22.ネックレスをもらいました。
微妙な味の朝ご飯を終えると、エルはさっさと行ってくると冒険者ギルドに行ったので今はいません。
その代わり、私の首には濃い青色の魔石のネックレスがかかってます。
昨日の夜、エルが防御魔法をつけて作ってくれたらしいです。防御のついた外套が着られなくなったのでわざわざ! いつでも身に付けていられるように、と。
二人きりになっちゃダメ、隣に座るのダメって言ってたのにアクセサリーのプレゼントはいいんですかね?
そういえば私の目の色が濃い青色でした。ストレートの銀髪に青色の瞳。ファンタジーだ。
私の目の色に似たわりと大粒の綺麗な濃い青色の魔石でできたネックレス。綺麗な大きい魔石は高価、魔法も金がかかるって言っていたのに……このネックレスいくらするんでしょうね? 鎖は細く繊細な作り。髪に合わせたのか銀色でなんの素材なんでしょうか?
冒険者の級が銀級とか言ってたのでこの世界にも金とか銀とか存在するんでしょうけど、銀ではないような?
……私には分からないけども。
「素敵な首飾りですね」
ダナがエルのくれたネックレスを見てうっとりしている。ちなみにダナの髪色は栗色、目もブラウンだった。派手じゃないので目に優しいです。
「…………いくら位すると思う? 私魔石の値段って分からないのよね」
「どうでしょう? それ位の魔石というだけでも高価なのに魔法陣まで施されているのでは……ちょっと私には見当もつかないです」
見当もつかないほど高価って事なんですか? エル……。どう考えても子供が持つ物ではないって事だよね? 狙われているという危険があるにしても……なんか過保護じゃない? ……ちょっと、いやかなり嬉しいけど。
「エル様は魔法が使えるのですね」
「うん。明かり点けたり、火点けたり、結界張ったりしてた」
「魔力が多いんですね!」
「そうみたいだね」
あ、そういえば私も魔力あるんだった。エルいないしちょっと動かしてみようかな。
今は自室でダナと二人だ。エルが帰ってくるまでは自室に待機、と言われたので。侍女長がどう絡んでくるか分からないのでとりあえずダナと二人で部屋に待機で、しかもドアの前には護衛騎士が二人もいる。
エルが指示していったんですが、人んちの配置に指示ってね。私的には別にいいけど。
護衛とダナには私には誰も近づけないようにと言ってからギルドに行ったんだけど、特に侍女長には気を付けるようにとエルが注意を促したら、ダナも護衛騎士もやる気満々な顔でしっかりと頷いていた。
……ダナも護衛騎士もどうやら侍女長からの理不尽な言動に思う所はあったらしい。
部屋にあるテーブルセットにダナがお茶を用意してくれて今はのんびりしている。
よし、と目を閉じ体の中の魔力を意識して動かそうとすると一昨日よりもすんなりと循環しだした。しばらく動かしているとダナがエル様が帰ってきたようですと言うのですぐに魔力の循環を止めた。
「ディア! またやってたな!」
「あ……」
ばたんとドアを開けてエルが飛び込んできた。そういやエルは距離がちょっと離れていても魔力感知できるんだったっけ。近くにいないからいいや、って思ったけど甘かったか?
「魔力の暴走があるかもしれないから禁止と言っただろう!」
「制御出来てるから大丈夫だよ」
ダナがノックもせずに、と言いたいのか手を上げ下げし、ドアの前の護衛も止めた方がいいのかとおろおろしている。
「とにかく俺のいない所ではダメだ!」
「はーい」
魔法の師匠ですからね。言う事は聞かないと。いない所というからにはいる所ではいいのかもしれないし。
「今は魔法よりも話が先だろう」
「……うん」
行くぞ、とエルが手を差し出してきた。何? 手をどうするの?
「お嬢様、エスコートですよ」
ほえ? 私の後ろからこそりとダナが教えてくれた。
エスコートとな!? お嬢様って呼ばれるのもこそばゆいのにエスコートだと? どこのご令嬢だよ? って私一応侯爵令嬢だったもんね。
そっと大きなエルの手に自分の手を乗せる。どう見ても身長差が激しすぎるので子供が迷子にならないように手を繋いでるようにしか見えないと思う。
ま、いいけど。
「ギルドはどうだった?」
「俺が到着してここにいるという事は言ってきた」
部屋を出て、エルのエスコートでゆっくりと歩きながらエルに聞いてみた。
ふむ。という事はあとは何もなかったって事かな? 相変わらず捜索もされていないって事だね。今からテオドルに事情を聞くのでどうなっているか分かるのかな?
「絡まれたりしなかった?」
「されたけど、まぁ一瞬で事は収まるからな」
ああ、やっぱりね。私という足手まといがいなければそうなんでしょうね。
「そういや昨日の絡んできた奴らをどうしたらいいか聞かれたが」
「…………どうしたらいいの?」
私に聞かれても分からないよ? 裁判とかあるの? あ、そういえば奴隷商とか言ってたけど奴隷とかいるの? それも後でエルに聞かないとね。
「貴族に、しかも領主令嬢に対して売り飛ばすなんて言った奴らだ。打ち首でも文句は言われないけどな」
「うええ……」
「ディア」
じろりとエルに睨まれた。あ、またお小言が来る、と察して表情を取り繕った。
「エルにお任せします。私は忙しいので」
「了解」
ふっとエルが表情を緩めたのでよかったよかった。