希望の兄弟
絶望の火蓋は切って落とされた
ついに始まってしまった絶望へのカウントダウン
希望への道筋はあるのか…
清武は謎の空間にいた、いや、三途の川かもしれない…
綺麗な水がすぐ近くを流れ、白く綺麗な木々が所々に生えている…
「…俺は…死んだのか…」
そう言いながら清武はゆっくりと体を起こす。
そして何処へ行くわけでもなく綺麗な水が流れる川の下流に沿って歩いていく…
「清子は解除に成功しただろうか…」
その先に身長は永子のような青いコートを着た人影があった。
清武は話しかけようとすると…
「お前も、世界の退場者か?」
それは永子と全く同じ顔をした…いや、永子本人かもしれない…
「えっと…輪廻永子…だよな」
すると少女は答える。
「…そうだが…見たところ今回の世界で退場させられたようだな…」
清武は再度尋ねる。
「えっと…ここは何処なんですかね?」
永子は川の方を向いて言う。
「今ならまだ間に合うかもしれない…おい、お前。」
永子はゆっくりと清武の方に向きながらそう言う。
「な…なんだ?」
永子は答えた。
「お前はここに居てはならない…どうゆう経緯でこうなったのか事情は知らんがお前は今すぐにでもここを出なければ死ぬ」
清武はその言葉が何を意味しているのかを考えたがすぐに1つの質問をしなければいけないことに気づく。
「俺は…まだ死んでないのか?」
すると永子は答える。
「そうだな、肉体的死というならお前の魂がこの境目の空間に入ってきてる以上、まだ生きているということだ。なぜここに来たのかは分からないが」
清武は尋ねる。
「どうすればここから出ることができる?」
永子は言う。
「私も、ここから出られるのならもうとっくに出ている。いや待て…私は無理でもお前は出れるかもしれない…」
清武はその方法を聞きたそうな顔をする。
「お前、なぜ自分がここにいるのか分からないと言ったな?おそらくお前は偶発的にここへ来たのだ、本来ここには奴が保存したその時の人格、記憶が保存されている場所だ。そこに世界をループさせていないのに侵入したということはどこかに抜け穴があるのかもしれない…保存された身は出ることはできないが保存されていないオリジナルの魂の侵入ならそこから出られるはずだ…問題はその出口の発見だ…」
すると清武は近くにある白い建物に気がつく。
「…あの…ここって学校ですか?」
永子は清武が指さした方面を見る。
「あぁ、ここは奴の記憶などから作られた空間だ…奴にゆかりのある場所…霊学部の部室!…確証はないが行ってみなければ始まらない…行くぞ」
ちっとも永子らしさがないその積極性と性格…まるで別人のような永子に再度尋ねる。
「お前は…本当に輪廻栄子か?」
すると永子は面白いものを見たような顔をして言う。
「そうだ、お前の知らない世界の輪廻、永子だ。」
黒い真琴は懐から出した霊紙を清子に渡す。
「今、発動するといったな?いいだろう…発動してみるといい…もしかすればそこで床ペロしてやがるお前の兄貴も蘇るかもしれないぜぇぇ??」
未理恵は制止しようと駆け寄るが瞬間移動で目の前に現れた黒い真琴に止められる。
「未理恵、俺はお前を傷つけたくはない。そんな馬鹿な真似はやめろ…俺の力を知っているだろう?あのどんな訓練にも耐えた最強と謳われたお前の使用人もそこに倒れているんだから…」
すると未理恵はその隙に…
…ザク
「…お…前…何故だ…」
黒い真琴は未理恵の隠し持っていたナイフで脇腹を刺されていた…そう、それはいつの間にかに…
「貴方は恐らく私だけは傷つけないと思っていました…今までのあなたの行動パターン…そして今の私だけに対する交渉…それらを考えた上であなたは私の時だけボロを出す…」
黒い真琴は瞬間移動で清子の元へ移動する…がその直後膝をつく。
「…蒼井清子…今すぐ術を発動させろ…フフフ…俺の目的は不幸の呪術の発動…俺が死のうと発動すれば関係はない…」
すると清子は言う。
