19、腕の中の不安。
「ただいま ロージア。」
「―――おかえりユズ。」
ロージアの仕事場に柚が顔を出し、帰ってきたことを知らせると、仕事に熱中していたのか、ロージアから、一拍置いてにっこり笑って返事が返ってきた。
「ロージっ! ちゃんとユズちゃん送り届けたぞ! 暗くなるしっ、オレはもう帰るから――。」
外からジルのそんな声が聞こえて、
「ああ。」
力の入らない返事を返しながら、ロージアの視線は柚へ注がれる。
その柚は、行には持っていなかった荷物を、肩から下げていた。
ロージアは、部屋の入り口に立った柚の元まで近づくと、その胸に、ふわっと柚を抱きしめた。
その行為があまりにも自然で、なによりロージアの胸の中が心地よくて、柚は自然とロージアに身を委ねた。
「仕事、はかどった?」
「―――ああ。」
本当は、なんにも手に付かなかったなんて言えない。
本当は、すごく不安で、柚に触れて、ここに戻ってきたのが柚だと確かめるために抱きしめたなんて言えない。
そして今、腕の中の柚は本物なのに、心の奥底で不安が燻っている。
2人で作った夕食を食べながら、柚はロージアに、ジルから提案されたことを伝えた。
柚はあれから、ジルに、糸状のカーボンを、髪の毛の毛先のように加工する工程を見せてもらっていた。
その作業はあっという間で、つけまつ毛を完成させるのは、その後の柚の力量次第といった感じなのだ。
ジルはカーボンを、2日に一回柚の元へ届けてくれることになった。
「王都に売りに行くの?」
「うん。 出来上がりの状態次第なんだけど。この世界にはつけまつ毛無いっていうし、絶対重宝されると思うんだ。」
そう言う柚の顔を、ロージアはまじまじと見てくると、
「オレも行くよ。ユズが王都に行くときは。」
なにかに納得するように、そう言った。




