チョロいぜ
「へ〜、瞬突って初歩的な技なのにここまで威力が出るんだ〜。使えるね。 」
破壊の跡を見たルディはただその感想を抱いただけだった。
敵が死んだ事を確認したルディは魔剣召喚と観測眼を残し全てのスキルを解く。
馬車の人たちが味方とは限らないからな。
さてどこにいるかな? と周りを見渡してみると少し離れたところに馬車を止め、こちらを呆然としながら見上げていた。
俺はそこに目掛けゆっくりと降り立ち話しかけた。
「大丈夫ですか? 」
「あ、ああ何とか、ね。」
俺に話しかけられ再起動した男の人は言葉どうり何とかといった感じで答えた。
「そうですか良かった。」
そう言って人に安心を与えるだろう笑みを浮かべた。
我ながら俺の笑顔は武器だと自画自賛していると突然俺と同い年くらいの女の子が勢いよく俺と男の人の間に割り込んできた。
「お父さん離れて!この子の持っている魔剣あのレーヴァテインだよ! お父さんもわかるでしょ! 」
こちらに手を向け敵意むき出しにしてくる。
こいつ助けてやったのに何だ、その態度はお礼のひとつも言えないのか。
躾が必要なようだな。
「へー、君お礼のひとつも言えないのか。 それにその敵意。 ふざけているのかな? 」
俺は俺を中心として5倍程の重力を掛ける。
ズン!
「く! や、やっぱりこれが本性なんだよ! 」
両手を両足を地面につきながらもふざけた事を抜かす女の子。
「フフフ 面白いジョークを言うね。 先に敵意を向けてきたというのに。無くなるはずだったその命、君たち親子共々僕が奪ったあげようか? 」
かなり腹が立ったので少し殺意を込め視線を巡らせる。
男の人は顔面蒼白にさせぷるぷると震え、女の子は涙目になりながらも俺に反抗的な目を向けてくる。
つくづく腹が立つ子だ。ただ謝るだけでいいというのに。
そんなことも習わなかったのかと俺の怒りは親に向いた。
「ねえお父さん、貴方どれだけこの子を甘やかしてたんですか? 人に謝ることもすら出来ないなんて。 殺りますよ? 」
目を細めさらに殺気を込める。
お父さんはさらに顔を青くさせるが口元を震わせながらも口を開いた。
「エルザは小さい頃から他の子と比べて力があったんだ。 それで何でも自分が正しいと思っている節がある。 それを直すことができなかった私が全て悪い! だからここは私に免じて許してくれないか? 頼む! 」
地面に全身縫い付けられながらも懸命に謝ってきた。
何だやれば出来るじゃないか。
まあ女の子が最後まで謝らなかったのがダメだったがここは父親の男気に負けて及第点だろう。
俺は親子にかけていた重力を解く。
しかし事は丸く収まらないようだ。女の子が魔法を唱えている未来を観測眼が捉えた。
ちょっと怖い思いをさせてやろう。
女の子に高速で迫り喉に魔剣を突きつけた。
「エルザちゃん、だっけ? 君いい加減にしたほうがいいよ。今回はお父さんに免じて許したあげるけど次はないからね。それと上には上がいることも覚えといて。それだけ。」
そう言って喉から魔剣を離した。
エルザちゃんは俺が魔剣を離したと同時にへたり込んでしまう。
すると目をウルウルと潤ませ始めた。
「う、」
「う?」
やばいなんか嫌な予感がする。
(あ〜あ、やちゃった〜。)
何を!? いったい何を俺はやったんだレヴィ!
「うわああああああん!! 」
エルザちゃんは目から涙を溢れさせ泣き出してしまった。
う、嘘!? 泣く!? 何故泣く!?
俺何した!
(そりゃあ、あそこまでやれば泣くわよ。 あ〜あ小さい子泣かした。 言っちゃ〜お、言っちゃお、せーんせいに言っちゃお。)
ノリノリで楽しそうにレヴィが言ってくる。
おい! レヴィ! そのネタどこで仕入れた!
って、それどころじゃないこのままだと俺が泣かしたみたいになってしまう!
