第三章 ダストバレの街 Ⅷ
〈第三章 ダストバレの街 Ⅷ 〉
そう聞くと二人は海が見られると思い待ち遠しかった。
「奥に進むと、ほらあそこに出口があるだろ。そこを左へ曲がると大きな貨物船がある。そこで誰かに声をかけろ。後はそいつの指示に従って動け。いいな?」
二人は威勢よく頷き、出口へ向かって歩いた。左へ曲がると、さっきダックレス所長が言っていたように大きな貨物船が浮いていた。全長二百メートルほどの大型船で、既に沢山の荷物が船に積まれている。船底部分には「船底汚塗料」として濃紺色が使用されており、船体には、反射防止のため油色が用いられていた。二人は影の下から貨物船を眺めていた。スコットは、この世界にもこんな大きな船があったという存在に驚いていた。逆にジャッグは目を輝かせて、今にも乗りたそうな表情をしていた。スコットは学生時代にイギリス近代史の授業で、戦艦を教科書や映像で何度も観たことがあるせいか、大きさに対しては特別驚かなかった。だが、生まれて初めて船を見たジャッグにとっては驚きを隠せなかったに違いない。
貨物船から、四十代くらいで所々に白髪がある短髪の細身の男が降りて来てこちらを見た。
「君たちは‥‥‥今日からここに?」男が尋ねた。
「はい! 今日からここへ配属されることになったジャッグです。そしてこちらがスコット」ジャッグが威勢よく答えた。スコットも軽く挨拶を交わした。
「そうか! 二人ともよろしく! 運送業担当のケイルだ。私も君たちと同じ作業員だ。あそこで貨物に紐を結んでいる人が、責任者のモンバットさんだ。詳しいことはあの人に聞くと良い。着いておいで! 案内する」二人は案内され、貨物船の錆びた段差の高い階段を登って行った。
「お疲れ様です! モンバットさん。彼ら二人が今日からここに‥‥‥」ケイルが紹介した。
「おぉ、よく来てくれた、二人とも歓迎する。人手不足で大変だったところだ」
薄汚い紺色の帽子に手入れの行き届いていない口髭を生やした大柄な体格の彼こそがサリハンだった。
「大変です! モンバットさん! 今コールシナ区から船が出航しました」
若い作業員が走って来てモンバットに言った。
「またむしり取りに来たか⁉︎ 強欲な奴等め!」モンバットが目の色を変えた。
「後どのくらいでここへ?」モンバットが尋ねた。




