82.変な噂が出てたーーー!
皮がパリッとならなかったり、タネを入れる途中で空気が入った所があったりと、ちょっと問題はあったけど、私が出来る事を終え、ソーセージはヴィートの燻製工房に任せる事にした。ベーコンの事も伝え、それも挑戦してくれるとの事。分からない事や聞きたい事があればいつでも来ていいとデニスが協力を申し出ていた。
いいよねー! 皆で協力して発展していこー!
問題の浄化滅菌箱は危険物なのでエルが燻製工房まで行って設置してくる、とエルは帰るヴィートと一緒に行って今はいません。設置したらすぐ帰ってくる、とは言ってましたが。
夕ご飯が出来るまで時間が空いたのでハヴェルとダナ、ノアとサロンに戻ってきました。今はエルがいないので魔法も出来ないし、何しようかしらね?
「エル、すぐ帰ってくるー?」
「すぐ帰ってくるよー。ノアはおいしかった?」
「おいしかったー! ご飯いっつもおいしいよー。僕幸せー。皆優しいしーディアのおかげー」
可愛いなーと肩に乗っているノアと顔をすりすりしているとハヴェルがガン見していた。
「エルには聞くな、と言われてるんですけど、……その動物ってなんなんですか?」
聞くなって言われているのに聞いちゃうんだ? と笑ってしまう。
「ノアはノアだよー! ねー!」
ノアと頭をこっつんこするとダナがああああ……と声を上げそうになったのか口を手で塞いでいた。ノア可愛いよねー! 私の朝の身支度の時にノアのブラッシングもダナがしてくれるし、ぴっかぴかです。
途中ですれ違う侍女もノアをチラ見してるし。可愛いは正義なのですよ。
「今日のソーセージってどこの料理なんですか?」
「内緒でーす」
ソーセージを作っている間、ずっとハヴェルは言葉を発しないで大人しくしていたけれど、聞きたくていたんだろうね? エルに言われていたから疑問に思っても聞かなかったんだろうし、でも、今私がはぐらかせていても突っ込んでもこないんだよね。
言えない事がいーっぱいなんですよ。ずっと私の為に働いてくれるつもりならば言ってもいいかな、とは思うけど。じゃないと色々融通が利かなくなるもんね。エルに相談してからだけど。いちいち隠したり、説明を考えたりとか絶対無理が出てくるもんね。
「色々聞きたい事があるんですが……」
「差し出口ですが」
ハヴェルが尚も口を開こうとしたらお茶を入れていたダナがお茶を出し終えるとハヴェルを睨むようにしながら笑みを浮かべた。……睨みながら微笑むって器用だね。
「何が知りたいのか存じませんが、それを知ってどうなさるおつもりですか? エル様のご友人で有能な人物だとエル様からご紹介いただきましたが図図しすぎませんか?」
すると護衛に付いていた騎士がすちゃっとハヴェルに向かって剣を抜いた。
ちょっ……ちょっ! ちょっと待てー! なんでそこで剣を抜く!?
「いや、別にどうなさるおつもりは微塵もありませんけどね。随分とリーディア様に忠実な」
「当然です」
騎士とダナが頷く。いや、なんで? まぁ、ダナはなんとなく分かるけど。
「リーディア様はツィブルカを変えるお方だ」
護衛騎士が何か言い出した。
「すでに領都内では噂になっている。ここ領主館内ではそれが当然だと皆が納得しているお方だ。そのお方の害になるようであればエル様のご紹介でも排除は辞さない」
「ちょ! ちょっと! 噂って何よ!?」
「…………聞いていいかな? ここでのエルの立ち位置ってどうなってるわけ?」
「それは私も分からないです……」
ハヴェルの疑問は私の疑問だ。エルの信用度が半端ない。
「エル様はお嬢様が信頼されてらっしゃる方だ」
なんかさー……なんかさー……どうなってるんだろうね? もう私もほんっと分かんないです。
そんなエルの事は置いておいて。
「領都内で噂って何!?」
騎士に剣を引く様に言ってから話を聞くと、私がツィブルカに戻って来た日、暴利を貪る門番を罰し、横暴な冒険者と警備兵を淘汰し、街に出てきたと思ったら平民にも気軽に声をかけ、ぞんざいな言葉にも怒らず、大きな仕事を任せるような黒を従えたツィブルカの救世主だ、と。
…………なんじゃそりゃーーー!
「エルぅーー……」
マジ助けて。やめて。恥ずか死ぬ。
ばたんとテーブルに突っ伏すとダナと騎士達がどうしました!? と慌て始める。
「救世主! 救世主じゃなくて聖女様なのにー」
ノアがきゃっきゃと笑いながら言った。いや、皆には聞こえてないからいいけども。
なんじゃ!? 黒を従えた救世主って!!!? コレ、揃いの軍服作ったらどうなるのよ!? いや、黒は好きだけども! 従えたいわけじゃないわっ! この場合の黒ってエルの事でしょ? 従えてないわ! むしろ守ってもらってるっていうのに!
「…………どうした?」
そこにエルが帰って来た。はっや! え? なんで? 早すぎない? まぁエルだからね。
「エルっ!」
がばっと立ち上がってエルに突進して抱き着いた。
「街の噂がひどい事になってるっ!」
「は? ああ、聞いたのか」
「うえっ! エルはもしかして知ってた!?」
「まぁな。別にいいんじゃないか?」
よしよしと頭を撫でられて慰められたがよくはないと思う! 主に私が恥ずかしすぎる!




