第12話 決闘(中編)
前回までのあらすじ……。
契約婚約者と自称ボーイフレンド(268歳)が、わたしのことをめぐって決闘することになりました。やめて、わたしのために争わないで。
「あのう……。決闘ってどんなことをするんですか?」
わたしは近くにいた赤鬼さんに聞いた。もしかして、殺し合い?
「ああ、カツラギ様ははじめてですね。いわゆる、スポーツみたいなものですよ。1度だけ、魔法無効化できる防具を付けて、先にダメージを与えた方が勝ちというものです」
「なるほど」
剣道の魔法バージョンだと思えばいいのか?
「今年の祭の目玉にするんじゃと村長は大はしゃぎで準備してましたからね(笑)。自慢の弟子と遊べるのが楽しみなんですよ、きっと」
「自慢の弟子?」
「はい。村長は、王様のことを<最後にして、最高の弟子>と褒めまくっていますからね。わたしも何度も聞かされています」
「どちらが勝つと思いますか?」
「むずかしいところです。王様は現在、最強クラスの魔術師です。それに対して、村長は全盛期は歴代最強の大賢者と呼ばれていました。老いて、全盛期の力はもうないと本人は言っていますが、果たして?」
「燃えますね」
「はい」
赤鬼さんは飛び切りの笑顔でそう答えた。
王様は、祭の開会式で祝辞を話している。
村長さんの開会宣言はとても短かった。
「いぇーい、みんな今日は楽しもうぜ。以上」
いいのか、村長。
わたしは主賓席で、祝辞を聞いていた。村民たちのひそひそ声が聞こえてくる。
「あれが空から落ちてきた、女神様ね」
「すごく綺麗ね。ドレスもとても可愛いわ」
「王様と一緒に来てくれたってどういうことかしら……。ねぇ、もしかして、あのふたり……」
「もう、それ以上は野暮よ」
とても気恥ずかしい。契約婚約者でごめんなさい。
「それでは、みなさん、いよいよメインイベントをおこないましょう。会場のほうへどうぞ」
司会の赤鬼さんがそういった。
「やったー、楽しみ」
「王様のかっこいいところ早く見たいな~」
みんながワクワクしている。わたしも少しドキドキしてきた。
決闘会場は青鬼さんが作っていた。円とその中に魔法陣が描かれていた。王様と村長さんはそのなかに入る。
「今回の決闘は、わたくしが審判を務めさせていただきます。それでは、結界を張ります。みなさん、少し離れて下さい」
青鬼さんがそう叫んだ。
「カツラギ様はどうぞこちらへ」
赤鬼さんが案内してくれる。特等席だ。
「日頃の恨みとストレスをぶつけにこい。バカ弟子よ」
「手加減しませんよ、エロ師匠」
「それでは試合開始」




