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8.エルはすごく強かったらしい。

 とにかく見知らぬ人は信用せず自身で気を付けるように、と何故かお小言をもらいながら冒険者ギルドに到着した。


 …………何故保護者でもないエルから言われなくてはならないのか解せぬ。


 それは置いといて! 冒険者ギルドはいかにも! って感じ。

 ごつい木製の大きなドアは開かれていて中が見え、建物は大きくて人の出入りが多い。冒険者達がひっきりなしに出入りしていて、これが異世界! って感じです!

 いいけど、エルと私の事をびっくりしたような顔をして見てくる人が多数いるんですけど、なんなんでしょうね?


「“漆黒”が子供を抱いているぞ」

「信じられない」

「どこの子だ?」


 なんかぼそぼそとあちこちから聞こえてくる。


「漆黒ってなぁに?」

「……勝手にそう呼ばれているだけだ。俺の髪も目も黒いだろう?」

「え? 黒くないでしょ。髪は濃紺だし目は紫紺だよ?」


 ほうほう……いわゆる二つ名ってヤツなのかな? って事はやっぱエルって強い……んだろうね。まだ二〇代前半位の年だろうに、それで冒険者銀級で二つ名まであるんだから。

 エルに聞いたら銀級の上は金級しかないんだって。国で上から数えた方が早い位に強いって事だもんねぇ。すごいな。


「濃紺と紫紺……?」

「うん」


 元日本人の私から見たらエルだって立派にカラフル色だと思うけどね?


「でも、黒に近いだろう?」


 黒に近いからってどうかしたんだろうか? 何が言いたいのか分からなくて私はエルを見ながら首を傾げた。私からしたら黒に近い色の方が違和感がなくて安心できるのだが。髪が緑色とかオレンジ色とかの方が違和感バリバリだよ。

 はぁ、とエルが溜息を吐き出す。


「黒は魔獣の色だろう? 黒に近い色は魔に近いんじゃないかって事だ」

「えー! そんな事ある? エルは何か魔に近いとか感じるとかあるの?」

「いや?」

「なんだ。だったら迷信ってヤツじゃないの? 髪が黒かった人が魔になったって話でもあるの?」

「いや、ない」

「なら何も気にしなきゃいいのにね」


 変なの、と肩を竦ませるとエルの私を抱きしめている手にぐっと力が籠った。エル……気にしてたのかな?


「エルが強いから僻んでるんじゃないの?」


 こそりとエルの耳元に囁くとエルがふっと表情を和らげた。

 

「だって周り見るとエルよりも年上の人多いみたいだし。それで多分銀級ではないでしょう?」

「そうだな」

「やっぱ僻んでるんだよー。若くてかっこよくて銀級で、って嫉妬じゃない?」


 こそこそとエルと話をしているとエルがくしゃりと私の頭を撫でてくれた。すると周りからどわっと騒めきが起きる。

 ……ホント変なの。なんなんだろうね?


 エルに抱かれたままでギルドの中に入っていくとエルは受付のお姉さんにギルド長に話がある、と自分のギルドカードを出した。

 少々お待ちください、と言って受付のお姉さんがいなくなったがすぐに戻ってきてギルド長室にどうぞ、通された。

 ギルド長がいるのはギルド二階の奥の方の部屋らしい。エルは私を抱っこしたまま受付の前を通り過ぎ、階段を上りいくつかの部屋の前を通り過ぎ、一番奥の突き当りの部屋の前で足を止めた。


「入るぞ」


 おお? ノックとかしなくていいのかな? と思ったがエルは部屋の中からの返事も待たずにドアを開けた。


「エル、どうし…………子供が、泣いてない……エルが子供を抱っこだと……?」

「?」


 泣く? なんで? というかギルド長は目を大きく見開き、エルと私の顔を何度も見比べる。そんなに不思議なもの? エルは強面だけど怖くはないけどねぇ?


「この子が一昨日ツィブルカからの街道から外れた山の中の崖下で瀕死の状態でいたのを発見した」


 エルはギルド長室にある椅子に私を座らせながら口を開いた。

 椅子、ソファなんかじゃなくて木のベンチみたいな椅子だよ。固いのよ。ふわふわのソファとかってないのかな? おしりが痛くなりそうだよ。


「ツィブルカの街道から外れた山の中で?」

「そうだ。ディア」


 ん? 何かな? あ、自己紹介と詳細かな?


「リーディア・ブラダエナ・ツィブルカと申します」

「……ツィブルカ!? ブラダエナ……」


 ギルド長は目を大きく見開くとばっとエルに視線を向け、エルはこくりと頷いた。


「そうらしい。そして攫われて殺されかけたと言っている」

「どういう事だ? あ、いや……そうすると……」


 ギルド長がちょっと待ってくれと言って書類がいっぱい山積みになっている執務机の端っこにあったベルをちりんちりんと鳴らした。

 すぐに失礼します、というお姉さんの声が聞こえてドアが開いた。


「今日の朝報告があった、山で発見された馬車の詳細を持ってきてくれ。あと茶を……」

「茶はいらん」


 エルがお茶をすぱっと断る。さっき肉の挟まったトルエフと一緒にお茶も飲んだから確かにいらないね。


「発見された馬車とはどういう事だ?」


 エルが私の隣に腰かけギルド長を睨みつけるように視線を向けていた。

 あー……元々強面なのにそういう顔していると確かに、さらに凶悪に見えるね。私はどうやら元日本人の時は大人になっていたようで精神的に子供ではなさそうだから多分強面でも大丈夫なんだと思う。

 へらへらしている人よりよほど好感度は高いよね!



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