第21話 そして
フードの男はもうそこにはいなかった……。燃え尽きたのか、それとも逃亡したのかはわからなかった。
「倒したんですか?」
わたしはおそるおそる村長さんに聞いた。
「わからん。たぶん、逃げられたと思うな」
<ふぃー>と大きなため息をついて、村長さんは座り込んだ。
「さすがに1日3発の奥義は体にこたえるわい。大丈夫だったかい、マイスイートハニー」
村長さんはさっきの真面目な雰囲気から、いつもの感じに戻ってしまった。その声を聞いて、わたしは<助かった>ことを実感した。安心して、わたしも座り込む。生きていてよかった。それが一番の感想だった。この世界に転移することになったあの時以来、わたしはずっと生きたいと強く思っていた。
そして、気がついた。
「あっ、王様は?」
「やつなら、大丈夫じゃろう。わしの弟子ならあれくらいで死ぬような鍛え方はしておらんよ。早く起きろ、馬鹿者」
「起きていますよ。大丈夫ですか、カツラギさん」
「ハイ、おかげさまで」
「よかった」
王様は力なく笑顔を作っていた。
「まったく、わしがいなかったらどうなっていたことか」
「面目ありません」
「だいたい、お前は優しすぎる。はじめからやつを倒すつもりで戦っておけば、あんな無様な姿にもならんかっただろうに」
「……」
「わしに決闘で勝ったからって、調子にのりすぎじゃ。あれはあくまで、競技。今回のような殺し合いでは、そう簡単にはいかんからな」
「はい」
「さて、お説教はこれくらいにして、せっかくの祭じゃ。楽しもう。もう、やつも襲ってきまい。わしがメタメタにやっつけたからな」
三人で村に戻っているとき、王様は小声でわたしにつぶやきかけてきた。
「お見苦しいところをお見せしました」
「いえ、そんなことありません。助けていただきありがとうございました」
「師匠の言っていた通り、わたしはまだまだ未熟です。あなたを助けようと意気込んでも、あんな情けない姿をさらしていました」
王様は落ち込んでいた。こんなすごい人でも、人間なんだなと思う瞬間だった。
「そんなに落ち込まないでください。わたしなんかを助けてくれようとしてくれたとき、本当にうれしかったですよ」
そんな様子をみて、わたしはドキドキしていた。王様は、とても勇敢で、かっこよくて、そして……
とても愛おしかった……




