第13話 決闘(後編)
「それでは、試合開始!」
その言葉と同時に、ふたりは今まで見たこともない真剣な顔になった。
その横顔がとてもりりしくて、胸がドキドキする。
「では、いくぞ」
村長さんの背後に5つの火の玉が発生し、宙を舞う。メラメラ燃えるそれは、激しく動き回る。そのうちの2つが矢の形に変形する。
「ファイヤーアロー」
村長さんがそうつぶやくと、2つの火矢は王様へと向かって飛んでいく。恐ろしい早さだった。王様は瞬時に水の玉を作り、それを弾き飛ばす。
狙いを外れた矢が、わたしの方へと向かって来た。ぶつかると思った瞬間、矢は結界にぶつかり、消滅した。
<うおおおおおおおおお>
観客たちは大喜びだ。
「すごい……」
わたしも魔法戦のすさまじさと大迫力に圧倒される。
「さすがは、わしの弟子じゃ。あの速さの矢に対応できるとはな」
「いつもそれで泣かされていましたからね」
「軽口を」
「どっちが」
王様は手から氷の塊を作り出して、村長さんに投げ飛ばす。
村長さんはそれから逃げようとするも、着弾まえに氷は爆発した。粉々になった無数の破片が、村長さんの体に襲い掛かる。
「決まった」
王様は勝利を確信していた。しかし、村長さんはそれを上回る動きを見せたのだった。
「ファイヤーウォール」
火の壁が瞬時に出現した。氷はすべてそこへ吸い込まれる。
「まだまだ、詰めが甘いの。陛下」
「くそ」
陛下はいつもの上品な口調から信じられないほどの悔しさをにじませた。
「かっこいい」
わたしはふたりの戦いに引き込まれた。
「ふたりとも、偉大な魔術師で師弟ですが、戦い方が180度違います。村長は火や光の魔法を得意とし、攻撃特化のスタイル。それに対して、国王陛下は水や氷魔法を得意とし、やや防御寄りのスタイルです」
赤鬼さんがそう解説してくれた。
「ふふ、久しぶりの決闘は楽しいのぅ」
「余裕ですね」
「まぁな」
そう言うと村長さんの背中で舞っていた3つの火の玉がグルグルと回り出す。
「まさか」
王様は驚愕の表情になる。
「そう、そのまさかじゃ」
火の玉は村長さんの眼前でぶつかり合い大きな日の輪を作り出した。
「フェニックス」
赤鬼さんがそうつぶやいた。
「フェニックス?」
わたしはよくわからない。
「はい、あれが、村長の別名にもなっている魔法です。<フェニックス>。地球上で唯一、村長のみが放てる必殺の奥義。<ダイナモ会戦>にて、魔王さまの片腕を奪った伝説の技……」
解説が終わる前に、すでに動きははじまっていた。日の輪の中央から、1羽の鳥が出現した。全身が炎に覆われている伝説の不死鳥<フェニックス>が。
それは、とても優雅で気品に満ちていた。
「すごい」
「美しい」
「グス」
涙を浮かべる観客もいる。それほど、美しい伝説の鳥がそこにいた。
火の鳥はゆっくりと王様に迫る。王様は水魔法を駆使して迎撃を試みるもすべてはじき飛ばされていた。
火の鳥は王様をゆっくりと慈愛あふれるかのように包みこみ、そして爆発した……。




