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9.ドキドキしない

あのあとのことはおぼえていません、気が付いたら森のなか、ねているお馬さんの隣にいました。

その隣にはリリットさんレオさんギウロさん、そしてナナセ君がいました。

「おはよう」「大丈夫?」「起きた?」とみんなが僕のところに来ると頭をわしゃわしゃ撫でてきます…みんな優しいなぁ。


でも、なんだろう…とてもこわい……


「ま、まちは?」

あのあとのことが気になった僕は、四人に聞いてみましたでも、みんなは「町はもう抜けた」とかえしてきました。

「まつりは?」と聞けばギウロさんは僕を持ち上げて、かたぐるまをしてくれます。そして、

「お前はまだ知らなくて良いことだ、あれは忘れろ」


いつものギウロさんとは違うとてもこわい声が彼の口から出てきたのでした。




森のなかをみんなで歩いていきました。何日も何日 もやっぱり、あのまちであったまつりのことはだれも教えてくれません。さらに



「……」

日に日にみんなはこわくなっていきます。


ピリピリというのでしょうか、今みんなにさわればしびれてしまうような…そんな感じです。

最初はちゃんと会話をしてくれました、でも今はだれもお話をしてくれません。


「ねぇ…ねぇ…みんな」

「……」

「なんで、お話をしてくれないの?」

「……」


今日も誰もお話をしてくれませんでした。

「なんで…みんな、こわいの?」

ほっぺがとてもあつい…目も何かがあふれそう…

ポコポコと僕のまわりから泡が現れてくるとギウロさんはとつぜん、僕に向けてけんをむけた。

「ひっ!?」

「泡を出すな!!」


こわい顔のギウロさん、こわい声のギウロさん、

こわい剣を僕にむけるギウロさん。

こわい…こわい……僕の頭のなかにはそれしかなかった。そして目からボロボロと泡が吐かれている。

泡が増えていく…大きな泡が増えていく……

泡が増えていくのをみたギウロさんはもっとこわいかおをした。

「泡を出すなと言っているだろ!!そのくらいわからないのか!?」

「う…うわぁぁぁん!!」

顔が赤くてこわいギウロさん


顔が赤くて…赤くて……赤くて……赤くて……

赤…


「あ……あああああぁぁぁ!!?」


焼けていく家、泣きわめく声、赤い空、赤い壁

赤い液体が僕の頬を濡らす。

目の前の女性はボロボロで痩せこけている、でも笑っていた。

女性は僕を抱き締めた強く強く抱き締めた。

そして、女性は赤くなった。

僕を守りながら赤く冷たくなっていく女。


何故、あなたの子どもではない僕を守る?何故そんなに満足そうな顔をするの?

僕の名前を呼ぶ貴女は……




あなたは一体ダレ……?



「ウオ!!!!!」

あわたちがギウロさんをのみこもうとしたときだった。後ろからナナセ君が僕の名前を呼び、そして抱き締めた。

「あ…」

後ろからナナセ君のにおい、こえがする。

なんでだろ?とても彼がそばにいると落ち着くのは…気がつけば泡が消えていた。目からあふれた泡がぴったりとやんだ。

「ナナセェ……うぅ」

ゆっくりとナナセ君が僕の正面にやってくる。

いつもこわいかおだったのに、今はとても優しいかおのナナセ君。僕は彼のむなもとにかおをべっちゃりとつけた。

「ナナセ!」

「大丈夫だ…大丈夫だから、もう泣くな……ギウロ。

子どもに剣を向け、怒鳴り声を上げれば誰でも泣きわめく……ウオの精神が不安定になれば、泡は不安定にさせたお前を敵視するのをこの旅で学んだだろ!!それに、子どもに向けて殺しの剣を向けるとは何事だ!」

ナナセ君がおこっている、でもなぜかこのナナセ君は怖くない。

「大丈夫か?ウオ」

「ほら、泣かないの泣かないの…男の子なんだからさ」

ナナセ君がギウロさんがガミガミおせっきょうをしていると、ナナセ君のむなもとにかおをつけているせいでまわりにだれがいるかはわからない。でもリリットさんとレオさんの声が僕の耳に聞こえた。


「リリットさん……レオさん…?」

「ほら、顔を上げなよ」

ごつごつした手が僕のほっぺをつねる。

いたい……

「いふぁいです…レオしゃん……」

顔を上げると僕のほっぺをつねているレオさんと心配そうに僕をみつめるリリットさんの姿があった。そしてリリットさんはナナセ君の肩にあごをのせた僕の頭を両手で包み込み……僕のおでこにキスをした。


「ふぇ?!」

「わぉ……」

口笛を吹きながらレオさんは手をはなす。リリットさんもゆっくりと僕からはなれていく。

「ん、なによ……あんたたち別に口じゃないのになんなのよその反応は?」

「いやぁ……えぇ…リリットちゃん俺にもキスをしてくんない?」

「いやよ、なんであんたに無償の愛を捧げないといけないのよ……それにあんたなんて可愛がりたくないし」

「ちぇ」

先ほどまであんなにこわかった二人が今とても楽しそうにわらいあっていた。

とてもうれしいことだが……それより、気になることがある……。

ナナセ君にお礼を言い、僕はナナセ君のもとから離れ、二人のとなりに立つ。

「ごめんね、別にウオのことを嫌いになった訳じゃないの……ただ、もうすぐ魔王の…」

「おでこにキスってどういういみなの?」

「え?」

きょとんとした顔をするリリットさん。

キスはすきなひととするものだと思っていた。でもさっきリリットさんは可愛がるや無償の愛と言っていた。


キスの場所にも意味があるのだろうか?


「変なことが気になるのね?……えっと、額へのキスは「無償の愛を捧げる」「親からの愛」「可愛がりたい」……とあと、確か「友愛」もあったわね」

「ゆう…あい?」





「んー、友達へ愛を捧げる……うーーん?いや、愛する友へ祝福だわ、祝福の意味はあー、幸せになりますようにって意味よ」

「え?」

「それがどうかしたの?ウオ」

あの時僕のおでこにキスをしてくれたナナセ君。


つまり、あれは僕のことが好きというわけではなくただの友だちとして好きだということ……




お父さんお母さんのようなかんけんの好きではないということ、ナナセ君はただ僕を友だちとして…

「ウオ…」

ナナセ君の声がする、ナナセ君の方をふり向けばうすくわらったナナセ君がいた。

「ちょっと話がある、いいか?」

いつもの僕なら、きっとむねをドキドキさせ、ついでにほっぺを赤くしてついていくだろう……でも今の僕はちがう。

「わかった、ナナセ君」




なぜか、むねがドキドキしなかった。




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