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第22話 プロポーズ(前半)

 祭りが終わって、わたしは村長さんが用意した宿に案内された。今日はいろいろありすぎて、なんだか眠れそうにもない。まだ、この世界に来てから、1週間にも満たないのにたくさんのことが起きた。


 わけもわからず空から落ちて、王様に拾われて、彼の婚約者みたいなものになって。そして、いきなり命を狙われて、今に至る。


 どうして、こんなことになってしまったのだろう。眠る前に、今日起きたことを思い返す。馬車で王様と楽しくおしゃべりして、村についてから王様の意外なところとかっこいいところを沢山みて、そして、わたしは……。


 たぶん、これ以上は思ってはいけないことなんだと思う。村長さんから聞いた、王様と宰相さんの関係。そして、王様が守り続けている信念。わたしなんかが、簡単に踏み入れてはいけない大きな壁がそこにはある。


 簡単には超えてはいけないなにかが……。


 わたしはどうすればよいのだろう。こんなことを考えて眠れなくなるのは、学生時代以来だ。仕事に明け暮れていたときはこんな悩みをもつこともできなかったのだから。


 宰相さんが王様を思う気持ちと、兄が弟を思う気持ち。ふたりはお互いを思っているからこそ、妥協点すら見い出せない複雑な問題になってしまう。


「生きるって難しいな……」

 使い古された言葉をわたしはぽつりと漏らす。なんだか、おかしくなる。わたしはさっき殺されかけたのに、なぜだか安心していた。たぶん、次は彼が守ってくれると、確信しているからかもしれない。


「……」

 口には出していけない言葉だ。思わず、漏れてしまいそうになる。自分しかいない部屋で、そんな我慢をする必要はないのに、口に出したらもう我慢できなくなってしまいそうで……。


 彼はわたしをどう思っているのだろう。自分の責任で異世界に転移させてしまった可愛そうな女という同情?。それとも、珍しい知識をもった異世界人?。それとも、自分の仮契約上の婚約相手?。


 答えなどでないとわかっているのに、どうしても出てしまう疑問。何度、寝ようとして、寝返りをうったかはわからない。わたしは眠れないまま、夜がふけていった。

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