1.私のスペック
一人称に書き直したリメイクです。
出来るだけ早めに書きます。
あー。かちゃかちゃうるさい。
キーボードの打鍵音で賑わっている空間。此処は田舎の市役所。
私、小泉裕子は大学卒業後、公務員として働いている。
慣れない環境や仕事内容、同時に一人暮らしを始めたせいで一息も安心も出来ない日々を暮らしている。
これがもうキツくて仕方がない。
休憩中はいつも大学時代の記憶が蘇ってくる。
あの時はよかった。毎日お酒を飲んではお風呂も入らず翌朝まで女子会をしていた。
あ、本当の女子会を知ってる?
男と変わらないよ。
下品で、脚は大股開いてはぺちゃくちゃぺちゃくちゃ超楽しい。
世の男どもが見たら、恋なんて言葉は消えちゃうかも。ごめんな〜
それが今では地方の市役所に飛ばされて全てが失ったような捨て猫のように暮らしている。
ちなみに私の顔はかなーーり中途半端。だから結構な確率でお酒を買う時も年齢確認されるし。
あのね、年齢確認されて嬉しー! ってたまに聞くけど、私はそんな風に思った事ない。逆に腹立つ。
男子に「若く見えるよね」って言われたことあるけど、まだ20代前半ですよ? 若いに決まってんじゃん。「子供っぽい」って事だったのかな。なんか今更腹立ってきた。会って殴ってやろう。
まぁ何処にいるかわからないけど。
まぁ男友達いないけど。あいつ誰だったんだ?
それも私のこの中途半端な顔スペックが人生の邪魔をしている気がする。
中途半端な視力。夕方になると目が霞む。
中途半端な体力。階段の上り下りで眼鏡の下の方が曇ります。汗っかきだから。太ってはいない。
中途半端な食事。殆どコンビニ弁当とビール一本と野菜ジュース。野菜ジュースは免罪符。
別に罪は犯してないけれど。
自炊は最初の方にしてたけど、気づいたらこうなってた。なんでだっけ。まぁいいの。
あーほんと私って中途半端。
「あの……それじゃあ、お先に失礼します」
私はそんな事を考えながら殺伐とした空間を定時で逃げた。
まだ先輩達が残ってたが、新人は定時退社するのが決まりらしい。
そりゃ最初は戸惑ったけど、暫くするうちに慣れてしまった。寧ろラッキーって途中で気づいたし、思った。
……それでも日々の疲れが一向に取れない。
気がつけば私は下を向きながら帰路を歩いていた。
きっと今のオーラは黒。
私は新人だから定時で退社できるが、二年目からは先輩達と同じ様に、次の日の業務に支障が出ない程の残業をするそうだ。それは先輩が言っていた言葉だ。支障が出ない程の残業なんて蓋を開けてみれば絶対に違うだろう。
例をあげよう。前向きで頼もしいマニフェストを掲げ、実際当選すると全然違う事をする。
若しくはやらない、サボる、見下す。
そんな〇〇みたいな感じに決まっている。
そんな事を考えながらも、これから押し寄せる妙な圧迫感を背負い、大きく溜め息をつき、帰路の商店街を歩く。
私が勤め先になった土地は有名な温泉、それを目的に外国から押し寄せる人。人。人。
世界遺産もある観光地なので人通りも比較的多い街だった。
通達を受けた時はすぐに断ろうと思ったが、すぐ諦めた。
この通達を断ると職を失う気がして断れなかったからだ。
なにしろ命令。これが社会。それに日頃のニュースの雇用問題や、社会の経済的低迷。そんな社会情勢の中、新卒で入った会社を数ヶ月で辞めた人間がその次の転職先を見つけられるか?
そもそもその自分の人生を表した履歴書を他人に見せられるか?
私は考えた結果、その通達を受け取るしかなかったのよ。我ながら利口だと思う。のよ。キャピ。
うんうんと自己肯定をしながら町ゆく人を器用に避けながら歩いた。
ってか温泉って効能あるの? 入浴剤でも効能書いてあるよね。
でもそれって本当なの? お湯じゃん。添加物を口から内部にってのは摂取できるっての理解できる。でも表皮から効能を実感できる成分って吸収出来るの?
バカヤロー! そんな液体あるわけない!
まぁ、それいいとして、商店街を出ると大通りがあり、青点滅している横断歩道を急いで横断しようとおもったけど、やめて止まった。汗かくし。
赤に変わった。その間にスマホを取り出し、SNSアプリを開き、フォロー中の人達の近状を確認した。
一日に三十回くらいは確認するかな。
フォロワー少ないけど。
画面をスクロールしていると、自分の手指の油分のせいか画面が、滑る滑る。
私ってこんなにギッシュだったっけ。まぁスクロールし易いからいいんだけど。
案の定、目の前は華やかな友人達の日常が広がっていた。
パステル風に色味が編集された化粧品の購入報告。
あっそ。私も欲しい。
愛犬とのツーショット。
あっそ。超可愛い。犬が。
黒い写真が目に入った。
……あ! ナオのヤツ、彼氏と別れたんだ。ついこの間までデートの写真とかアップしてたのに。
こう書かれている。
『別れちゃったけれど、ずっと忘れないよ。ずっと大切な存在だから』
なんかこう、身体の内側から痒みと苛立ちがこみ上げてきた。
これはキツい。キツイぞ。念のためにスクリーンショットしておこう。
ってかなんで別れたりすると黒い写真アップするの?
でも不思議と少しだけ救われた気がした。
他人の不幸は蜜の味。
これは決して言葉に出してはいけない。お酒に酔った時にポロリと出てしまう話題だ。
酔ったその時は言ってしまえ。
人なんてそんなもんだ。
気づけば信号はとっくに青に変わっていて、既に点滅していた。私は渡るのを諦め、再び携帯を見ようとした瞬間、肩に何かが勢いよく当たった。びっくりしながら前を見るとサラリーマンが半身で私を見ながら小走りしていた。
「あっ! すみませ……!!」
「……チッ」
あれ? 謝っちゃったよ。なんでだろう。私痛かったのに。私、身長低いオンナニョコなのにぃ。アンタが謝りなさいよ!
サラリーマンをの背中を見ていると視界の横からスポーツカーが猛スピードで私に目掛けてスピンしながら向かって来るのが見えた。え?
避けられん。終わった。




