9.限界OLユイと、カカポの出どころ
もう1話ありますよ
──モテ加護から7日目。
「もう無理です。限界です。耐久加護、健康に悪いです」
昼の休憩室で私は机に突っ伏していた。
「ユイさん、今日も目立ってますね〜!」
「さすがユイちゃん、いい匂いする〜」
「つーか俺、ガチでユイさん好きかもしれん(3人目)」
(もう、誰も本当の私を見ていない)
午後。
新海さんが紙コップを差し出してきた。
「……ブラック、薄めです。少しリラックスしてください」
(この人だけ、なんか正気保ってる気がする)
だけど、
「ユイちゃん、あんた今『モテの引力圏』に入ってるから、全部無意味よ」
茜さんが言うと説得力が違う。何目線それ。
そして、来るべきものが来た。
アパートのエントランスで、いつもの掲示板に見慣れぬ張り紙があった。
『ぐぽ注意! 管理人室まで出頭せよ。対象者:部屋203号のユイさん(加護関連)』
「……ついに来たな」
お騒がせ加護カカポ、管理人さんにまでバレたか……しょうがない。管理人室に寄る。
ガチャッ
「……お呼びですか」
「来たか、203号」
管理人さんはきりりと美しい瞳から、無言の圧を飛ばしてくる。
「モテる加護。人気者体質。勝手に配布されたビーズ。
あまつさえ、カカポどもの屋台出店、第三段階まで進行。どうしようかね?」
「え、い、いや、それは私も被害者というか……」
「ほう?」
管理人さん、書類を差し出す。
「これ、『試験加護実装対象:203号居住者』」
「……試験!? 何の!?」
弟、後日談LINE
弟『あ、言ってなかったっけ。カカポたち、管理人さんから派遣されてる加護テストユニットで』
ユイ『言ってない!!!!』
弟『ぐぽー(契約書もある)って言ってたよ』
ユイ『管理人さん、あんだけぬいぐるみとか置物とか言ってたくせに!!!』
弟『ユイが拾ってきたユズの魔石な、あれが加護ビーズの材料だと』
ユイ『スタート地点から関わっとんかい!!』
管理人さんは言った。
「今回の騒動で、想定以上に影響が出ました。これは一種のバグね」
「バグ!?」
「このままでは、人気者加護の影響で“ユイ信者”が生成される。
職場の秩序も乱れ、加護信用も損なわれる。つまり、テストは強制終了、回収します」
「回収……って」
そのときだった。カカポたちが、部屋の隅からひょっこり現れた。
「ぐぽ……(ユイ……)」
「ぐぽぐぽ(ありがとう……実験体……)」
「ぐぽー!!(おつかれ!!)」←ムダに元気
「お前ら、置き土産みたいな顔すんなぁああああ!!」
「泣くんじゃないよ。あとまだ副作用の観察期間が残ってる」
「まだ副作用あんの!?!?」
こうして、ぐぽビーズは撤去。
職場の人々はいつしか落ち着き、私は元の「ちょっと真面目なOL」に戻った。
でも。
「ユイさん、最近また静かですね」
新海さんは、やっぱりイケボだった。
「……うん。ちょっと“試供品の人気”だっただけだから」
「……面白いですね」
(なんか伝わってるようで伝わってない)
茜さん、ラストに一言
「加護が消えても、モテの残り香は消えないものなのね」
「香水みたいに言わないで」
【今日のワンポイント加護カカポ(自主回収)】
•人気者加護(誤爆仕様)
•自撮りが勝手に盛れる
•雑誌に特集される夢を見る
「最後のやつ、夢オチかよ!!!!」