EP2 【悪夢の再来Ⅱ】
地下室には、ダイヤル式の大きな金庫がある。
ルーナもちょくちょく地下室には入っていたので、金庫の存在は認知していた。
しかしその中身に関しては、聞いても答えてくれないことを重々承知していた為、尋ねたことはない。
……。
何も語られないまま、2人は自然と金庫前へと立った。
「ルーナ。今から(炎の巫女)と(空の王)について教えるわ。でもまずは見てもらう方が早いと思う。」
カタリナはそう言うと、金庫のダイヤルを回していく。
カチッ
という音とともに、中から小箱と、封筒が出てきた。さらにカタリナは小箱の鍵を開ける。
「綺麗…。」
小箱の中から出てきた赤いリングに、ルーナは思わず声を漏らした。
「これは(フレアリング)。これこそが(炎の巫女)の力を引き出す特別な指輪なの。」
「よく…分からない…。」
ルーナの返答に、カタリナは軽く頷いてから、封筒の中から数枚の紙を取り出した。
「これって…。」
ルーナは1枚の写真を指さして聞いた。
「あなたのお父さんよ。」
カタリナは淡白に答えた。
「空を…飛んでる…?」
「あなたのお父さんはね。(空の王)と呼ばれた英雄なの。名前はロシェ。」
カタリナは少し俯きながら話を続ける。
「空を操る特別な力を持っていたの。この国の平和を、命をかけて取り戻した英雄よ。そして私は…。この(フレアリング)を使って、ロシェと共に戦った。(フレアリング)は特別な資質を持つ者に、炎を自在に操る力を与えてくれる。だから私は(炎の巫女)と呼ばれているの。」
あまりに唐突で、複雑な話に、ルーナの脳は追跡が追いついていない。
「少し落ち着きましょう。」
カタリナは話を止めて、地下室の椅子に腰掛けた。ルーナも横に座る。
……。
20分ほど沈黙が続いた。
「お父さんとあ母さんがすごい人だというのは分かった。」
ルーナがそう言うと、カタリナは少し微笑む。
「私たちは守りたかっただけ。でも私自身は1番守りたかった人を守れなかった…。」
「お父さん…。」
「ずっと黙っててごめんね。」
カタリナはそう言うと、ルーナの頭を撫でた。
「お母さん…。私こそ、本当にツラいのお母さんなのに…。強く当たってごめんね。」
2人は束の間抱きしめあった。
本がぎっしりと並ぶ地下室の中。
丸テーブルに簡素な椅子が2つ。
カタリナは本題を話し始める。
「全ての戦いが終わった後、私はとある地下室で(空の国)についての壁画を見た。」
「壁画?」
ルーナが聞くと、カタリナは頷く。
「空の国と深く信仰のあった国。歴代の(空の王)はその地にて心技体を学ぶ。そう書いてあったわ。」
「(空の王)ってことはお父さんも?」
カタリナは少し考えてから答えた。
「ロシェは過去からきた人。それに歴代(空の王)の中でも一部の者にしか扱えないと言われていた(空を操る力)を持っていた。そんな人物が、空の国と密接な関係の地に行っていない訳がないと私は思っている。」
ルーナは黙って聞いている。
「それに壁画には続きがあって。(空の王)の血を引く者。すなわち次世代の(空の王)は、その地にて儀式を受けなければならない。と…。」
「それって…。私だよね?」
ルーナが聞くと、カタリナは頷く。
「分からないことだらけ…。」
ルーナは明らかに困惑している。
カタリナは優しくルーナの頭を再び撫でた。
「ここから先はルーナ!あなた次第。正直私にも何があるのか、何が起きるのか分からない。でも行けば恐らくお父さんのことは少し理解できると思う。でも今はもう平和な世界。もちろん空に国もない。行かなくても誰も咎めたりしない。だからあなたが決めていいのよ。」
カタリナの言う通りで、平和な国に生まれたルーナは何も背負う必要なんてない。ただ好きな踊りを極めて、国いちばんの踊り子を目指せばいい。
しかしルーナの答えはそうではなかった。
「私は…。正直なんにも分かってないけど。少しでもお父さんを知ることの出来るチャンスがあるなら。行きたい!!」
……。
カタリナは少し言葉を詰まらせた。
「そうだよね…。」
カタリナはそう答えると、(フレアリング)の入った小箱を手に取った。
「国の外は危険も多い。私も久しぶりに(炎の巫女)になる時が来たわね。」
小さくそう呟くと、ルーナの手を握った。
「ルーナ!行きましょう。空の国と親交の深かった国ヤンガミへ!!」
ルーナは少し嬉しそうに頷いた。




