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教えて?フロウ先生!―四の姫シリーズ解説短編―  作者: い~ぐる&十海&にゃんシロ
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13話「祈念語と魔導語」


アインヘイルダールの下町にある薬草店「魔女の大鍋」…薬草の香りに包まれた小さな店内で、

金髪の少女が本の中身をカリカリと紙に書き写しているのを、向かいに座った小柄な中年店主……フロウライト・ジェムルが眺めている。


「祈念語辞典の書き取りか……俺も小さい頃やったなぁ、いやいや懐かしいねぇ……。」


クツクツと喉を鳴らすように笑いながら呟くと、一段落したのがグッと少女がペンを手放して伸びをした。


「っんんぅ~!あ~、課題の範囲終わったー!」『おわったー』


金髪の少女……ニコラの頭の上で同じ仕草と言葉で真似る小さな水妖精……彼女の使い魔、キアラの姿も既に何時もの事だ。

そしてニコラが、思い出したように彼女が師匠と呼ぶこの店の店主に声を投げかける。


「あ……そうだ師匠、ちょっと聞きたいことがあるんだけど……。」


「ん?どうしたよ。」


「師匠の使う神祈術って、祈念語なのよね?」


「あぁ、そうだな。」


「えっとね、前に師匠が詠唱してた時の言葉に、辞書に載ってない単語があった気がして……私の聞き間違いなのかしら。」


「ん~?……あぁ、そりゃ聞き間違いじゃねぇよ。その辞書に乗ってるのは基礎祈念語だけだもんよ。」


「基礎……祈念語?」


首をかしげる少女に薬草師は小さく頷き、頬杖を付きながら解説を始める。


「一口に祈念語っつっても色々あるんだよ。要は異界の存在や神々に対して呼びかける言葉だからな……まず、その辞書に載ってるのが基礎祈念語。

 文字通り全ての祈念語の基礎になる言葉で、騎士の宣誓を始め大体の祈術の呪文や文章はこれを使う。他の祈念語があるっつっても、

 方言みたいに一部の言葉が専門の単語に置き換わったりするだけで、ニコラが俺の呪文を大体聞き取れたように、殆どの文言はこの語句がメインさね。」


「基礎ってついてるものね。ってことは、ここから色々祈念語が枝分かれするの?」


「そういうこと。神に捧げる神聖祈念語、魔神に捧げる暗黒祈念語、精霊達が使う精霊祈念語、竜達が使う竜祈念語……とかな。

 この辺りの専門の祈念語ってのは、大体辞書に載ってねぇもんだ。まあ基礎祈念語覚えてりゃ大体精霊や竜とも意思疎通はできるけどな。」


「え、どうして?そういう祈念語の辞書があっても良いじゃない。」


「こういう専門の祈念語ってな、覚えようと思って覚えるもんじゃねぇんだよ。神官が神の声を聞いた時……巫術師が精霊と心を通わせた時…

 該当する祈術を身につけた時に自然と口から出てくる言葉なんだ。ニコラだって、巫術を使ってる時俺が知らない精霊祈念語が口から漏れてんだぜ?」


「え!?嘘っ、私ちゃんと習った祈念語で呪文組み立ててるよ?」


「そ、本人はそのつもりなんだよ。でも、祈術を扱う者は力を借りる存在にわかりやすいように、言語の端々を方言みたいに無意識に最適化させるんだ。

 それを便宜上個々の祈念語として呼んでるだけで、実際自分達がどこまで専門の祈念語で喋ってるか、なんてのはすっげぇわかりにくい。

 そも、単純な意思疎通だけなら基礎祈念語で十分成り立つわけだから、辞書なんて必要ない……だから載ってねぇのさ。」


「なるほど……何か師匠が知らない呪文を私が唱えてるって、ちょっと不思議な気分。」


「なはは……祈術が種類毎に完全に畑違いになるのは、この専門祈念語のせいだな。基礎祈念語だけで使える祈術は召喚術だけさね。

 だからこそ、召喚術だけが一から学問として学んで使える唯一の祈術ってなるわけだが……。」


「そうだったんだ……だから、祈術の大半って専門の学科じゃないと授業が無いのね。それじゃあ魔導語は?」


「魔導語は下位と上位の2つだけさね。どっちも学んで覚えるタイプだな、下位は昔の会話用だったらしいが、今は呪歌や文章に使うくらいじゃねぇか?

 魔術師が魔導術に使う呪文は上位魔導語さね。つっても、上位魔導語も基本的には単語ばっかりで、文章の組立メインは下位魔導語らしいが……

 共通語は下位魔導語が元らしいから、共通語魔術として呪文を組んでも発動する……って話だったな、確か。」


「へぇ……魔導語の方が数が少ないのね。でも、勉強すればきちんと覚えられるから、魔法学院は魔導術が主流……と。」


「そういうこと。まあだから、あんまり気にすんな。」


「はぁ~い。……あ、でも師匠。」


「ん?」


「師匠って何で使い魔連れてないの?私、師匠の使い魔見たことない。」『みたことなーい。』


「…………あ~、うん。それはだな……。」


「それは……?」『それは~?』


「俺が使ってる神祈術って、使い魔を召喚する呪文ねぇし。もっと上級の術者なら、神の使徒と契約結んだりできるんだろうけどな……。」


「あれ……じゃあ、ダインとちびちゃんは?」


「あれは契約の前から縁や繋がりがあって、あいつらの合意の上だったからな。一から呼び出して契約するとなるとまた話は別さね。」


「……でも召喚術だけなら基礎祈念語だけで出来るのよね?……もしかして師匠面倒くさくて儀式してないだけなんじゃ……。」


「…………さぁて、お茶でも淹れるかなぁ。」


「ちょっと師匠!無視しないでよっ!」『むししないでよー!』


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