僕たちに残された物
おはようございます。
もうこのくらいの時間に更新ってことで。
後書まとめなしです。
よろしくお願いします。
翌朝、やって来たアナマリーは
「お祭り、楽しかった? 」
と聞いた。
「たのしかった。面白かった。けど、アナマリー、大丈夫? 」
そこからアナマリーはこの村の話をしてくれた。
ここはアナマリー達、東方流民朱雀派の隠れ里。アナマリーも噂で聞いたことがあったけど、どこにあるかは知らなかった。この里には東方流民の所縁の者しか入れない。僕たちはアナマリーと一緒だったから入れたけど。守りの力が効いていて、村にいれば外部の者に捕まることはない。
アナマリーは、この村という安全な場所にたどり着いたのに、ここから出るのが僕たちの為になるのか不安になったこと。どうしてもアンリはカリエ王国に送っていかなくちゃならない(要確認、危険なら行かない)、そして僕をゾルタン王国に置いていく訳にはいかない。僕もアンリと一緒に、カリエ王国にまで連れて行くつもりだった。でもカリエ王宮に行っても僕の処遇は保証できない。摂政である前王弟の心づもり次第では、僕もアンリもどうなるかわからない。このまま隠れ里に居れば命の危険はないなら、僕だけでもここにいたらいいんじゃないかとか。
「でも、あなた達は一緒にいたいんでしょ」
って力なく笑った。
「巫女は巫女舞の時に神を近くに感じられるから、巫女舞を志願したの。舞っている間にいくつもの道が見えたわ」
あんまり良さそうな道は見当たらなかったんだけどね。とは、聞こえないくらいの小さな声で言った。
一番いいのは山を超えて、カリエ王宮の様子を探って、摂政がアンリを王として受け入れてくれそうなら連れて行く。僕のことも保護してくれる。ソルヴェノナ北帝国の呪いもカリエ王宮の術者も落ち着いていて、平和に暮らしていけること。でも、王宮の様子によっては、力のある誰かを探すとか、仲間に引き入れて、更に味方も増やすとか。ゴールが遠くて、考えただけで嫌になる。
それもうまく行かなそうなら、ここに戻る。僕もアンリも、ゆっくり力を付けてから根回しして動いてもいいし、ここで幸せに暮らすのでもいい。
「シャルル様もアンリ様も特に果たしたい思いとかなければですが」
アナマリーはそう聞いたけど、お互いとっくに家族は遠いものだから、今この三人だけが大事だった。
「望みも恨みもない。自分たちで出来ることがないなら、『今』を手放したくないだけ」
普通なら恵まれている王子という立場なのに、僕たちが持ってるものは普通より少ないんだな。なら、これを失いたくない。




