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日陰にあるコーヒーショップ

十年後


ソラリオン王国の東、ルミナラ川がエルナリス海へと向かう銀のリボンのようにうねる場所に、ルメンホルム村はあった。その土地は川の魔法を帯びた堆積物によって肥沃で、空気はいつも湿った土と、エーテリアの陽光の下で黄金色に輝くスター・メイズ(星のトウモロコシ)の香りがした。この村は王国の胃袋を支える静かに鼓動する心臓だが、その中を流れる血は水ではなく――光だった。


ルメンホルムのどの家にもジーヴァ灯がある。普通のランプではなく、毎年の春分・秋分の日の出から捕らえた最初の純粋な光を封じ込めた水晶で、村の中心にある工房のような建物、彼らが暁のドームと呼ぶ場所で「充填」される。伝説によれば、このドームはソラリオン創設の時代の遺物で、その光の魔法――ルーメン・マギカ――はかつて非常に強力で、その跡が地中に染み込み、村の遺産となったという。


しかし、田を耕し、光を収穫する日々の中でも、一つだけ息遣いの違う建物があった。一軒の喫茶店。


アニュラー・コーヒーハウス。


建物は古いエルダーグローブ材でできており、灰色がかった褐色は夕日の暖かさを閉じ込めているかのようだった。なだらかな屋根の北側には柔らかい緑の苔が生え、谷風に耐えてきた忠実さの証だった。ドアの上には、空の言語を理解する旅人なら誰もが息を呑む意匠が刻まれた看板がかかっていた:輪に囲まれた太陽、金環食の象徴で、色あせた金と漆黒で塗られている。


中では、ある静かな朝、レグタが唸りを上げる鉄製の焙煎機を掃除していた。焙り立てのエーテリアベリー豆の香り――温かいエルダーグローブ材の香りと混ざり――快適さの呪文のように空気を満たしていた。


チリン…


ドアのベルが鳴った。白い顎鬚と賢い目をした老人が店に入ってきた。顔の皺は口にされぬ重荷を映していた。


「おはよう、レグタ。世界はまだ回っているようだな」男は挨拶した。声はかすれているが温かい。村長ロデリック、ルメンホルム村の長であり、ソラリオン王の旧友だった。


「いつも通りですよ、村長さん。天の法は約束を破りませんから」レグタは、目尻だけにわずかに現れる薄い笑みを浮かべて答えた。「いつもの?ルミナラ・ブレンドに、東の森のシナモンを少し?」


ロデリックはうなずき、カウンター近くの窓際の席に座った。ちょうど朝の光が塵舞う黄金の柱を作り出している窓の下だ。今回は、前のテラスは選ばなかった。


店はゆっくりと賑わい始めた。ガラスの触れ合う音、収穫の話、小さな笑い声が部屋を満たす。しかし、レグタとロデリックの間には、静寂の泡が生まれていた。


「伝えたいことがある」ロデリックが突然言った。声は低く、喧騒にかき消されそうだった。


コーヒーサーバーを整えていたレグタの指が一瞬止まった。彼は作業を続けたが、リズムは遅くなった。木製のパーオーバーに詰めたコーヒーの粉に熱湯を注ぎ、忍耐そのもののように濃い黒い液体が滴り落ちるのを見つめた。


「当ててみようか」レグタは呟いた。見もせずに。「ソラリオンからの問題?」


ロデリックは深く息を吸った。彼の視線は虚ろで、木の壁を通り抜けて、遥か彼方の観測所の塔を見ているかのようだった。「問題以上だ、レグタ。これは埋葬だ。一つの王朝の埋葬だ」声は震えた。恐怖からではなく、抑え込まれた怒りのためだ。「あの人たちが…入れ替わっている。王族全体が。今、バルコニーで民に微笑んでいるのは、異質な意思で動かされる操り人形だ。彼らの声は彼らの声ではない。彼ら目の中の光…あれはランプの反射だ。魂の炎ではない」


二人の間の空気が冷たくなった。レグタはロデリックの前にセレスチャル・ブレンドのサーバーを置いた。湯気が舞い、消えていく渦を描いた。


「村長として、あなたの情報網は遠くまで及んでいるようだ」レグタは静かに言った。


「情報網?違う」ロデリックは遮り、サーバーをぎゅっと握った。年老いた手が少し震えていた。「私はあのアリオン王の古い友人だ。だから、今私たちが見ている王が本物ではないと分かるのだ」彼はコーヒーを一口飲んだ。その苦味が心の苦さを洗い流せるとでもいうように。


