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7.冒険者ギルドに行くらしい。

 町の通りは石畳で馬車が行き交っており、人もわりと多く、通りには屋台があって軽食を売っているらしい。いいけど、歩いている人達の髪がね! カラフルで! そして冒険者みたいな恰好の人が食べ歩いていたりして、本当にゲームかアニメの中に入っちゃったみたい。

 建物は中世ヨーロッパみたいで可愛らしくて本当に異世界きちゃったんだな……って感じ。

 

 エルの髪が黒色で違和感がなかったんだけど、暗い部屋で見ていたから黒に見えただけで外に出たらエルの髪色は濃紺でした。

 抱き上げられているのでエルの顔が近い。そして視界が高くてちょっと怖い。

 下を見ると怖いのでエルの顔を見ている。

 瞳を覗き込んでみると深い紫色で、どうやら髪だけでなく瞳の色もカラフルらしい。

 …………私の目は何色なんだろうね? なんかリーディアの記憶にはっきりとした自分の瞳の色がないだけど。


「トルエフでもいいか?」

「トルエフ?」


 トルエフってなんですか? と首を傾げる。

 マジで名称に馴染みがなくて困る! そこはなんか似ている日本語に変えてほしい。いや、私日本語話しているつもりだったけど日本語じゃないんだろうか?


「……貴族令嬢は食べた事がないか」


 なるほど、とエルが頷きながらもすたすたと通りを横切り、反対側にあった屋台の一つに向かっていく。


「二つ。茶も入れてくれ」

「はいよ! 銅貨一枚と鉄貨二枚」


 エルが屋台のおじさんに注文すると大きな薄い葉っぱに円形の薄い何かの生地を乗せて、そこに豪快に焼いた肉を乗せるとぱたんと畳んで一つずつ手渡してくれる。

 私は一個受け取り、エルは私を片腕だけで抱き上げていたので空いた手でお金を支払ってから自分の分を受け取っていた。お茶はエルが腰から革袋を渡して入れてもらっていた。


 銅貨一枚って言ってたけどお金ってどうなってるんだろうね? リーディアの記憶にお金の事もないわ……。貴族令嬢だったらほいほい街に出てお買い物とかも行けないかもだからまぁそれはなんとなく分かるけど。

 なんかホント勉強しなきゃない事が山ほどありそうなんですけど。


「えっと、ごちそうさまです」

「……食べられるか? 回復薬で治しているからなるべく血肉になるようなものを食べた方がいいのだが」

「多分? 大丈夫、かな……?」


 お肉の焼ける匂いがおいしそうに思えるから大丈夫な気はする。

 座って食べるか、と近くに置いてある木のベンチに私を座らせエルも隣に座る。

 かぶりつくのかな? 葉っぱは包み紙代わり? エルがどうやって食べるのかを見て葉っぱを避けながらぱくりとかぶりついた。

 

 うわ……生地がぱっさぱさだね! お肉の焼けるおいしい匂いはしてたけど味が野性味すぎる! 塩味のみって感じで日本人の私にはちょっとキツいかも。

 結構な大きさで肉もたっぷり。それはいいんだけど、お腹がいっぱいになったし、味もイマイチだったしで、半分位食べてもう食べられなくなって残りをエルに食べてもらう。


「ツィブルカ領に行くのはいいがその前にディアを攫い、さらに崖下に突き落としたという使用人を犯罪手配しなくてはならない。本当は直接イエニーク領主に訴えられればよいのだが、ここはツィブルカ領のすぐ隣の町で、イエニーク領主のいる街の方が遠いからな」


 そうなんだーとほえええとエルの話を聞いて頷く。


「冒険者ギルドで詳しく説明すればそこから町の警備兵まで連絡は行く……が、本当ならギルドと警備隊と両方に話を通した方がいいんだが」


 ええーめんどくさそう……。


「とりあえず冒険者ギルドに行ってみよう。ディアの捜索依頼の情報もあるかもしれないし」


 警備隊よりかはエルの顔が利くという事でこの町の冒険者ギルドに行く事になった。

 冒険者ギルド! ドキドキするよねぇ~! 小説なんかでよく見るテンプレとか起きるのかな? ああ、いや、エルはもう銀級冒険者なんだからそうはならないか。


 またもエルに抱き上げられて私はおとなしくエルに身を任せる。ちょっと内心照れはあるけれどもエルにしてみたらガキンチョ抱っこしてるだけだもんね。

 

 それにしても、ギルドに行くのはいいけれど気は重い。なにしろ能天気にしてるけど殺されかけたんだから……。とはいっても自分の身の上に起こった事だと分かっていても、どうしてもリーディアの記憶という感じなのだ。

 あの時の恐怖とかもあるはあるんだけど、客観的というか……。

 殺されかけて、父親はネグレクトで、領地は荒れてて、……私はどうなるんだろうか。


「はぁ……」

「どうした? 疲れたのか?」


 ううん、と首を横に振る。


「エル……ありがと」


 今のところ信用できるのはエルしかいない。ぎゅっとエルに短い腕を伸ばして自分からも抱き着く。


「ディア、人をそう簡単に信用するものではない」

「え?」


 耳元に聞こえてきたイケボにぞわりとしそうだ。が、内容が!


「殺されかけたのに危機感が疎かすぎる」

「えー……」

「俺はギルドカードを見せたがもしあれが偽物だったならば? 親切にして人買いに売るつもりだったならば?」

「えー……エルそんな事するつもりだったの?」

「俺はしない! ディアが無防備すぎると言っているだけだ」


 そんな人だったら瀕死のガキンチョなんて高価な薬使ってまで助けないと思うけどなぁ。



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