73.エルからの話。後編
エルは話した方がいいと思ったからこうして聞いてきてるんだよね、きっと。
「安心していい。本当に王族の方、陛下は話の分かるお方だ。無理強いもしない」
「…………本当? 王侯貴族って横暴な人ばっかりのイメージだけど」
くっとエルが苦笑を漏らした。そういうのも多いが、と。
「勿論国の為にならない事、国の為になる事が前提ではあるが、ディアに関しては強気でいける。なにしろ記憶持ちで聖女で眷属まで従えているんだ。無理強いして国を出ていかれたらどうする?」
「あ、そっか……」
脅しに使えるんだね! ……いいのか?
「まだ八歳で洗礼式も終えていないしすぐにディアと謁見、などとなるはずもない。俺がいいように言ってくる」
「エルーーー!」
抱き着きたいーーーー! 両手を差し出すが残念、エルは向かい側に座っているので届かない。
「ブラダ・ツィブルカは今泳がされている状態だ」
おおう……そんなとこまで来てたんだね。やっぱり……何してるんだかね?
「言っておくが国の機密事項だ。テオドルとかにも言うなよ?」
「言わないよー」
「近いうち、一、二年……ディアの洗礼式までは……」
エルは口を濁したが、あー……そうなんですね。それまでに捕まっちゃうかどうにかされちゃうって事なんですね。でも泳がされている状態でそんなに期間があるって事はどんな大きな犯罪だよ!? 何してるのさ!?
「まぁ領地のツィブルカは全く関係がなかったってのは分かったからな。リーディアはここを好きにすればいいだろう」
「いいの?」
「陛下にはうまく言っておく。大丈夫だ」
やっぱエル頼りになる! よかった……。というか、陛下に直接話せる位の地位にいるの? え? とエルをじっと見る。
「俺は別に偉くはないぞ? 本当に銀級の冒険者で動いているだけだ」
「そうなの?」
「ああ」
もし偉い地位に就いているならツィブルカにずっといるなんて出来ないよね、と思ったのでちょっとほっとした。
「さて、拡張バッグを作ってもらおうか。売りつけるんだろう?」
「え? あの、いや、それ、誰に売るのかなー?」
にこりとエルが珍しく綺麗な笑顔を見せた。
「陛下に決まっているじゃないか。あと俺の兄にだな。一応多めにとバッグを三個買ってきた。さ、作れ」
「うえええ! マジですか!」
王様に売りつけるのーーー!? ひーーー! 庶民にそれはちょっと! あ、私一応貴族令嬢か! でもー!
「拡張バッグを餌にディアのいいように取引してくる」
「え!? あの……そんなに貴重なの……?」
「そうだ。何しろ俺の使っていたバッグは俺が死にそうになりながら作った位だ」
えええ! 死にそうって! そんな位なの!?
「それを、無限収納とか、時間停止とか、アイテム管理とか、浄化とか自動修復とか、馬鹿みたいな機能をつけた拡張バッグなど存在できるはずがない物がここに二個あるんだ」
「えええええ……そ、そうなの……?」
「これらは値段が付けられない程だぞ?」
そんなのほいほい喜んでつけてる私。やばくない? マジかー……。そりゃエルが呆けるわ。
「なので、値段が付けられる範囲でいい。こんなの作ったら国が破産する」
ぎええええーー! マジ!? マジで本当の話なの!? うそーーん!
聞けば文字数とかでも魔力の食いが違うそうで。……漢字が大活躍って事だったんだね。だからエルは代金をいいって言ったのか……納得したわ。
こんなとんでもない物は渡せない、という事でエル監修の元、エルが使っていた元の拡張バッグ位にする事にしました。
うちの敷地位の大きさ。以上。時間停止も何もついてません。ただ、王様の分には浄化を付けて欲しいと言われた。毒殺とかの危険がある時に使えるからと。
だから! 王侯貴族怖いって!
そしてエルはもう少ししたら一旦王都に行ってくる、と言った。このバッグ持って行かなきゃないもんね。高価なバッグを人の手に任せられないよねー。
それとツィブルカに来る新しい門兵達の人選も確認してくるとか。あとは私の淑女教育の先生も探してくるとか。色々用事があるらしい。
っていうか! それ全部うちの用事だよね! なんか申し訳ない。でもよろしくお願いします。
よろしくお願いしますだけど、エルがちょっとでもいなくなっちゃうのは寂しいな……。なんて思っていたら。
「くれぐれも、くれぐれも、俺がいない間は大人しくしていてくれ! ……無理かもしれないが」
「無理って……」
「毎日のように何かしら問題が起きているのだが?」
「問題というほどの事じゃないと思う……」
「いや、問題だらけだ! 今日だって一日どこにも行かないでいたはずなのに眷属様ってなんだよ」
「それは私の所為じゃないもん! 助けてって声が聞こえたから」
「まぁな……あの状態では」
エルもノアを助けた時の事は分かっているのでそれ以上は言わない。それに黒いというだけでエルはきっとノアの味方になっているんだとも思う。
センもね。庇ってくれてありがとう、なんて言う位なんだもの。
「私が変えて見せる!」
「何を?」
意気込んでみせるとエルは怪訝な顔をする。余計な事はするなよ、と言っている顔だ。余計な事じゃないもーん!




