第12話 ■魔王専用の部屋□
目の前にあるのは、私の身長の2倍ぐらいある大きな扉。
隣にいるルナは人の姿に変わって、早く部屋に入りたそうにしている。
ちょうど私の目の高さのところにドアノブがあったので、握ってガチャリと扉を開けた。
…扉を開けた先にあったのは、アニメに出てきそうな、とても広い部屋だった。
「すごい…。」
「え、何この部屋!広っ!
いーなークロム、こんなすごい部屋に住めるんだ。」
「あはは……。」
私はあまりのすごさに苦笑いしかできなかった。
入って5メートルほど先まで幅の広い通路が続き、その先はさっきの広間ぐらい大きい空間が広がっている。
通路のところには、両側にドアが一つずつある。ちょっと覗いてみよう…。
まず左のドアを開けると長い通路があって、その両側には様々な種類の服がたくさん掛けられていた。
よく見ると、何個か色違いが揃っているものもある。
うーん、なんか奥の方に魔王のコスプレ衣装みたいな服があるのは見なかったことにしよう…。
「これ……私も今度着てみていい?」
たくさんのオシャレな服を目の前にして、ルナが目をキラキラさせて聞いてきた。
「うん、いいよ。
私だけここの服着るのもなんか申し訳ないし。
それにもうルナは私のルームメイトみたいなものなんだから、そういうのは気にしなくていいんだよ。」
私がそう答えると、ルナはすごく嬉しそうに
「うん!ありがとう!」
と言った。
私基本的にオシャレにはそんなに興味がないから助かる…。
確かもう一つ向かい側に部屋があったよね。言ってみよう。
一通り服を見終わった私とルナは、部屋を出て、向かい側にある扉を開けた。
「ほわぁ………!
なにここ!楽しそう!!」
確かに、ルナが楽しそうって言うのもわかる。
…まさか、魔王の部屋にこんなに大きい"トレーニングルーム"があるとは思いもしなかったよ。
トレーニングルームの中には、的のような攻撃を当てるものや、ランニングマシンのような筋力を鍛えるものなど様々なものがある。
私、運動音痴だから、明日からメフィスにここでしごかれそうな気がする………。
「クロム、明日から頑張ろうね!」
「うん…………。
お手柔らかにお願いします……。」
「ん?なんでそんなに元気ないの?」
「いや、私運動音痴だから、明日からメフィスに散々しごかれるんだと思うと……ね……。」
「別にそんなに落ち込まなくてもいいじゃない。実際クロムのステータスは、普通のレベル1のステータスよりもはるかに高いんだし。」
「そうかな……。
でも、確かに他のレベル1の人のステータスなんて見たことない…。」
「そうそう!もっと自信持ってよ!
私を召喚できた時点で、クロムは他と比べてかなり強いって証明されてるんだから!」
「……うん、そうだよね。ありがとう。」
ルナのおかげで、少し自信が持てた気がする。トレーニングのキツさなんて、やってみないとわからないしね。
「よーし!じゃあ最後は奥の間へレッツゴー!!」
そう言って、ルナはトレーニングルームを出て、奥の広い部屋へと走っていった。
「あはは……。そんなに急がなくても。」
私もルナについて、奥の部屋に向かった。
ここは大きいだけあって、ベッドもダブルサイズだし、それに物がそんなに置かれていないからスッキリしている。
部屋の中のどれもが黒や紫といった、悪魔を連想するような色ばっかりだ。
あれ、先に来たはずのルナは……?
そう思ってキョロキョロしていたら、ベッドの上に黒い塊を見つけた。
なんだろうと思って近づいて見てみると、なんと猫の姿に戻ったルナだった。
ルナは丸くなってすやすやと眠っている。
気持ち良さそうに寝ているなぁ…。
私もそろそろ寝よう。
私は今まで長い時間持っていた荷物をベッドのそばに下ろし、寝る準備を始める。
さすがに制服のままでは寝られないから、さっきのクローゼット部屋から、何着かある寝間着の中で一番地味なものを選んで着替えた。
とりあえず、制服は寝間着の代わりにここにかけておこう。
部屋の明かりの消し方がわからない。
これ、どういう仕組みでついてるんだろう。
…考えてもわからないし、明日メフィスに聞くことにしよう。
私はルナを起こさないように、そーっとベッドの中に入った。
このベッド、すごいふかふか。
枕も柔らかくて寝やすい。
……ふぅ、今日は色々疲れたからもう寝よう。
目を閉じると、すぐに意識が遠のいていった。
私の家にもランニングマシン欲しいです…。
外に出ずに、家で走って鍛えたいです。