「兄さんは…兄さんは本当に生き返るの!?本当に!?」
黒い真琴は立ち上がり手を広げ言う。
「勿論だとも!奇跡を作ることができる魔法だろう?それなら余裕さ!」
黒い真琴はそう言いながら刺された箇所のナイフを引き抜くとフェンスに倒れ掛かり座り込む。
「何も刺さなかったって…」
気絶している永子をおぶった真琴はそう言いながら未理恵に近づく。
「華原さん、いいですか?彼を刺さなければ清子さんを説得する暇すらありませんでした。大丈夫です。彼はちゃんと治療します。」
瀕死の黒い真琴に俊は近づいていきそしてお辞儀をする。
「黒き華原様、あなたはお強い、そしてその能力、一体貴方様は何者で何のために動かれているのでしょうか?」
瀕死の真琴は言う。
「過去の人間がよく言うな…俺は未来を変えさせるわけにはいけないんだよ…俺の世界での…」
すると清子が叫び唱える。
「天地創造の神!地獄の破壊神!今こそすべてを受け入れよう!」
未理恵は止めようと必死に声かけをする。
「清子さん!落ち着いてください!今使ってはいけません!!早く辞めなさい!!」
すると黒い真琴は言う。
「ックククク…良かった…解除の方法と発動の方法…それらを逆に教えておいて…」
江利奈は清子に喝を入れようと走っていくが清子に触れようとした瞬間何かに跳ね返される。
「この!何なのよこれ!」
優美も触れようとするが結果は同じ。
「…これじゃあ清武さんを助け出すことも…」
黒い真琴は何か注射器のようなものを取り出し自分に投与する。
「…そいつはな、今あんたらを信じて術を解除させようとしてるんだよ…でもな、それは発動なんだよ!…ぐっ…」
清子の元にある霊紙が光りだす。
「さぁ!今こそ光と闇を世界に受け入れよう!」
そして清子は最後の詠唱を…
清武は永子と共に白く誰もいない学校を探索していた。
「その抜け穴?ってどんなものなんだ?」
永子は答える。
「恐らくなんだが奴がここに現れたり消えたりするとき黒っぽい光が溢れていた。恐らくそれに近い感じだろう…」
二人は霊学部の部室のある階の下の階にたどり着いた。
「…やはり誰もいないな…というかここって構造はあの学校そっくりなのに全てが白いしなんか…」
永子は言う。
「…やはり部室の可能性が高いかもしれない…そういえばお前、向こうの私はどんな感じだ?」
清武は答える。
「ものすごく静かであまり喋らないな…いつもほとんどマテリアルの母親が一緒にいる。」
永子は言う。
「成程な、まぁ記憶が全然ないんだ、仕方がない」
そう話しながら二人は階段を上っていた。
「もしさ、お前も一緒に戻れたらその…お前の世界ってやつを聞かせて欲しい…もっと詳しくな」
すると永子は切なそうな顔をして言う。
「私は既に奴に捕らえられている身…おそらくそれは不可能だ…だが話程度なら惨劇を回避さえすればもう一人の私から聞けるだろう…さて、部室を最後に確認しよう」
二人は部室の奥の部屋へ向かう。
…ガチャ
扉をゆっくりと開ける。
そこには白い綺麗な服を着た黒髪の女性が居た。そして部屋中には永子が言ったような黒い光ではないが青い光が溢れていた。
「なんだ、犯人はあなただったか」
永子はそう言うと落ち着いて説明をする。
「この人は蒼井律子お前もよく知っているだろう」
清武は驚きを隠せない顔をして尋ねる。
「あの…母さん…?」
すると律子は答える。
「清武、あなたは小さかったから覚えてないよね…大きくなったね」
すると永子は言う。
「感動の再会もいいところだが律子、なぜ既に没して成仏したはずのかの有名な超霊能師・律子がこんなことを?」
すると律子は清武がいつも携帯に付けていた赤いダイヤのキーホルダーを取り出して言う。
「これ、ささやかな私の真心を詰め込んだ石なの。それは清武の安全祈願。正直なところ私も不思議なの…既に死んでるのに清武を助けなきゃと思ったら気づくとこの部屋にいたの」
すると永子は推理を言う。
