結構美味しい
今、俺はヴィオラちゃんと一緒に家の裏手にある、なだらかな丘の上に来ている。
「ルディ! みてみて! おはなのかんむりだよ! 」
ヴィオラちゃんがニコニコしながら俺にお手製の花の冠を見せてきた。
少し、いやかなり雑だが言わぬが花だろう。
花だけに‥‥。
(‥‥。ッフ)
おいレヴィ! 今鼻で笑っただろ!
言えよ、つまらなかったって言えよ!
自分でも言ってから面白くないなって思ったんだからな!
「綺麗だね。きっとおはなさん達も喜んでいるよ。」
俺が心の中でくだらないことを考えてる事は微塵も感じさせない笑顔でヴィオラちゃんにそう言った。
まあ花に心があったとしても、千切られて絶命してるので喜ぶもクソもないが。
「ほんと!? じゃあルディにこれあげる! 」
俺の言葉を聞いたヴィオラちゃんが目をキラキラさせながら、花の冠を被せてきた。
「宝物にしてね? 」
「うん、大切にするよ。ありがとうヴィオラちゃん。」
お礼として頭を撫でてあげる。
しばらく嬉しそうに撫でられていたヴィオラちゃんが突然顔を上げた。
「エヘヘ〜 。 あのねルディ、私ね、将来ルディのお嫁さんになるの! 」
「そうだね、大人になったらお願いしようかな。」
ヴィオラちゃんが俺のお嫁さんになると言っているが、これは恐らく近所のお姉さんとかに言う、僕、お姉さんと結婚する!という類と一緒だろう。
ここは無難に流すのが、大人の対応だ。
大きくなったら忘れているか、黒歴史となるだろう。
「じゃあ僕も、ヴィオラちゃんにこれをあげるよ。 」
そう言って俺はヴィオラちゃんが花の冠を作っていた時に見つけたものを渡す。
「わ〜! 四つ葉のクローバーだ〜! ありがとー、宝物にするね! 」
俺からもらったクローバーを胸に抱き、パッと花が咲きほころぶような笑顔を向けてくる。
(完全に落ちたわね。)
レヴィが不吉なことを言ったが、無視だ。
「ヴィオラちゃん、そろそろ帰ろっか。」
立ち上がりお尻を叩きながらそう言う。
「うん! ルディ、おててつなご! 」
手を出して手を繋ご、とおねだりして来る。 父親になった気分だ。
「いいよ。じゃあ行こう。」
そして俺はヴィオラちゃんと手を繋ぎながらヴィオラちゃんをうちまで送り届けたのだった。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
ヴィオラちゃんをうちまで送り届けた俺は、空を浮遊している時に見つけた俺の家がある場所から約10キロほど離れた場所にあった森に向かって飛んでいる。
魔物狩りだ。
ガンガン殺してlv爆上げといこうじゃないか。
俺は、これからもっと強くなれると思うと口元に浮かぶ笑みを隠せない。
(あなた、絶対その顔ヴィオラちゃんの前でしないでよ。)
レヴィが真剣な声色で言ってくる。
愚問だ。
「するわけないだろ、怖がらせたくないからな。」
(絶対だからね! いつもの優しいお兄さんの顔を貫き通しなさいよ! )
「はいはい。おっ、着いたぞ。 やるか、レヴィ。」
レヴィと話しているうちに森の上空についた。
遠目からでは分からなかったがかなり大きい森だ。
これは生息している魔物、魔獣にも期待できるな。
(本当に分かったのかしら。 まあ、いいわ。 始めましょ。)
「行くぞ、レヴィ! 【顕現せよ我が力、世界を恐怖のどん底に叩き込め、魔剣レーヴァテイン】! 」
俺が魔剣召喚の言葉を唱えると胸に銀色の魔法陣が浮かびあがり、魔剣の柄が出てくる。
それを俺は引き抜いた。
相変わらず美しい刀身だ。惚れ惚れする。
(そりゃあ、どうも。)
照れくさそうにレヴィが言ってくる。
「さあ、片っ端から皆殺しだ! 」
そう大声で叫び、魔剣を振り下ろす。
すると俺を中心として直径100メートル内にあったありとあらゆるものが、ドゴン!と音を立て押し潰された。
