第6話
エリックは軽く首を鳴らし、周囲を一瞥する。
確認するまでもなく行軍中だった。
隣を歩く商人の男が皮肉交じりに話しかけてくる。
「歩きながら居眠りか? 器用なもんだな」
「ああ……」
エリックは前を向いたまま冷静に応じる。
その態度を見た男は、少し笑って手を振った。
「ただの冗談だって。そんな怒るなよ」
「別に怒ってない」
「そ、そうか……ならいいが……」
王国軍は目的地に到着すると、臨時の拠点を設営し始めた。
その間もエリックは真顔だった。
見かねた男が心配そうに声をかける。
「おい、どうした。おっかない顔してるぞ」
「なんでもない。備えているだけだ」
「備える?」
男が怪訝そうにするも、エリックは何も答えない。
その時、見張りの兵士が大声で叫んだ。
「魔力反応だ! 帝国軍が来るぞッ!」
兵士達が騒然とする中、前方に帝国の魔術師が登場した。
魔術師達は空を飛び、王国兵に向けて術を放とうとしている。
商人の男は顔面蒼白で喚く。
「嘘だろ……どうしてここに魔術師が来るんだ!?」
「突撃ィ! 魔術が飛んでくる前に殺すぞ!」
上官の命令を受けた王国兵達は、武器を掲げて走り出した。
それが無謀な行動であることを理解しながら、恐怖心を理性で抑えつけて突き進む。
しかしエリックはその場を動かなかった。
険しい眼差しで魔術達の動きを見据えている。
上官は即座にエリックを怒鳴りつけた。
「貴様! 命令に背く気かッ!」
「はい、素直に従ったら死ぬので」
「ふざけるなァッ!」
激昂する上官がエリックの首を刎ねようと剣を振るう。
刹那、エリックは斬撃を指で挟んで止めてみせた。
「な……ッ!?」
「今回で突破できそうなんです。邪魔しないでください」
驚愕する上官をよそに、エリックは上空に向けて手をかざす。
発生した結界が瞬時に広がると、帝国魔術師による火球の爆撃を防ぎ切った。
突撃途中だった王国兵は立ち止まってどよめく。
上官も空を見上げて唖然としている。
「こ、これは……」
「では帝国兵を片付けてきます」
そう宣言した直後、エリックの姿が消えた。