「成程、と言う事は偶然清武を救う手段がこの空間へ一時避難させることしかなかったため自動でそれを行ったということか…」
律子は清武に言う。
「とにかく無事でよかった…あなたが死んでは私は意味がないことをしたようなものだもの…」
そう言いながら清武を抱きしめる。清武が感じ取った母の優しさの温かみ…それは恐らく一生忘れないものだろう。
「…母さん、母さんは清子には会えないのか?」
すると律子は言う。
「一瞬だけなら大丈夫かもしれないけど…多分私が経験してきた事例では無理かもね…だって今の私って幽霊より弱いんだし。…でもごめんね…私が残したあの魔術本のせいで…」
清武は否定する。
「母さんは悪くない…悪いのはその本を使えるだけ使おうとした俺だ…清子にあんなものを使わせたのは俺の責任だ…」
すると永子は遮るようにして言う。
「そういえば気になったのだがその魔術本とやらはどういったものだったのだ?」
律子は答える。
「えっとね、あれは実は禁書庫に収められているはずの術式に似た術式が記されてあったから調査してたんだけれど結局真相を突き止める前に私が死んじゃったからそれがやがて遺品となって清武達に渡ったんだと思う。あの人には何も告げられなかったのも私の至らぬところね…」
永子は言う。
「となるとあれは禁書ということになる。奴がどのような経緯で情報を仕入れたのかは知らんがそうなると厄介だ…その本の処遇を決めなければ…」
すると清武は言う。
「確認済みなのは最後のページの術式が禁書だったことだけだった…と言う事はそのページさえ隠滅することができれば…」
律子は提案する。
「清武、私の部屋だった場所に私の遺品のロケットがあるはずなの。その中に元々除霊用の火を起こすためのマッチがあるんだけどその火ならそのページを焼いて再度使用不能にすることはできると思う。ロケットの開錠方法は六回右に捻って縦に振れば開くはず…」
その時、地鳴りがする。
…ゴゴゴゴ
「…まずい、抜け穴が閉じ始めている!脱出するなら今しかチャンスがない!」
永子が焦り気味にそう言うと律子は清武の頭を撫でて言う。
「あなたにとっては嘘に聞こえるけれども…死んだあとでもあなたと清子は愛しているわ…さ、もう時間がない…清武、死んだあとでも元気そうなあなたと話せてよかった。もう多分会えないけれど…頑張って前をむいて生きてください…それが私の望みです…仕事であまり話せてないみたいだけど、お父さんとも仲良くしてあげてね」
清武は言う。
「…俺なんかで…本当に良かったのか?…こんな出来損ないの子供で…」
律子は答える…そしてそれは清武に告げられた最後の言葉。
「生まれてきてくれてありがとう…願わくばあなたたち兄弟が…希望とならんことを…」
そして律子は清武の手を引いて白い部室の窓から外へ…いや、宇宙のような空間へ飛び立つ…そしてそれを見送る永子は叫ぶ。
「必ず運命を変えてくれ!私たちの運命を!希望ある未来へと!」
そして清武たちはその空間から消えた…
黒い真琴は脇腹を刺されているにもかかわらず歪な笑い声をあげ、そして江利奈と優美は必死に清子を止めようとするが叶わず未理恵は諦めかけ、俊は焦り、そして気絶している永子をおぶった真琴は何もできずにただ見ていることしか出来なかった…そして清子は最後の詠唱を終えようとする…
…ガシ
清子は詠唱を中断する…そりゃそうだ、この状況で手を出せる人間はいない…黒い真琴はそこで笑っているし他の人間は邪魔すらできない…そして近くにいるとすれば死体のはずの…
「…ぐは!…待たせたな黒い真琴!」
清武はそう言うと立ち上がり唱える、霊紙はない、だが唱えた。
「魂は善意也!欲を討ち滅ぼす驚異、我善意也!ソウル・リメイク!!」
すると青い光が辺り一面に溢れ出す、黒い真琴は焦る。
「そんな馬鹿な!霊紙もないのに…術が発動する訳…そんなバカなぁ!」
黒い真琴は瞬間移動をするが…
…ドス!!
