第三章 ダストバレ区 Ⅴ
〈第三章 ダストバレ区 Ⅴ 〉
ムネパレットが馬車にスコットの荷物を運び、二人は馬車へ乗った。
馬車が田植えをするスンケルを通り過ぎた時——
「スンケル!」ムネパレットが後ろを振り返って強く言い放った。
「なんだい、じいさん!」スンケルが首元の汗をタオルで
拭きながらムネパレットの方に顔を向けた。
「諦めてはならんぞ。救いはきっと‥‥‥この世界にある」
スンケルは何かを感じたかのように走り去っていく馬車の方を見つめていた。
そうかもと呟いたかのように再び作業へ戻った。
「ここの生活には慣れそうか?」ムネパレットが尋ねた。
「えぇ、ぼちぼちです」スコットが答えた。
「このダストバレ区は実にのどかな場所ですね。何というか‥‥‥自然が広がって
いる」風に吹かれながらスコットが言った。
「‥‥‥それは良かったな。だが日が経つにつれ分かるさ‥‥‥この街の本当の
姿がな——」
ムネパレットがスコットに語りかけるように言った。
「どういう意味です?」スコットが即座に尋ねた。
「まだ目的地へは時間があるから少し話でもしておこうか‥‥‥はるか昔このダストバレ区は栄えていた。ダファット族として独自の文化や伝統を大切にしていた。しかし事も有ろうに、エルシアの国と呼ばれる上部の大陸の民に支配され、配下となり、やがて奴らカークス族は我々から自由を奪い、食料、職業、収入などの全てを取り
締まった。一週間に一度、市場で食料の配給が行われ、必要最低限のお金が用意
される。」
「じゃ‥‥‥この国の紙幣の単位がカークスと呼ばれているのも‥‥‥」
スコットは神妙に尋ねた。
「あぁ、その通りだ。奴らカークス族がこのエルシア国を作り、この地に居た ダファット族は血筋が途絶えた。このダストバレ区は元ダファット族の地として卑しめられ、苗字を剥奪された。苗字は一族の一員を意味する名誉でもあるからな。
それを奴らは取り上げた!‥‥‥そして、今こそダファット族を蘇らせる
時なんじゃ‥‥‥」
「ムネパレットさんはダファット族のために‥‥‥」
「まぁな。しかし他の者にダファットと決して口にするなよ。嫌がられるからな」
そう話しているうちに目的地が見えてきた。何やら巨大な倉庫のような場所だ。




