涙は最強の武器
タイトル通り泣きます。
お読みくださった皆様に感謝を。m(__)m
早々に退室していった母さん達。ポチ達も今は部屋の中には居ない。シーンと静まり返った部屋はさっきまでの喧騒がまるで嘘のようだ。嫁さんは相変わらずジッと見詰めてくる。アレは言いたい事をグッと堪えてる時の顔だ……これは喧嘩に発展しそうな予感。
取り合えず話しかけようとする。
「嫁さん?」
「俺は…………か?」
「ん?」
これは喧嘩よりも嫁さんの感情が爆発する予兆だわこれ。嫁さん昔から溜めに溜めて爆発するタイプだから、ずっとストレスが溜まって今とうとう爆発するみたい。
そっか……そうだよね。散々心配かけて、悲しませて……なにやってんだよ私。嫁さん悲しませてどうすんだよ。たった2週間、されど2週間。白神はどれ位私が眠り続けるか嫁さんには言わなかったらしいから……尚更だよね。
はぁ……笑っていて欲しいのに……逆に悲しませたり、心配させたり……なにやってんだよホント。
「俺は……そんなに頼りないか!?」
「……そんなこと無い。」
「お前はズルい。今男だからと何かにつけ俺を守ろうとしてお前は自分の事を省みない。それでいつも俺がどれだけ…どれだけ心配してると思ってる?記憶が曖昧だった時は俺に注がれた毒入りの酒を一気飲みして危なく死ぬところだった。次は黄の国からの刺客を一人で相手してるし、魔獣を仕留めた…ちょっと目を離した隙に拐われるし、単身黄の国まで乗り込んで俺の呪詛肩代わりするし……確かに結果的に助かった……けど!もし死んでたら……またお前は俺を一人にするところだったんだぞ!死んだら…どうしてたんだよ!なぁ?また俺を一人にするのか?あんな思いはもうごめんだ……ウグッ…グズッ……うっ……スンッ……」
言いたい事を吐き出して終いには泣き出してしまった。ど、どうすればいいの?
「え、えっと……」
「グェッ……うぅっ……スンッ」
泣いている女の子に何も出来ない男の気持ちが分かってしまった……複雑……。
「ねぇ…藍苺?」
「グズッ……見んなよ……ウグッ」
どうしよも無いので抱き締めてみる。子供は心臓の鼓動を聞くと落ち着くから。中身はもういい年した男だけど……今は良いよね?
抱きしめて藍苺の背中をポンポンと叩いてみる……扱いが赤ん坊のそれと同じだ……後で怒るかな?それでも今は泣き顔を見られたくないからか私の胸に顔を埋めて泣いている。
ジンの頃から泣いたのを見たのは数回だけ。しかも声を大にして泣いたところは見たことがない。そして今も必死に嗚咽を堪えながら声を出さない様に泣いている。
確かに私も子供の頃からあまり泣かない子供だった。だからかな……泣くって事が苦手で、声を出して泣けない辛さが分かるのかもしれない。人は声を出して泣くことによってストレスを発散するという。ということは藍苺はまだちゃんとストレスを発散出来ていないかもしれない。なら、一度思いっ切り泣かせてしまおうか?
「(考えが危ないだろ…私よ。)」
嫌われるのは必至なので止める。まぁ、泣き止むまで様子を見よう。
「…………」
泣きつかれてボーッとしている藍苺を未だに抱き締め続けている。嗚咽を堪えてる声は消えているが……涙がまだ止まらない様だ。脱水症状にがならないか心配だ。私の夜着は涙でびっしょり濡れてしまっていた。着替えたいな。
泣き出してから一時間近く経っている。そろそろ本気で脱水症状が怖い。幸いポーチはいつも肌身離さず持ち歩いているので手元にあった。そのポーチから竹で出来た水筒を取り出す。
「藍苺?喉乾いたでしょ?水飲んだ方がいいよ。」
「……ん」
そう言って水筒を渡すと素直に受け取り水を飲み始めた。相当疲れたのだろう。目に覇気がない。水を飲んでいる間も私の寝間着にしている着物を水筒を持っている手の反対の手で掴んだまま離さない。
「……ゴグッ…ゴグッ………疲れた」
「そりゃ疲れるって。」
声を出さない様に泣くのって結構疲れるんだよ。シュンもよくそうやって泣き疲れて眠ってたもの。やっぱり親子だね……そんなところもそっくりだね。
「あ゛ぁ゛~……何でか喉イテー…」
「泣いたら痛くなるもんだよ。」
「ここまで泣いたの久々だ。」
恥ずかしそうに目を擦ってこっちを見ている。しかし、未だ着物を掴んだまま離さない……あの~、嫁さん?そろそろ離してくれませんか?
「ねぇ嫁さん?そろそろ離してくれない?」
「ヤダ」
「……そうですか。」
即答で拒否られた。もうこの体勢で寝るしかないのかな……別にいいけど。
「ん~……もう遅いし寝よっか?」
「………」
声をかけど返事がない……おや?と思い見てみると……
「グッスリ寝てる……」
もう~…マイペースなんだから~。スヤスヤ眠る嫁さんはやっぱり着物を掴んだまま……ふぅ……
やはりこのまま寝るしかないようだ。
ふと、あることに気づく。
「嫁さん髪解いない……取っちゃえ♪」
日頃バサバサと奔放で纏まらない髪が今一応収まっているのは日頃の努力の賜物だ。朝起きればブローして纏めさせ、使っているシャンプーは特別な癖ッ毛用の嫁さん専用。その甲斐あってか最初よは改善してきた。喜ばしいことだが、この髪……油断できない。怠ると直ぐに前の髪質に元通り……になるのだ。例の2週間で少し元に戻りかけていた。
「そう言えば……この組み紐私のだったね…」
誘拐事件の朝に二人とも間違えて使っていたものだ。そのまま返さずに使っていたのか……
この際だから戻しておこう。以前と同じように私は紅の紐、嫁さんは青い紐に。
掴んで離さない嫁さんと一緒に横にならながら明日のことを考えながら眠りについた……
あぁ、明日は……お昼もぶっ通しで狩りをしようかな……なら、皆にはサンドウィッチでも作ろっかなぁ……嫁さんが好きなタマゴサンドとハムとキュウリのサンドウィッチも作ろっか……………