(実際にそうじゃない。 何だっけ? あ! そうそう「今回はお父さんに免じて許したあげるけど次はないからね。それと上には上がいることも覚えといて。それだけ。」かっこいいセリフね。 子供に言ってなかったらだけど! アハハハハハ!! )
イヤアアア!!
俺はただ生意気な子供を躾けしたかっただけなんだー!
よし! うだうだ悩んでても仕方ない。
慰めよう。泣かせた俺がやって効果あるかどうかわからないがやっておくことに越したことはない。
「エルザちゃんごめんね? ただ僕はエルザちゃんのためを思って心が張り裂ける気持ちで嫌々言ったんだよ? でも言い過ぎたね。 ごめんね。」
「ひっぐ、エ、ルザだって頑張ってたもん。 お、とうさん守ろうとしただけだもん。」
声を詰まらせながらもエルザちゃんはそう言ってくる。
「そうだよね、エルザちゃんはお父さんを守ろうとしただけだよね。 一生懸命だったんだよね。僕もそれをわかっているよ。 でも助けてくれた人に敵意を向けちゃダメだよ? 僕は可愛くて素敵なエルザちゃんがそんな些細なことでその魅力を落としてほしくなかったんだ。分かってくれるかな?」
「う、うん。エルザわかった。」
顔を赤くしながらも頷くエルザちゃん。
もう泣き止んだようだ。
「いい子だよ、エルザちゃん。 そんなエルザちゃんは素敵だね。」
光のエフェクトが見えるほどの最高級の笑顔をこれ又俺の最高級フェイスでそう言って抱きしめた。
エルザちゃんは俺に抱きしめられるがままだ。
ちょろい。ちょろすぎるぞエルザちゃん。
(あなたサイテーね。 )
サイテー、サイテーとレヴィが連呼しているが知ったことではない。
俺はエルザちゃんを抱きしめながらも上手くいったとほくそ笑むのだった。
因みにエルザちゃんのお父さんは終始ポカーンと間抜けに口を開いてその光景を唖然と見つめていたのだった。
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「へ〜、エルザちゃんも王立リーデンブルグ学園に行くんですか。」
「も、という事は君もかい? すごい偶然だね。 でもあの力なら当然かな? アースドラゴンを一撃だもんね。 世界は広いもんだ。 」
「いえいえ、僕などまだまだですよ。 上には上がいます。 」
(よくもまあ思ってないことを、いけしゃあしゃあと。)
黙れ、レヴィ。これは思ってなくても言わなきゃならないんだ。
俺の好感度のために。
(はあ〜もう勝手にやって )
「しっかりしてる子だよ本当。 エルザと同い年とは思えないくらいだ。 ほらエルザ、もうルディくんから離れなさい。 ルディくんが帰れないでしょう。 」
そうさっきから馬車にも戻りもせず喋っているのはエルザちゃんが引っ付いて離れないためだ。
俺が泣かせたのにもかかわらず慰めたことにより好感度がかなりアップしたようだ。
これがギャップ萌えか? いや、下げて上げるという奴だろうか?
どちらでもいいが、いささか効果がありすぎたようで。
「いや! エルザ、ルディくんといくの! 」
そう言ってさっきから離れない。
まあ馬車の心配はしていない。先ほど観測眼で馬車を対象とした未来を見たところこちらに向かっているようだ。
まあ、あれだけ派手な音鳴らしたら来るか。
ガラガラ
そうこう考えているうちに来たようだ。
「エルザちゃん僕も王立リーデンブルグ学園に行くんだ。だから一緒に行こう。いいかな? 」
俺がそう問いかけるとエルザちゃんは目を輝かせてその煌めく金髪を揺らして頷いた。
「うん! 行く! 」
俺がエルザちゃんに一緒に行く了解を取っていると俺たちがいる所の近くに止まった馬車からヴィオラちゃんが飛び出してきた。
「ル、ディ? その子は誰? 」
飛び出してきた頃は元気いっぱいだったのだが、俺とエルザちゃんを見た途端目の感情が消え失せ、底冷えするほどの空気を醸し出してきた。
あ、やっべ忘れてた。
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