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こちら宮城県警 転生者対策課!  作者: 阿野 良教
暴け!転生者対策課!

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四十六話 敵対していなければ有用な手段だし

「ここ」


 麗に指示されてたどり着いた場所は、Reincarnated Person Company。即ち酒田の職場であり、つい先日死闘を繰り広げた相手でもある。


「……いや、駄目だろ。不可侵条約結んだじゃないか」


 比較的良心のある正一郎が麗を止め、まだ一緒に乗っている太陽も追随して首を縦に振る。


「詮索しないという約束だけで、会いに来てはいけないとは言ってない」


 しかし己の目的の為なら条約破棄もいとわない爆走娘は留まることを知らない。車から降り、ずんずんと目的地へと歩みを進めていく。


 こうなってしまったら、流石に正一郎もただ手をこまねいて待っているだけという訳にはいかない。太陽と共に車から降り、麗を追った。





「……あなたたち、どういう神経してるわけ?」


「貴女じゃなくてダンクに用がある。出して」


 会社の受付で暇そうにしていたイヴと呼ばれていた少女が、怪訝そうに正一郎たちを見ている。これに臆することなく麗は要件を簡潔に伝えた。


「いや、はいそうですかって言って出すわけないでしょ。要件は何?」


 イヴの言うこともごもっともであった。ちょっと前まで殺し合うような関係性の所にわざわざ出向くバカなんて、考え付きもしないからである。用を聞くのは当然のことであった。


「聖網教の教主と事を構えるかもしれない。対催眠用の対抗策を開発してもらいたい」


 麗はこれまた簡潔に、しかも何かを見抜いたように言葉を紡いだ。開発、という言葉を聞いたイヴは、さらに眉間へ皺を寄せた。


「何で、ダンクが開発能力を持ってると思ったの?」


 恐らくイヴ的には隠しながら腹を探るつもりのようだが、生憎『ダンクはそういうことが出来る』ことが見え隠れしている。麗は顎に手を当てしばし考えたのち、こう答えた。


「貴女があの時使っていたライフル、世界のどこにも存在しないメーカーのモノだった。ダンクの使っていたものも、酷似するものこそあれオリジナルだった。だから」


 出来るんでしょ、とまで言わずとも、イヴの表情は驚きに満ちていた。それは麗にとって、そして正一郎たちにとってもまた、これ以上ない答えとなって伝わったのである。


「……イヴ、彼女たちに隠し事は無意味なようです。私が対応しましょう」


 何処かで話を聞いていたのか、ダンクが奥の部屋から出てきた。まず第一の交渉は成功と言っていいだろう。まだ本題が通るかは別として、交渉の台に乗せられたことは非常に大きな一歩である。


 イヴがダンクのいた部屋へ引っ込み、そうしてダンクは正一郎たちの前に立った。相も変わらずの細い体を猫背にして、ダンクは正一郎たちに話しかける。


「それで、見返りは何になりますか。見逃してやる、だけでは余りにも釣り合わない。我々はそうやすやすとたかれるほど甘い組織ではありませんよ」


 ダンクの言うことももっともである。こちらから提示できる手札は今ゼロに等しい。かといって警察内部の情報をこの怪しげな組織に売り渡すのは承服できない。こちらの手の内が読まれるのも非常に困る。と正一郎が頭を捻っているうちに、麗が動いた。


「警察、それが信用できなければ私の探偵事務所と業務提携を結ぶのはどう。警察の場合だったら転生者の情報を警察よりも早く受け取れるし、探偵事務所との業務提携なら転生者の独占をしてもらっても問題ない」


 仕事の為なら多少の不利益は仕方ないとでも思っているのかと、正一郎は麗の提案に驚いた。たかだか一時的な協力を仰ぐために、この得体の知れない会社と付き合い続けるのは正気の沙汰ではないと思ったからだ。


「ふむ、今回の件をきっかけに業務範囲を広げろと、そういうことですか。なるほど、興味がないと言えばうそになります」


 そしてもっと危ない事に、麗の提案にダンクは乗り気である。このままいけば、下手をすれば業務内容を乗っ取られかねない。正一郎はとっさに口が開いた。


「あー、その前に警察から提案できる範囲をこちらで検討させていただきたい。そちらも上席と確認する時間が欲しいだろ、こちらの連絡先を置いておくから、確定次第連絡をくれ。それまでにこっちも体裁を整えておく」


「確かに、私の一存ではどうにもなりませんね。いいでしょう。早ければ明日までに連絡できるので、それでは」


 そう言って、ダンクは奥の部屋へと戻っていった。正一郎は額ににじんだ脂汗を手で拭き、心労の原因を睨む。


「雲類鷲さん、そういう行き当たりばったりなことをする前に、一言相談してほしかったな。怖いよ、いきなりこっちも賭けのbetに出されているの」


「ん、以後留意する」


 絶対考えてくれなさそうな返答に、思わず正一郎はため息をついたのであった。

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