仲が良いのか悪いのか
美人が無表情で怒ると恐い。
音爆弾(無制限)の威力で失神した舞子。何とか耐えたマオ嬢と楽に回避した私と嫁さんは舞子が失神しているこの機会に話しておきたいことを話すことにした。
「母さん、いくら結界で防音していても不用意にしないでね? 私は丈夫だからいいけど、藍苺は危ないんだから。今度からはやめてね?」
「え、えぇ……ごめんなさい。」
「えっと……久しぶり……ベル?ジン?」
ちょっと申し訳なさそうな心許ない風に話しかけるマオ嬢もといミケ。私や嫁さんは面影があるのに対し、ミケは面影が全く無い。元々私や嫁さんは前世の姿をモデルにしたので似ていて当たり前だが、どうもマオ嬢という存在はミケは関与していない存在の様だ。
「久しぶり。全く面影が無いから気が付かなかったよ。黙ってるなんて……意地が悪いよ。」
「ツインテールに緑髪なんてどこのボカロだよ。狙ってんのか?」
「はぁ?なんてそうなんのよ!? アンタこそベルの後ろに隠れて本当に女の子見たいじゃない。」
「あぁ?誰がレンの後ろに隠れてるって?…多少後ろに居ることが多いだけだっつの!」
また始まった。毎度毎度顔を会わせる都度口喧嘩を始めるこの二人。初対面の時はそれが仲がよく見えたので付き合ってると早とちりして二人に本気で怒られた記憶がある。本人達曰く「同族嫌悪」何だそうだ。従兄弟ってこんなにも似てるもんなんだね。
「大体俺の顔を勝手に女顔にしたのはそっちだろ!」
「ちゃんと忠実に再現したでしょ!元からよその女顔は!女の子だったんだから!」
「お前の夢で見た顔って結局何だったんだよ。」
「私だって知らないよ。こっちが聞きたいっての!」
「ハイハイ、もうその辺にしなさい。ミケ、あんたもいい加減にする! 嫁さん……おやつ抜きにするよ。」
「「はい、すみませんでした。」」
素直なんだか何なんだか……ホントにコイツら何がしたいんだよ……ハァ~。(ー。ー#)
「そうそう、母さん、皆が植える野菜とか果樹をどうするか聞きたいってさ。明日にでも聞きにいってね。それと、母さんが言っていたチーズの事だけど……」
言おうとしたが思い出せなかった。何せ感覚的には何十年も昔の事だ、記憶が怪しい。仕方なくとある本を出すことにした。
「「「!!!」」」
音もなく掌に現れたこの本は「記憶と知識の書」と言い、記憶が曖昧になる時を旅する私に記憶と知識を記録される様にした特別な本だ。見た目は何故か白龍の革の表紙で、厚さはゲーム攻略本のナンタラマニアとかコンプリートガイド何かに匹敵する厚さ。見た目モロ魔術書……まぁ、あながち間違いでもない。魔術の知識も入ってるし。
重たくもないが、何となく宙に浮かせてページをパラパラ捲る。さて、チーズの知識は何処だったかな?
「え~と、あ、これこれ。凝固酵素は偶蹄目の哺乳期間の牛や山羊、羊等の第四の胃袋・ギアラにあるんだって。取り出すためには一々家畜を絞めないといけないのがネックだね。しかも子供……」
空気がどんより……。母さんも最初は、頭に?を生やしていたけど家畜を絞める辺りから「(´・ω・`)」になって黙ってしまった。ミケも「(・_・)」な顔に……嫁さんに至っは「(´;ω;`)」
になってた。正直すまん皆。
「――しかし、効率の悪さからケカビから作る方法が一般的。だってさ。」
「よ、よかった~。」
「作るためとはいえ……前世でそんな事が行われた上のチーズだったなんて思った……ホントに良かった~。」
「チーズのために……子牛が犠牲に……食えねぇ……食えねぇよ。」
……現実に戻ってこれないのが一人。嫁さんや、戻っておいでよ。
「カビから作れるから。さっき言ったのは昔の話だよ。殆どは違うからね?」
「……極稀に有るんだろ?」
「……値段がお高いのはそうかも……でも高いチーズは食べたこと無いでしょ?(レアチーズケーキの高いのは奮発して買ったことあるけど……)」
微妙に納得して立ち直った嫁さん。前世でケチって高級な物なんてあんまし食べなかったからなぁ……ちょっと申し訳ない。もっと奮発しておけば良かったかな……。
「えっと…コウちゃん?その話は後でじっくり聞くから、今日はもう休みましょ? 舞子も気絶したままだし…。」
「そうね。麗春さん、明日色んな所を案内してもらってもいいですか?お手伝いしますんで。
「えぇ、勿論良いわよ。コウちゃん達はどうする?」
色んな所を案内するのは構わないけど、私にはやらなければいけない事がある。そう、肉の確保だ!!
「ごめん、明日は色々やることがあるんだ。嫁さんも母さん達と一緒に行ったら?ちょっと連れていけない所に行くから。」
「何があるんだよ……」
「食糧の調達。主に肉類と木の実」
「一人は危ないだろ!また、拐われたら……」
「そうね、一人は危ないわ。」
「今はマイちゃんと対立していないから誘拐は無いだろうけど……魔物がいるよ?大丈夫なの?」
確かに弱冠8歳の私には荷が重いだろう。しかし、
「何も2週間ただ眠ってただけじゃないんだよ?大丈夫。狩りには慣れてるから。」
異世界では自分で捕って、皮剥いで、血抜きして食べてた。そりゃ何千回もね。だから慣れてしまった。最初はあんなに嫌だったのに……慣れって恐ろしいよホント。
「眠ってただけじゃ……ない?」
「いったい何があったのよ……」
「…………」
嫁さん以外は驚き嫁さん本人は暗い顔でジッと見詰めてくる……。居た堪れなくなって記憶と知識の書に関心を向けようとする。
「だからこの本が手元に有るんだよ。」
軽々と持てる重さに見えない本をパタパタ扇ぐように動かし戯けてみる。嫁さんはあまり変化無い。
母さんもどこか不穏な空気を感じたのだろう。舞子を担ぎミケを連れて早々に退室していった。残されたのは未だに暗い顔でジッと見詰めてくる嫁さんと私だけ……これは一波乱有りそうな予感……




