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9.犯人もどうやら事故に合っていたらしい。

「昨日ツィブルカから移動商隊が来たんだが、街道から馬車が転落していると知らせが入って今朝、朝一番に依頼を出して調べてきてもらったんだ。御者なのか知らないが男が一人、馬車から投げ出されたせいか分からないが死んでいたのだが、その馬車が怪しくてな」


「怪しい?」


「馬車に紋はなく、荷馬車でもなく、勿論荷どころか何も積まれていなかった。ただ男と馬と馬車だけが転がっていてどこから来たのかいつ転落したのか何も分からない状態だった。男の顔も判別がつかない位でな」


 うえ……と私まで難しい顔になってしまう。


「まずはお嬢さんの話を詳しく聞かせてくれるい?」


 ちっさい子供だと思ってだろう、ギルド長がなるべく怖がらないようにと気遣ってくれているのが分かる。


 私はツィブルカの領地で攫われた事。目隠し、口を塞がれどこに向かったのか分からなかったが馬車に乗せられ運ばれていた事は分かっていた事。馬車から降ろされてさらに抱えられてどこかに連れていかれ、荷袋から出され口を塞がれてたのを取られた時はどこか全く知らない山奥だった事。

 使用人の男が誰かの依頼で私を害そうとして金を貰って自分は裕福に暮らすなんて言って私を笑いながら崖下に突き落とした事を説明した。


「……男の恰好を覚えているかい?」

「んー……白っぽいシャツ、黒のズボン、髪は緑色でぼさぼさ、目の色は……覚えてないです。背は低め、体型は細めで年はどれ位かな……二〇歳から三〇歳位? あ、名前も知りません」


 私を見て嗤った顔を思い出し、ぞわっと背筋に寒気が走って体を震わせるとエルが気づいたのか大丈夫だと言わんばかりに背中を優しくトントンと叩いてくれた。

 ギルド長は職員のお姉さんが持ってきた報告書なのだろう、紙を見ながら頷いている。


「……どうやらお嬢さんを襲ったヤツだろうな」


 えー……私を殺そうとして自分も死んじゃったって事? ご愁傷様だね。

 人の死に関わりたくはないけれど、私を殺そうとした人には同情も何も浮かばない。


「…………だが、男は誰かから金をもらうと言っていたのだろう?」

「あ、……直接の犯人は死んでも私を殺そうとした人は生きてるのか……」


 マジか……安心出来ないって事じゃない。うわー……。


「ディアの捜索依頼とかは出ているか?」


 あ、だよね。父親か領地の館の誰かは私がいなかったら捜してる?


「今の所出ていないな」


 マジかー……殺そうとしたの父親じゃないでしょうね? 動機があるのか知らないけど。

 私が行方不明になってから何日経っているんだろうか? エルが一昨日って言ってたからエルと出会ってから三日だろうけど、その前がどれ位時間かかっていたのかが分からない。

 何日も、ではないだろうけど。


「エル、ツィブルカの領都からここまで何日かかるの?」

「馬車なら丸一日だな」


 という事は、私が館を出て捕まったのは午後だから二日位かかって山の中、って事かな。という事は、最低四日は経ってるって事だろうけど、それで捜索も出されてないんだ……。

 呆れてスンっとしちゃうよね。誰も私の心配なんてしてないって事かしらね? やれやれ。

 リーディアって幸薄い子だね……。自分の事だけど。


「お嬢さん、一応うちの領主様に報告もしなくてはいけないんだが」

「あ、はい。でも私はこのままツィブルカに戻ってもいいですか?」

「そりゃ、ここからイエニーク領都に行くよりもツィブルカの方が近いし、犯人の男もすでに死んでいるようだからギルド長である私からの報告だけでいいとは思うが……」

 

「俺が送っていく」

「エルが? 銀級冒険者のエルがお嬢さんを送っていくならまぁ安心だが……。ブラダ・ツィブルカにこちらまで迎えに……」


「無理でしょうね。未だに捜索依頼も出ていないのに迎えに来てくれるなんてないと思うし、何年も領地に来ていないし会っていないのに来るわけないのでいいです。もし、捜索依頼が万が一、出された時はお手数ですが、すでに戻っている途中だと知らせて下さい」


 どうやって連絡出来るのか知らないけど、何かしら手立てはあるのだろう。エルが確認している位だもんね。


 そう思いつつ私が淡々と告げるとギルド長が視線を泳がせる。どんな噂があるんだか、父親の評価か評判はやはり最低なんだろうね。あとでエルに聞いてみようっと。


「し、しっかりしたお嬢さんだね……」


 ギルド長がじっくりと私を測るような視線を向けてきた。これは私の噂も聞いたことがある感じ? ツィブルカ領の隣みたいだしそうなのかもね。まるで噂と大分違うような? って言わんばかりに首を傾げている。

 すみません。生まれ変わったんですよ? 言いませんけど。


「行くか」


 エルが声をかけてきて立ち上がり、私も頷いて立ち上がったが、すぐにエルが抱き上げる。


「俺はしばらくツィブルカにいる予定だ」

「そ、そうか。わ、わかった」


 ギルド長がやっぱり私とエルを何度も見比べている。うーん……私ってばすでにエルの腕がすっごい安心できる場所になってるんだけど。刷り込みなのかなぁ?

 イケメンでイケボで私好み!

 私も自分から手を伸ばしてエルの首に腕を回してぎゅーっと抱き着く。子供だからこその役得だよね!

 

 

 

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