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乾いた音

本日は、第6話と第7話同時公開です。

 ふたりは並んで帰路についた。後ろからはティリルの羽音がついて来る。


 本当に弟は、これからこのピクシーとともに旅に出てしまうのだろうか?

 危険を顧みず魔王を打倒し、ラミーナを――そして世界を救うのだろうか?


 或いは、途中で命を落とすかもしれない。魔王のもとに辿り着けないことだって考えられる。

 そうなれば、ベルムは幼馴染だけでなく、片割れを失う。――到底耐えられない。


 考え込み、足元に視線を落としたまま歩みを進める。


「危ない!」

 不意にサカリが叫び、ベルムを突き飛ばした。


 ボトリ、と鈍い音が響く。

 ふたりは重なるようにして、砂の上に倒れ込んだ。


 さっきまでベルムが立っていた場所に、大きなキブの実が転がっている。


「なにボーっとしてるんだ!」

 サカリの叱責が飛ぶ。


「悪い」

 ベルムは苦笑いし、その場に大の字になった。


 この時期、キブガニが実を落とすのはシオマ地方では珍しくない。運が悪ければ、死人が出ることもある。


 自分は今、そんな間抜けな死に方で命を落としかけ、女神に選ばれた弟に助けられた。

 あまりの落差に、ベルムは込み上げる笑いを抑えられなかった。


 掌で目を覆い、大口を開けて笑う。何も可笑しくなんてないのに。


 そんな兄の上に覆いかぶさったまま、弟は不思議そうに顔を覗き込んだ。


「何がそんなにおか――」


 その言葉を、今度は乾いた音が遮った。


 ゴッ。

 キブの実がまた落ちたのだろうか。ただ、砂浜に落ちた時とは異なる、乾いた音だった。

 

 直後、弟の身体が重みを増した。力が抜け、その体重のすべてがベルムにのしかかる。


「サカリ?」


 返事はない。


「おいっ……サカリ?」


 もう一度呼ぶと、身体に一瞬力が戻った。


 サカリはベルムの目をじっと見つめ、

「兄貴は……僕と同等の力を持っている……ラミーナを……頼んだ……」


 そう言って、頭がガクリと落ちた。

 また、すべての体重がベルムにのしかかる。


 何度その名を呼んでも、弟が目を覚ますことはなかった。

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