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12.山で野宿の準備です。

 結局人とすれ違う事もなく山の途中にある拓けた野宿する場所に着いた。

 町の門は夜には閉まるので山の途中の険しい中で夜を明かさなくてもいいように拓けた場所を作ってあるらしい。

 魔獣も勿論出るが、魔獣避けの薬草を焚いたり、魔法が使えれば結界を張ったりして対処するんだそうだ。

 エルは魔法が使えるからソロで冒険者をしているけど、普通はパーティを組んで寝ずの番を交替したりするらしい。

 火を焚く場所はちゃんと煉瓦で囲ってあった。山火事とか起きたら大変だもんね。


 それにしても誰ともすれ違わないってマジやば。

 きっと他にもルートがあるんだよね? 怖くて聞けないけど。このルートがツィブルカの領都まで丸一日だけしかかからないってエルが言っていたけれども。


 まだ夕方位で時間は早いがこれ以上進んだら鬱蒼とした山の途中で夜になるし、私は病み上がりだし、慣れない馬に疲れただろうとゆっくり出来る時間配分にしてくれたらしい。


「ディアはセンと一緒にいろ」


 エルはセンが足を折ってゆったりと休んでいる所に私を座らせた。私も慣れない馬に乗っての旅で疲れていたし、と大人しくしておく事にする。

 勿論私はエルの言う事を聞きますとも。 大人しくしてます! 魔獣とか怖いもん!


 エルは何をするのかなー? と見ていたらまずまた魔法陣が書かれた紙と魔石を取り出して地面に置いた。どうやら結界の魔法かな? 魔法陣を見てみたいけど野宿の準備もお任せ状態だし邪魔しちゃいけないよね、とここは大人しくしておく。

 ぶわっと魔法陣が広がり空中に浮かんで消えた。ホントうずうずするよね!

 次にエルは拓けた所からわざわざ離れて木々が生い茂っている方に姿を消した。

 エルの姿が見えないとちょっと不安になるが、センが大丈夫と言わんばかりに私の背中に顔をすりすりしてきた。


 すぐにエルが戻ってきたが腕に薪をたくさん抱えてきた。なるほど、火を焚くためか。

 いいけど、私が役立たずで申し訳ない。でも体がバッキバキなんです。おしりも痛いんです。

 馬に乗るって大変なのね……と遠い目になる。出来れば乗馬の練習もしたいなー。いつ何時何があっても大丈夫なように!


 エルはキビキビと動いているけど私は暇。暇というか動けないってのが正解なんだけど。


 エルは煉瓦で囲われた火を焚く場所に拾ってきた薪を置くとまた魔法陣の書かれた紙を取り出している。魔石も取り出しぎゅっと握ってから薪に向かって魔法陣の紙と魔石を放り投げると薪が燃え出した。

 ……火魔法だったらしい。


 なんか魔法は金がかかるって言ってたけどエルって魔法を次々使うよね。魔力も多くないと使い勝手が悪いって言ってたのに次々使うし。

 金持ちで魔力も多いって事だろうけど、これ冒険者に依頼だとどれ位の料金なんだろうか?

 子供は気にするなとか言ってたけど……。


「ディア、こっちに」


 エルに呼ばれたのでセンの傍からよろよろと移動する。ホント体がみしみしなんですけど。元々ディアは運動もしてなかったし当然なのかもね。


 煉瓦で囲われた火の周りにはベンチ代わりなのだろう丸太が半分に切られて置かれていた。

 そこに座るといいとエルに言われて素直に座る。

 あ、おしり痛いんだった!


「回復薬を少し飲め」

「え、でも……」

「いいから飲め」


 エルは腰のバッグから試験管の様な瓶に四分の一位入っている回復薬を取り出し手渡してきた。


「ありがと」


 くぴっと煽ると口の中がとんでもない状態になった。にっが! うえええー! 顔を歪めていると今度は皮袋を手渡された。水だ。

 こくこくと口の中を濯ぐ様に飲んでやっと一息つけた。


 もし私が回復薬を作れるようになったならばもっと飲みやすく出来ないか研究したいものである。

 マジで口の中がひどいよ。

 良薬口に苦しとはいえ、ひどすぎる。飲みやすい様に改良しようと思った人はいないのだろうか? この世界ではこれが普通の味なの?

 いくら効くとはいえ私には無理なんだけどー!


「はぁ……」


 深い溜め息を吐き出すとエルが苦笑を浮かべていた。


「回復薬って作れるようになれるの?」

「回復薬を作れるのは薬師だ」

「薬師。……よし、そのうち薬師に弟子入りしよう。そうしよう」

「…………なぜ?」

「改良したいから!!! 味が! ひどすぎる!」


 エルが一瞬ぽかんとしてからくっと笑い出した。


「回復薬はそういう物だろう?」

「いーえ! 改良する! 絶対! せめてもうちょっと飲みやすく! 崖下でエルが回復薬飲ませてくれた時なんか毒かと思ったよ!」

「毒!」


 それはひどい、と笑っているが笑い事じゃないよ。


「ディアは魔法師で薬師になるのか」

「そうね。できれば」


 その前に色々しなくちゃいけない事が山程あるみたいだけど。

 やらなきゃいけない事に順番をつけなくては。

 最速は文字で決定だけどね! 文字が分からなきゃ何一つできないもの!


「魔法は俺の弟子になるか?」

「なる! なりますっ! エル先生っ!」


 きゃー! とエルに走って向かって抱きつくとエルは当然の様に私を抱き上げた。


「先生はいらん」

「先生は先生だよ!」

「エルでいい」


 嬉しくてエルに抱きつきぐりぐりと頭を押し付けたが、はっとした。

 

 お風呂入ってないし臭くない? 私大丈夫?


 

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