのよ! 」
「痛いな〜。だって轟魔が剣聖はあいつに出会ってメスになったて言ってたし、気になるじゃん。」
頭を痛そうにさすりながらそんなことを言うチェスター。
それを聞いたクロエは顔を赤くする。
「な、な、ルディこれは違くないけど違くて。 え〜と‥‥」
しばらく口を開けたり閉めたりを繰り返してからチェスターに掴みかかった。
どうやら言葉が見つからなかったようだ。
「あなた、その話何処で聞いたの? 今からあいつとあいつから聞いた人を殺りに行くわ。 」
「え〜と、いろんな所で言ってたよ? 寮でも食堂でも‥‥。」
‥‥おいあいつ何やってんだよ。
暇なのか?
枕投げに参加してないと思ったらそんな事やってたのか。
「ふぁぁぁ〜 」
クロエが頭を抱え、これじゃあ相当な数殺らないといけないじゃないと物騒なことを言っていると、その最重要目標が現れた。
「轟魔ァァ!! 死ね! 」
クロエは腰にさしていた剣を抜き放ちジルコに斬りかかる。
だがそれをジルコは余裕を持って避けた。
「何すんだよ剣聖。」
「何するのかですって!? それはこちらのセリフよ! 」
「ああ、メスになったって言ってることか。 」
なんの気負いもせずに鼻くそほじりながら言う。
なんかあの顔腹立つな。
「そうよ! 」
「本当のことじゃないか。 違うって言うなら聖魔とキスしてみろよ。 違ったらなんでもないし、本当なら顔が赤くなる。 簡単だろ? 」
なんてこと言うんだ。
この年頃の思考回路はお兄さんにはわからなよ。何処をどう回ったらそうなるんだ。
流石にクロエもキスしないだろう。
「や、やってやるわよ。 な、なんでも無いんだから。 」
やるのかよ!?
正気か!? クロエと顔を見てみるが目が回っている。
パニックを起こしているらしい。
俺もパニックになりそうだ。
何でこうなった!?
クロエは勢いよくこちらに両手を広げ抱きついてくる。
「ちょっ!? 待って! んむ! 」
「「「キャーーー!! 」」」
抵抗を試みたが無駄だったようだ。
キスされてしまった。
クロエは顔が真っ赤だが必死に唇を押し付けてくる。
や、柔らかい。
待て待て、オレハロリコンジャナイゾ!
俺が心の中で悪魔とせめぎ合っているとジルコが目に入る。
ジルコは口をへの字に曲げ不機嫌そうだ。
俺はそれを見て確信した。
なるほど、あいつクロエが好きなんだな。子供特有の好きな子に嫌がらせしちゃうやつだ。
本人が自覚しているかどうかは分からないが恐らくそうだろう。
しかし、正気をなくしているとはいえキスまでするとは、クロエの事はこの世界に則って真剣に考えないとな。
俺がクロエに視線を戻すと目が合い、唇が離れた。
「あ、あ、私ルディの事が好きみたい‥‥。」
赤くなった顔をペタペタと触り可愛いことを言うクロエ。
俺も顔が赤くなるのが分かる。
「ク、クロエ‥‥。」
にわかに教室がピンク色に包まれ始めた所でガラガラと先生が入ってきた。
「おい、お前ら席につけ〜。ホームルーム始めるぞ。 」
それに各自、自分の席に着く。
クロエは俺から退き、隣の席に顔を赤くさせたまま俯いて座った。
クラスはざわざわと俺とクロエの話をしている。
はぁ〜なんて状況作ってくれたんだよジルコ、恨むからな。
俺は窓から外を見てそう思うのだった。
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