「ぐふぁ!?バカ!な!」
黒い真琴は何かに弾き飛ばされる…いや、蹴り飛ばされる…
「私の子供に手出ししないでくれる!?この屑!!」
それは律子だった…青い光が体の形になっていたため確かではないが律子が蹴り飛ばした以外考えられない…そして黒い真琴はフェンスにぶち当たる…が当然ながら廃墟のフェンス…劣化が進んでいたため…黒い真琴はそのままアルカと同じように屋上から投げ出される。
「…馬鹿め、俺は瞬間移動を…バカな!?」
黒い真琴はあることに気づく…それは律子の蹴りがただの蹴りではなく一時的ではあるが霊能力の使用を封じるものであったことに…
「己ぇぇぇぇぇぇぇ!!!またしてもイレギュラーがあああ!!!!!」
そう叫びながら無力ながらに黒い真琴は落ちていく…
「さぁ、清子、落ち着いてくれ、今から解除の方法を教える。大丈夫だ、母さんもついてる。」
清武がそう言うと清子はこの青い光が母親であることに察しがつき、落ち着いて兄の言うとおり解除を行い始める…
「もしかしたらですけど…黒華原さんは始めから解除させる気なんてなかったのかもしれませんね…おそらく発動と解除、どちらの手順でも発動するように蒼井清子さんに教えていたのかもしれません…」
未理恵はそう呟くと真琴が言う。
「俺ならそうするだろうな…どんな手段でも自分の目的を果たす必要があればだが…」
江利奈はそう言いながら見てるだけの真琴を軽く殴って言う。
「あんた何も出来てないくせによく言うわね…まぁとりあえずこれで一件落着ってことで…」
すると優美が尋ねる。
「あの、黒い華原くんは…どうなるんでしょうか…」
その問には俊が答えた。
「…誠に申し上げにくいことですが…おそらく彼は手遅れでしょう…超猛毒と言われる激薬が塗りこまれた銃弾を見つけましたが何かにかすったような跡があります、黒華原様の頬には血が流れていました、少量ですがすぐに病院に行かなければ時間はかかりますがやがては死ぬでしょう、それお嬢様に刺された傷もありますし…失血死か毒死にはなるでしょうがどちらにせよ長くはないでしょう。その上この高さから落下しておりますし。」
するといつから居たのかはわからない涼が言う。
「あいつのことだ、なんだかんだで生きているだろう…そういえばそのへんに転がってる銃とかって何だ?俺たちが持ち込んだものじゃないはずだが…」
そう話をしている間に清子と清武は解除を終えた。
「これでようやく一段落だ…母さんもありがと」
清武がそう言うと青い光はよく頑張ったねというような暖かさを表現した。そして清子は言う。
「母さんは…こんな私が嫌い?」
すると青い光は清子の近くに集まり律子の形になる。
「…あなたは、私が愛した時のままよ…安心して…頑張ってね…」
そう言うとその光は徐々に薄くなりそしてお辞儀をすると、綺麗に、儚く、散り消えた。
そしてあとには粉雪が降り始めた…そう、今日は聖夜だ。
アルカと霧子はボロボロのの白衣を着てかなりの怪我を負って車に乗り込んだ。
「っく…俺の正体が奴らにバレた…」
アルカがそう言うと霧子は車を発進させた。
「アルカさん、しばらく欠勤しましょう。彼らにバレた今、あなたが霊学部に行くのはかなりまずいと思われます。行くのなら事情を知らぬ教師と共に行動したほうがリスクが少なくて済みます。」
するとアルカは言う。
「…研究所に着いて治療を終えたら、やりたい事がある…手伝ってくれるか?」
霧子は答える。
「例のA-16へ情報を書き込むのですね…分かりました、準備には適正処理などで2週間程かかりますが手伝わせてもらいます…」
霧子はそう言いながらアルカの方を向くが、アルカの表情はどこか儚気だった…
「…いつかはこうなることは分かっていた…まぁ時間はあるしそれまではゆっくり休むとしよう…」
そしてアルカたちの乗っている車は廃墟を完全に離れた。
清武:新年
清子:あけまして
黒真琴:おめでとうございます。
清武:なんでお前まで紋付袴着てんだよ…お前黒コートだろ
黒真琴:黙れ役たたず、全く、もう少しで計画がうまくいったはずなのに…
未理恵:あら?黒華原さんがいますわね…生きてらっしゃったのですか?
俊:おやおや、これはこれは紋付袴まで着て…初詣ですか?
黒真琴:…
真琴:さて次回(棒)
江利奈:年明けと共に始まる霊学部
涼:来週は久しぶりの日常系か
優美:それでは今年も
永子:ループと傍観者の現実を…よろしくです…
永子?:次回も楽しみにしておけ
一同:…お前誰?




