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日記15 一歩の歩幅

「…へ?」

「なんで、料理に挑戦しようと思ったんだ?」

「へぁ〜…それはぁ…ねぇ……」


 あごの力が抜けてるのかってほどだな。俺はそんなに変なことを訊いたのか?


「……なにかあった?」

「えっと…あの……私……………あの…」


…本当になにかあったのか?


瑠璃(るり)…どうした?」

「…いや…なにもないよ。でも…えっと…ね、私……」

「…瑠璃、もしかしてさ、俺に気をつかってる?」

「うぇ…いや、そんなことは…な……い…よ……」


 これ…な。良いのか悪いのか…いや、余裕ができたと思ったほうがいいのか?

 とにかく…


「…瑠璃、ちゃんと話してくれたらお菓子をあげるよ」

「…えっ、おかし!?」

「うん、お菓子。瑠璃の大好きな小分け板チョコ」

「ほ…ほしい! りんくん、私食べたい!!!」

「じゃあ、料理をしたくなった理由を訊いてもいいか?」

「わ…うぅ………わかった…」


…お菓子すごいな。

 でも、罪悪感があるから次からは止めよう…気が引ける。


「…りんくん、わらわないでよ?」

「うん、わかった」

「…あのね、私…さ、仕事…してるよね」

「そうだな。確か、商品開発だろ?」

「そう…それでね、区切りがついたというか…時間に余裕ができてきたの」

「まじか、よかったじゃん。瑠璃の成果だな」

「え…えへへ…ありがとう…!」


 はにかんでる…でも、それとなにが関係あるんだ?


「私…それで、仕事がなくなってきて、ヒマになっちゃって……」

「いいこと…と、思っていいのか?」

「はじめは、私もそう思ってたの。でも…3年…かな? 続けてたから、ヒマな時はソワソワしてきちゃって…」


…あれ?

 え、もしかして…ガチか?


「る…瑠璃、もしかして……」

「…私、家事をこなしてみたいの……!」

「……え………ん〜…」


 な…えぇ…てか、これを笑われると…えぇ……


「り…りんくんの負担も減ると思うんだ! だから、私もできることがあればなって……!」


…あ、そっち?

 じゃあ、答えは決まってるけど…いや、言おう。


「無理」

「…へ?」

「無理。そして、バカ」

「……へぇ…?」


 口開けてる。ピザ入れよ。


「…ムガァ!?」

「俺、べつに負担だと思ってないんだけど。むしろ楽しいから。だから気をつかうな」

「…どぅ…どぅぇもぉ……」

「瑠璃の考えは()()()()()()()だろ? ()()()()じゃないなら俺は断る」


 なんで気をつかわれてんだか…


「…とにかく、考えを聞かせてくれてありがとう。ほら、ピザを食おうぜ」

「むぁ…ん〜……!」


 目がうるんでる…けど、怒ってるな。

 でも、ピザを持ったし、あきらめてくれ…


「…グァ!」


 え…入れられたんだが…!?


「りんくんのバカ! 私、りんくんのお手伝いをしたいの!!」

「ぐ…あ…あの……」

「気をつかってるのは、りんくんじゃんか! ご飯だって作ってくれて、洗濯物だって!!」

「ちょ…る…るり……」

「だから私も手伝わせて! 一緒にやりたいよ!!」

「……るり…て……!」

「………え? あっ、り…りんくん…!?」


 ピザが…つま…やばい、瑠璃の指を噛みそうで口が動けん…!


「わ…あ…り…あぁ……!!」


 あっ、離れた。これで噛める…!


「……んん! ふぅ…瑠璃、2個同時はさすがに止めてくれ……」

「ご…あぁ…ごめんなさい〜〜!!!」


 やば、泣き出したんだけど。


「…瑠璃、わかったから。手伝いたいなら、俺は断らないからさ」

「あぁ〜〜…ありがとぉ〜!!!!」


 ひさしぶりだな…こんなに大泣きしてるの。怒った時以来か…あれ? もしかして、俺怒ってた?


「…ご飯食べようぜ。デザートにお菓子もあるし」

「うん〜!! たべるぅ〜〜…!!!」


 手伝い…か。驚いたし、嬉しい感情もあるけど…喜んでいいのかわからんな。でも、瑠璃がしたいなら付き合うか。


「…ピザ、冷めるから食おうぜ」

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