八十六話 いい所に限って邪魔が入るし
太陽が大事な一線を超えようとしていた矢先、急に太陽のスマホが鳴り出した。カイナのスマホが鳴らないあたりそこら辺の信用は太陽の方が上のようである。
「……っ、はい!もしもし!」
すっかりメス堕ち仕掛けていた太陽は、ここぞとばかりに希望に縋る。下手をすればこのまま流されてゴムもなしにしてしまいそうなちょろさだったので、まさに救いの電話であったといえよう。
『ああ陽菜か!よかった!実は急ぎの転生者案件があって、すぐ急行してもらいたいの!』
「今行きます!」
電話の相手は正一郎(断定)であった。一も二もなく飛びついた太陽が電話を切ると、お預けをされた犬のような顔をしているカイナが見えた。
「えー、っと、お仕事が入ったんで、また今度、です!」
わざとらしく太陽が笑うが、それで我慢できないのが童貞もといカイナである。
「そりゃないってぇ!今凄くいい感じだったじゃん!あと一押しだったじゃん!」
確かに太陽はちょろい上にもう一押しであったのは事実であるが、それを口に出す時点で脈が無くなるのを考慮しないあたり人付き合いに対して免疫がないことが垣間見える。
「それよりも!市民の命が第一なので!」
バスローブを着ながら器用に下着をつけ、すぐに外に出れるよう着替えを終えた太陽とは対照的に、うだうだと着替えをし始めるカイナ。流石に緊急時なのでメイクもすることなく支払いをカイナに任せ、すぐに外に出てスマホを持ちなおす。
「皆川さん!それで転生者は何処にいるんですか!?」
『それがね?なんでも電気を使う転生者らしくて……あっ!いた!』
どこにいるんだよと太陽が突っ込もうとした時、街角から大きな火花が散ったのが見えた。間髪入れずに轟音、間違いないと太陽は意気込んで突入しようと宙に浮……こうとした時にはたと、自分の力がない事を今更ながらに痛感する。ああ、こんな時空が飛べたら、転生者の体があればと歯噛みしていると、やっと服を着替えてきたらしいカイナが後ろから出てきた。
「マジで今度、今度だから!」
どうやら同じ火花を見ていたらしいカイナは、太陽を置いて現場へと急行した。