レグタはそっと息を吐いた。普段は穏やかな彼の目が、一瞬、月に照らされた鋼のような鋭い閃きを放った。「この知らせは、誰の口から風に乗って来た?商人か?放浪者か?」


「ここを通り過ぎる者たちだ、レグタ。傷ついた冒険者、怯えた旅人、それに…宮殿からの逃亡者さ。彼らは大理石の廊下を這う闇について、観測所の地下室で行われる、光が星に由来しない儀式について囁いている。


全ては断片に過ぎないが、組み合わせれば…」ロデリックは文を終えなかった。「君はどう思う?黒幕は誰だ?南のコルヴァンシウム帝国か?それとも…もっと古い何かか?」


レグタは立ち上がり、布巾を取った。「この世界は、狭い偏見には広すぎるよ、村長さん。アストララリアには多くの影がある。そして、それら全てが光の欠如から来るわけではない」彼は顔を背け、客が立ち去ったばかりのテーブルの掃除を始めた。動きは律儀で、まるでコーヒーの染みだけでなく、彼らの会話の跡も拭い去っているようだった。「私は静かな生活を選んだ。コーヒーを淹れ、話を聞く生活だ。亡霊を追いかけるのではない」


ロデリックは長い間彼を見つめ、それから苦い笑みを浮かべた。「君の言う通りだ。この老人を許してくれ。この重荷を一人で背負うには重すぎると思っただけだ」彼はコーヒーを飲み干したが、苦味はまだ残っていた。


チリン…


ドアのベルが再び鳴り、慣れ親しんだ朝の儀式を遮った。


「いらっしゃいませ――」


レグタの挨拶は空中で途切れた。


ドアの敷居に、背後からの朝の光に照らされて、よろめく影が立っていた。一人の少女。ソラリオンの金のように輝くはずの金髪は、今は乱れ、くすみ、枯れ葉や旅の塵にまみれていた。ムーンウィーブ(最高位の貴族しか持たないエルフ織りの布)でできたドレスは裂け、ぼろぼろで、泥と…魔法の煤のような黒い何かに塗れていた。


彼女の息は荒く、肺は壊れた鞴のようにヒューヒューと音を立てている。彼女はドア枠にもたれ、体を支える足は震えていた。片手は腹を押さえ、もう一方の手には何かを固く握りしめている――黒い革装丁の小さな本だ。


店の中の全ての音が一瞬にして消えた。ガラスの音、会話、暖炉の火の音さえも、突然訪れた静寂に飲み込まれた。全ての目が彼女に注がれた。


彼女は顔を上げた。乱れた髪の向こうに、ルーメン・ソラリオンの青い瞳――有名なエーテリアの空の色――が見えたが、今は深い疲労と原始的な恐怖でいっぱいだった。


「た…すけて…」声は割れ、かすれ、言葉というより呻きに近かった。

そして、彼女の力は尽きた。


彼女の体が木の床に「ドスン!」という音を立てて倒れた。その音が静まり返った店に響いた。握りしめていた本が手から離れ、数掌分滑り、表紙を開いた。そこには、色あせた銀インクで書かれたタイトルが読めた:「九つの災厄」。


一瞬凍りついた店は、今や騒然と沸き立った。


「あの子は誰だ?!」


「なんてことだ、腕に血がついている!」


「早く、助けてあげて!」


「まだ触るな、もしかしたら呪いを運んでいるかも!」


レグタとロデリックは他の者が我に返る前に動いた。素早い足取りで、混乱する人々の輪をかき分けた。

ロデリックは少女の傍らにひざまずいた。年老いた手で優しく少女の髪を顔からどけた。老人は凍りついた。


「ありえない…」彼は呟き、息をのんだ。彼の目は少女のドレスの襟から覗く、細い銀の鎖のネックレスに釘付けになった。ペンダントは光る冠をかぶった太陽の形――ソラリオン王国の紋章だ。


「天の星々よ…」ロデリックは呟き、声は信じられないという思いで震えていた。「これは…リアナ王女だ」


「リアナ王女?!」客の一人が叫び、二度目の沈黙を破った。騒ぎはもはや止められなかった。何年も行方不明だった王女が、どうして突然彼らの村に、こんな状態で現れるというのか?


