行かなくてはね。
おはようございます。
今日は予約定時更新。
実は下書きはほぼ完成してます。
後、三・四エピソードで詰まってる……
アナマリーが言った。
「出発しましょう。バアルを連れて来てくれる?」
アンリと二人で馬小屋に迎えに行った。バアルは馬達に挨拶をした。やっぱり偉そうだった。
連れて来てから、用意されていた荷物をバアルに背負わせた。僕たちも、少しは進化してる。
「あれ? アナマリーは?」
しばらくまわりを探して見つけたアナマリーは青年と抱き合っていた。びっくりしたアンリと僕は何歩か下がって、物陰から覗いた。
青年はアナマリーより頭一つ分背が高かった。大切に包み込むようにアナマリーを抱きしめて、アナマリーの耳元に顔を寄せて何か囁いていた。アナマリーはただ彼の背中に両手を回して、埋もれるようにして頷いていた。そして二人は優しいキスをした。長いキスを。
廊下の角から中腰で覗いていたアンリの足の筋肉が限界だったらしく、ぺたりと座り込んでしまった。その音で、振り向いたアナマリーが少し笑って、
「行かなくてはね」
と言ってから、一度も後ろを見ずに出発した。僕たちを見送って、青年が
「毎日朝晩、君たちの無事を祈念してるよ。いつでも戻ってきて。歓迎する」
と言った。アンリと僕は振り向いて会釈したけど、アナマリーはそれでも前を向いていた。
その日は、夕方、木こり小屋に着くまで誰も何も言わなかった。
アナマリーの頭には里で教えて貰った山越えルートと宿営地とかがみんな入ってるらしかった。アナマリーがいなかったら、僕もアンリもここまで来られなかったし、これからも無事に山は越えられない。アナマリーに頼るばっかりだなぁと改めて思う。今となったらもう『仕事』では無くなったんだけど、アナマリーはこのままでいいのかな?
木こり小屋の暖炉の火をつけて、荷物を解いて、寝床を用意した。アナマリーは夕食を作っていた。バアルは部屋の隅で敷き藁に座って、うとうとしていた。火の中の薪がパチンとはぜた。




