第11話 ■観察する者□
〜20分後〜
お風呂気持ちよかったー。
体も温まったし、もう寝よ……。
私は部屋の電気を消し、ベッドに入る。
おやすみー……。
─暗くなった部屋の窓の外から、光凛の様子を観察している一対の目があった。
「あれが光の勇者か…。
まだレベルが低い。それに魔力も少ない。
攻めてくる危険性はなさそうだ。
…挨拶ついでに報告をしておくか。」
その目の持ち主は、そうつぶやくと、翼を広げて君主がいる魔王城へと羽ばたいていった。
─魔王城にて─
『影猫』に「ルナ」と名前をつけて、使い魔契約を完了させた直後、突然広間の中心にある魔法陣に一羽のフクロウが現れた。
「やっと一人目が来たようですね、クロム様。」
メフィスが少し嬉しそうに言った。
…1人目? 1羽目じゃなくて?
そう思ったとき、目の前のフクロウが緑色に輝き、初老の男性の姿へと変わった。
そして、その男は跪き、
「お初にお目にかかります、新たなる魔王様。
私は『ストラトス』という者です。
さきほどのように、私はフクロウの姿になることができます。
偵察ならこの私めにお任せください。」
と言った。
『ストラトス』…。
なんか、『しんぶんし』みたいな名前…。
上から読んでも下から読んでも『ストラトス』…。
「は、はぁ…。
えっと、『ストラトス』ね。
これからよろしく。」
「はい。
それで、ここに来る前に“光の勇者”の様子を見てきましたので、報告させていただきます。」
仕事早っ!
「それで、光凛はどんな感じだったの?」
「光の勇者"ヒカリ・ホシヅキ"は、レベルがかなり低く、魔力量も少なく、加えてスキルもまだ一つも覚えていないため、まだこちらに攻めてくる危険性はありません。
それと、他の二人の勇者も同様です。」
うん、まあそりゃあ今日来たばっかりだもんね。
「それで、3人は元気にしてた?」
「……?なぜそのようなことを気になさるのです?」
「その3人の勇者は私の友達なの。
私と一緒に別の世界から召喚されたのよ。」
「なるほど…。そういうことですか。
なら、うかつに手を出せませんね。
今、3人の勇者は眠っております。
健康状態に異状はありませんでしたよ。」
あれ、もうそんな時間だっけ?
時間を確認するために左腕の腕時計を見る。
腕時計は夜の9時を指していた。
あー。光凛のいつもの寝る時間じゃん。
じゃあもう夜ご飯食べ終わったのかー。
……って、私まだ夜ご飯食べてない!
というか不思議とお腹空いてない…。
「ありがとう、ストラトス。
…ねぇメフィス、私たちご飯とか食べなくていいの?」
「あぁ、その説明がまだでしたね。
この魔王城に居る間は、常に体内の魔力が尽きないので、食事を取る必要はありません。
ですが、魔王城の外に出ると魔力の補充が食事でしかできないので、そこは注意してください。」
なるほど…。
「んー…。
でも、もし勇者が攻めてきたとして、魔王城の中で戦ったとしたら、どっちも一生魔力が尽きないから長期戦になるんじゃないの?」
「いえ、それはありえません。
魔王城から魔力が供給されるのは、偉大なる魔王様と、その配下のみです。
たとえクロム様のご友人であろうと、この魔王城が許可をされない限りは、魔力の供給がされません。」
魔王城って、そんな意思があるんだ…。
意思というか、システム的なものなのかな?
「教えてくれてありがとう、メフィス。」
「いえ、それが私の役目なので。
ところでストラトス、お前はこれからどうするんだ?」
「そうですね…。
せっかくですしクロム様、私にご命令を。」
「え、えっと…。
じゃあ、しばらくの間、3人の勇者のことを見てきて。
絶対に手出しはしないでね!
でももし命の危険とかあったら助けてあげて!」
「承りました。
では、一週間後にまた報告に来ます。」
そう言うと、ストラトスはまたフクロウに姿を変え、魔法陣の上に乗って、消えた。
消える直前、フクロウの姿のまま、こっちに向かってペコリとお辞儀をしたのは、正直可愛かった…。
…あれ、呪文というか、詠唱唱えなくていいのかな?
なんて思っていると、メフィスが
「私もそうですが、魔王様の配下はほとんどが無詠唱で魔法を使うことができます。
もちろん、今のクロム様でも、慣れればすぐに無詠唱で魔法が使えますよ。
ちなみに、スキルに詠唱はありません。
唱えるとすれば技名ですが、そんなことをしていては、敵にどんな技を使うかバレてしまいます。
なので、私たちはスキルも無詠唱で使いますよ。」
と教えてくれた。
無詠唱でスキルや魔法を使うのって、漫画の世界だとだいぶ強いらしいけど…。
となると、ストラトスもだいぶ強いってなるよね。
…ほんとに、いつか寝返られないように早く強くならないと!
「さぁ、今日は色々あって疲れたでしょう。
早く部屋に戻ってゆっくりお休みください。
明日、起きたらまたここに出てきてくださいね。」
「はーい。」
「ルナ、クロム様のことをお願いしますね。」
そういえば、ルナのこと忘れてた…。
「ん……。ふわぁ…。
もちろん、そのつもりよ。」
いつの間にか猫の姿に戻って寝ていたみたいだ。
いつから寝ていたんだろう…。
「では、おやすみなさいませ、クロム様、ルナ。」
「「おやすみー。」」
広間の中心でメフィスと別れ、私とルナは自分の部屋へと向かった。
『しんぶんし』が回文なら『ストラトス』も回文なんでしょう、たぶん。