所々に見える赤い染みは動物、もしくは魔物、魔獣の成れの果てだろう。
「やっぱりレヴィを召喚するのと、しないとでは制御のしやすさが段違いだな。」
いつもより倍ほど力を集中できた。
(そりゃあそうよ、私は能力の制御補助でもあるんだから。)
「ふーん、ん? うお! 」
レヴィのの威力に感心していると突然体に何かが流れ込んできた。
しかもそれは甘み、辛み、苦み、えぐみetcを伴っている。
「レヴィ、これ何かわかるか? 」
(魂喰っていうスキルじゃない? 魂を糧とするってやつ。)
「ああ、あの物騒な名前のスキルか。 魂って結構美味しいのな。」
(それより、じゃんじゃん行くわよ。 次は剣術の訓練をしながらにしましょう。降りるわよ。)
「俺、ズブの素人だから教えてくれよ? 」
そう言いながら、更地になった森に降り立つ。
すると遠くからこちらに向かってドシン、ドシンと腹に響くような音を響かせて何かが迫ってくる。
音のする方に目を向けると、その音を立てていたやつが木を押し倒しながら姿を現す。
そいつは、全長6メートルほどの全身筋肉の鎧を纏った一つ目の鬼だった。
「おい、なんかあいつ怒ってるぞ。」
そう、その一つ目の鬼は額に血管を受けべ、顔を真っ赤にしている。
怒ってます! と体で体現しているかのようだ。
(あっちゃー、ほら右見てみて。)
そうレヴィに言われ右を見てみる。
するとそこには一つ目の鬼を小さくした感じの奴が体をグチャグチャにして血塗れで死んでいた。
子供だろうか?
あ‥‥。殺しちゃった感じ?
(サイクロプスは魔物の中で中の上くらいに強いわ。 今回は能力を使いましょう。 今のあなたの純粋な剣術では5秒と持たない。)
「まあそうだよな。 でも、能力を使えるなら別だ。死ね。」
サイクロプスに手をかざし能力を発動する。
ゴゴゴゴゴ!!
サイクロプス周りの地面が凹むほど重力を高めるが膝をつくだけで大したダメージは無さそうだ。
小手調のつもりでかなり弱くしたとはいえ、耐えるとはなかなか丈夫なようだ。
ここまで丈夫だと色々な実験ができそうだなと思い、すぐ殺そうという考えを変える。
「へー、なかなか丈夫じゃないか。 ご褒美に俺の実験に付き合わせてあげるよ。」
サイクロプスにかけていた重力をとき、新たな技を発動する。
すると、サイクロプスの左足が、グチャグチャと音を立てまるでトマトを握りつぶしたように潰れた。
この技は、別々の方向に重力をかけて、敵をバラバラにする技だ。
結構強めにやったので、壊れてしまったようだ。
「あちゃー、壊しちゃったよ。次から大切に使わないと。」
顔に手を当て、空を仰ぐ。
それを隙と見たのかサイクロプスが右足を踏ん張り殴りかかってきた。
俺はというと予想通りの行動に思わず口元に笑みを浮かべてしまう。
まあ、もう手遅れだ。
サイクロプスの拳が俺まであと1メートルというところで反対方向にねじ曲がり千切れた。
「グアアアアア!! 」
俺の周囲1メートルに俺から見て外の方向に重力を発動したのだ。
バリアに使えるかな?と思っていたがこの効果から見るに攻撃にも使えそうだ。
サイクロプスはというと無様に腕を押さえ転げ回っている。
もう十分に実験できたのでそろそろ殺そう。
さっきから煩くてたまったもんじゃない。
「もういいよ、サイクロプス。 実験は終わりだ、死ね。」
小手調の時同様腕を、振り下ろす。
しかし、威力は段違いだ。
サイクロプスの体を一切の抵抗を許すことなくブチっと潰した。
「ふー、終わったー。 なかなか有意義な時間だったな。」
サイクロプスとの戦闘を終えた俺は額に飛び散った血を腕で拭って、地面に座り一息つくのだった。
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