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【書籍発売中・コミカライズ連載中】こんなはずじゃなかった? それは残念でしたね〜私は自由きままに暮らしたい〜  作者: 風見ゆうみ
第九章

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72 ルカの祖母との初対面

 その後は何事もなかったかのように、ジョシュ様たちと一緒に店を回り、買い物を終えたあとはノルテッド辺境伯邸に向かった。


 玄関のポーチで出迎えてくれたのは、まずはたくさんの使用人だった。

 使用人たちが挨拶を終えて、それぞれの持ち場に戻ると、人間の姿のラビ様とルフラン様、そして、ルフラン様に抱えられた猫くらいの大きさの動物が迎えてくれた。

 濃い灰色と白い毛に口元には長いひげ、小さくて丸い耳につぶらな黒の瞳。


 なんという動物なのはわからないけれど、とても可愛い。


「コツメカワウソで俺の妻のララだ」

「コツメカワウソ?」


 ルフラン様に教えてもらったけれど、聞いたことのない動物名なので、敬語も忘れて聞き返してしまった。


「こんにちは」


 とても可愛らしい見た目だけでなく、声も可愛らしい。

 ララ様は小さな手を私に伸ばしてくれたので、その手を握らせてもらう。

 手には指みたいなものがあり、感触はとてもぷにぷにしている。


 うう。それにしても見た目が可愛すぎる。なんてつぶらな目なの!

 ……と、まずはご挨拶しなくちゃ。


「はじめまして。リゼ・フローゼルと申します」

「はじめまして。ララよ。こんな姿でごめんなさい。体力がなくて、人の姿で歩くのは一苦労なの」

「動物の姿だと簡単に抱っこしてもらえますものね」

「ええ。使用人の間ではペットとして飼われていることになっているの。名前はラーラよ」

「では、カワウソのお姿の時はラーラ様とお呼びいたしますね」

「ペット扱いなんだから、ラーラと呼んでちょうだい?」


 手を離すと、ララ様はルフラン様にしがみついて言う。


「あなた。ルカやルルの顔も見たいわ」

「おばーさま、ルルはここにいますわ」

 

 私の隣に立っていたルル様が見上げて言うと、ララ様は顔を下に向けて手を伸ばす。


「まあ、ルル。見ない間に大きくなったわね」

「イグルさまに、ふさわしいじょせいになるために、ひび、がんばっておりますもの」

「ばあちゃん、久しぶり」


 ルル様に抱っこされたララ様に、今度はルカ様が話しかけた。


「まあ、ルカ! あなたは本当に久しぶりよね! たくましくなって! しかも、聞いたわよ! とうとう初恋をむぐっ!」


 ララ様の話の途中だったけれど、ルカ様が口を押さえたので、何を言おうとしていたのかわからなくなった。


「何するのよ!」

「そういう話は大きな声で言わなくていいですよ」

「もう、リゼに気持ちは知られているんだから、恥ずかしがらなくてもいいだろう」


 ルフラン様が呆れた顔をして言うと、ルカ様は反論する。


「本人の前なんだから恥ずかしくなっても良いだろ」

「まあまあ! ちゃんとしたお嫁さんが来てくれることになって良かったわね。リゼさんなら辺境伯夫人になっても上手くやってくれるでしょう」

「ええ。ルカを支えてくれると思うわ」


 ララ様の言葉にライラック様が大きく頷く。


「辺境伯夫人?」

「そうよ。だってルカは辺境伯家の長男だからね」


 ライラック様が笑顔で頷いた。


 ルカ様の婚約者ということは、ルカ様といつかは結婚するということなのだということは、当たり前だけれどわかっている。

 ルカ様を支えたいという気持ちも強い。

 両親の死の真相を明るみにして、伯父様やデフェルに天罰を下したい。

 そんな気持ちばかりで、辺境伯夫人になる覚悟をしていなかったことに気がついた。


 私ったら、今頃、気づくなんて本当に馬鹿だわ。

 いや、大馬鹿以上だわ!


「……リゼ?」


 ルカ様が心配そうな顔をして、私の顔を覗きこんできた。


「はい! 何でしょうか?」

「中に入ろうって話になってるんだけど」

「あ、はい! お邪魔いたします!」


 ルカ様は様子がおかしい私に気が付いてはいたようだが、深くは聞いてこず、私の手を取って屋敷の中に招き入れてくれた。

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