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暗闘・プリンセスチェリー  作者: 伊藤むねお
50/65

幕が上がった

 初日の幕が上がった。

 佐野の指示に従ってみな演劇愛好家らしい服装と雰囲気で、それぞれが他人を装いつつ十五秒間隔で木戸を潜った。皮肉なことに伊能が目撃した赤坂見附のホームにおける暗殺者集団と同じ習いとなった。ただし伊能と陽子のみは連れだって入り、前から五列目にふたつ空いていた座席に腰をおろした。陽子は秦の要請どおりに濃い目のサングラスをかけ髪型も変えてきた。

 陽子はさきほどから乳母車のことを聞いてみたくて仕方がないのだが、伊能はその話題には返事をしてくれなかった。

 どうしたのかしら。なんだかいつもの伊能主任にもどってしまったみたい。そんなの絶対にいやよ。

 陽子は不吉な予感に胸を痛めていた。

 陽子の右には佐野がいた。佐野は太縁のメガネを掛け地味な色合いながらチェックのジャケットを着ていた。伊能の左には秦が座ってパンフレットを見ている。うしろには鳥井と有田が並んで座っていた。このメンバーがこういう配置で座るには細工が必要だった。遅く入れば席がない。しかし余り早く入っては目立つ心配がある。少なくても牧山伸行には、陽子の他にも佐野、秦、鳥井が顔を覚えられている可能性があった。

 そのためにこれまでアルテナに全く関わらなかった捜査員が先に入って席を取り、佐野らは開演時間の五分ほど前、客席がすっかり埋まってきた頃に入ってきて、そこでさりげなく席の交代をしたのである。

 一行は伊能と陽子を除いては、お互いに言葉を交わさないように目も合わせないようにしている。木戸にいた女性も路上でパンフレットを配っている男女も一味とみなくてはならないのである。また初日であることから、招待客に挨拶するため入場者をチェックしているだろうし、出番のない俳優や手の空いたスタッフが立ち見から客席の反応を見ていることもおおいにありえるのだ。



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