「でも村長さん、もしかしたら偽物かも!」若い男が異議を唱えた。


「その目を見よ!」ロデリックはきっぱりと言い切った。「あのルーメン・アジュールの色は偽造できない!そしてこのネックレスは…」彼は注意深くペンダントを掲げた。「これはサンファイア・シルバーだ。王族の核となる家族だけが持つものだ。私は知っている。アリオンが…王が、彼女を幼い頃抱いていた時に、触れたことがある」


その間、レグタはその議論に耳を貸さなかった。彼の目は床に転がっている本に釘付けだった。彼はそれを拾い上げた。革の表紙は冷たく古びた感触だった。彼がそれをめくると、最初のページに、優雅な筆記体で書かれた、色あせた献辞があった.


「疑う者へ、神話は思い出されるのを待つ歴史であるということを。」

著者の名はなかった。


レグタの心臓が一度、強く鼓動した。パニックからではなく、認識からだ。この本は単なるおとぎ話ではない。それは痕跡だ。


「レグタ!」ロデリックが叫び、彼の注意をそらした。「何か見つけたのか?」


レグタは素早く本を閉じたが、十分速くはなかった。ロデリックは表紙を見た。「『九つの災厄』?」ロデリックは眉をひそめ、混乱した。「なぜリアナ王女が古いおとぎ話の本を持っている?これが…全てとどう関係するというのだ?」


レグタは立ち上がり、顔は再び完璧な仮面のように――平静で中立的だった。「良い質問です、村長さん。でも今は、彼女には尋問ではなく手当てが必要です」彼はロデリックを見つめ、その視線には沈黙の要請、包み隠された命令があった。「私に彼女を看病させてください。二階の私の部屋の方が安全です」

ロデリックは彼を見つめ、次にリアナの青白い顔を見、そしてまたレグタに目を戻した。彼はレグタの目に何かを見た。それは彼をゆっくりとうなずかせた。世界の秘密を抱える二人の間の信頼だ。


「わかった」ロデリックは言った。声は重かった。「彼女を君に預けよう。私はここの人々を落ち着かせる」


「ありがとう」


力強く、しかし慎重に、レグタは軽いリアナの体を抱き上げた。少女はほとんど重みがなく、まるで翼を折った鳥のようだった。彼は彼女をバーの奥にある狭い木の階段へと連れて行き、まだ騒然としている人々の視界から消えた。


二階のレグタの部屋は質素だが整っていた。木のベッド、メモや地図でいっぱいの書き物机、薬草学や天文学に関する奇妙な巻物が並ぶ本棚。レグタはリアナをマットレスに寝かせ、それから温かい水と清潔な布を取ってきた。


彼は、長旅の汚れや跡をリアナの顔や手から、傷の手当てに慣れた者のような熟練した動きで拭った。布がリアナの腕の傷――暗黒のエネルギーの一撃のような跡の傷――に触れた時、レグタは一瞬止まった。目を細めた。


「君に何が起こったというのだ、リアナ?」彼は静かな空気に向かって呟いた。


リアナが清潔になり、温かい毛布に包まれた後、レグタは立った。彼は机に置いた「九つの災厄」の本を手に取った。再び開き、異なる元素の力を持つ九つのぼんやりとした人物の挿絵で満ちたページをめくった。彼の手がある一ページで止まった:手のひらに星の光を宿した人物が、大きな戦争の廃墟の上に立っている挿絵だ。


意味深い小さな笑みがついにレグタの唇に広がり、これまで友好的な店主の微笑みの後ろに隠されていた彼の一面をちらりと覗かせた。


「さて、面白くなりそうだな」彼はその本に小声で言った。声は果たされるべき運命の響きに満ちていた。彼はまだ深く眠っているリアナの方に振り返った。おそらく何年ぶりかに、彼女の顔は初めて安らかだった。


部屋の小さな窓から、彼は青いエーテリアの空と、はるか南の方を見渡せた。


「まずは休むんだ、リアナ」レグタは地平線を見つめながら呟いた。「なぜなら、君が目を覚ました時、おとぎ話は終わるからだ。そして私たちの――真の――冒険が始まる。そしてもちろん、君はすでに彼らの一人に出会っている」


下の喫茶店では、ロデリックは村民を落ち着かせることに成功していた。しかし彼の心に、新たな不安が生まれていた。彼は二階へ続く階段を見つめ、それから西の方、今や操り人形に率いられている王国の方へと目を向けた。


アリオン…エリザベス… 村長の心は、今どうなっているのか分からない二人の旧友と、彼らの末娘がこの村に辿り着いたことを思い返していた。


レグタは窓へと歩み寄り、外の景色、より正確には、工房のような古い建物、暁のドームを見た。

「まずはあそこに行く必要がありそうだな…はあ~」レグタはまだ意識のないリアナの顔を見つめた。「久しぶりだな、リアナ」。



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